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4ー5.巨大蔓と精霊少女


「くっ……斬っても、斬っても、キリがない……‼︎」


「セス~! 私、もう魔力の限界だよぉ……‼︎」


「魔力回復薬が切れた! 砲弾も爆弾ももう無くなる! オレはまだ魔女に会えてもいないのに……」


向かってくる蔓を剣で斬り払いつつ、隙をみて氷魔法で根本を狙うセス。

力の方向が定められた魔法壁を張って、外側からの攻撃を防ぎつつ、内側から魔法道具で蔓を攻撃するネリアとソラ。


しかし、倒しても倒しても巨大蔓は次から次へと湧き出てくる。

避難しようにも、その場所は窪地になっていて、小さな崖を登る余裕は無い。


長引く戦いを、精霊少女は上空から泣きそうな顔で見守り続けていた。


***


そして、精霊少女以外にもう1人、泣きそうな顔になっている者がいた。


「あわわわわ……どうしよう、どうしよう、どうしよう⁇⁇ 私ももう魔力が足りないです~~‼︎」


魔女だ。


実は今日、魔女は採取の途中でセスたちを見かけ、心配でずっとつけてきていた。

この戦闘が始まってからは、巨大蔓に狙われない少し離れた樹上から、こっそり魔法で援護し続けていたのだ。

魔女はとにかく何かに縋りたくて、じっと肩に乗っているドクロウへ話しかける。


「ううう、クロくん……! クロくんに村へ助けを呼びに行ってもらいたくても、魔物のクロくんじゃ退治されちゃうだけですし……私が呼びに行こうにも、今援護をやめたら皆すぐにやられちゃいます~~! こんなことなら戦闘が始まってすぐに行くべきでした‼︎……うわああぁぁん‼︎」


パニック状態の魔女はいよいよワッと泣き出してしまったが、先に魔力切れを起こしたネリアたちに魔法壁を張ることは諦めなかった。

だが、それももうほんの僅かな時間稼ぎにしかならない。


「今まで森にあんな魔物が出たことは無かったのに……やっぱり魔脈の乱れのせいなんでしょうか? それともあの精霊のせい?……何もわからないけど、クロくん……私がダメになった時は、クロくんだけでも逃げてくださいね…………あっ!」


ついに魔女の魔力も底をつき、ネリアとソラを守っていた魔法壁が消えた。


***


「きゃあああ‼︎」


「ネリア‼︎‼︎」


ザシュッッ‼︎‼︎


セスは最後の力を振り絞り、ネリアたちに迫った巨大蔓に斬撃を浴びせた。


「がッ⁉︎」


その次の瞬間、セスの体は巨大蔓によって空高く打ち上げられていた。


受け身をとろうと思っても、痛みで体を動かすこともできない。

世界がスローモーションになって、滞空時間が嘘のように長い。

硬い地面に叩きつけられればもう助からないのがわかる。

現実感が無い。夢のようだ。


薄れゆく意識の中、セスは精霊少女と目が合った気がした。


キイイィィィィィィーーーーーーーーン……


突然、辺りに緑色の光が満ちた。


眩しさに目を閉じたセスは、そこで一旦意識を手放す。

それから……


「う……ううん……⁇」


少しずつ体に感覚が戻ってきたセスは、ゆっくりと目を開けてみた。

いつの間にか地面に着いていたが、予想に反してまだ死んではいない。

皮肉にも、それまでに倒した山積みの巨大蔓がクッションになって、セスを落下の衝撃から救ったのだ。


ーーーーーーーーッッ‼︎‼︎


耳鳴りの様な音がずっと響いている。

朦朧とした意識の中で、セスにはそれがだんだん悲鳴のように聞こえ始めた。

音の正体を求めて視線を動かしたそのとき、セスを受け止めていた巨大蔓がズルリと動く。


「‼︎⁇」


セスはガバリと飛び起きて剣を構えようとしたが、剣は遠くに飛ばされていた。

走って剣を拾い上げながら、セスは違和感に気付く。

さっきまで瀕死だったはずなのに、何故かもうこんなに動けるほど回復している。

だがその理由を考えている余裕はない。セスは巨大蔓と闘うべく剣を構えた。


ズルズルズル……


「⁇」


ところが、さっきまでと違って巨大蔓からこちらへ向かってくる気配は無い。

無数の巨大蔓は見えない力に引きずられ、川のようにセスの背後へと流れていく。


「いったい何が……」


ゾワリ……


振り返ったセスは、その光景に絶句した。


無数の巨大蔓が集まっている宙の一点。


そこには、セスにとって見慣れた少女の、初めて見る、見るに耐えない姿があった。


ズズズズズズズズ……


「ァァァァアアアア‼︎‼︎」


巨大蔓の向かう先にいたのは、宙に浮いた精霊少女だった。

セスの目の前で、無数の太い蔓が、精霊少女の小さな体へと入っていく。何本も、次々に。

その度に精霊少女はビクリと体を大きく仰け反らせて、見開かれた大きな目から大粒の涙が溢れた。


ズルルル……ズブブ……


「アアアア‼︎」


巨大蔓は精霊少女の体を貫通することはなく、その全てが体積を無視して少女の体内へと飲み込まれていく。

精霊少女が巨大蔓を吸収しているのだ。


「ッッ…………このっ‼︎ 止まれ! 止まれよっ‼︎」


ザッ! ザン‼︎ ザクザクッ‼︎


セスは必死に剣を振り回して、流れていく巨大蔓を止めようとした。

しかしいくら刻んでも、蔓から落ちた葉の1枚さえ、精霊少女に向かうのを止められない。


「あああああ‼︎ ああああっ‼︎」


ビクン‼︎ ビクビクッ!


精霊少女は小さな体を震わせながら、懸命に巨大蔓を受け入れ続けた。

そして……ついに辺りの巨大蔓を全て吸収し尽くしてしまった。


「…………」


風に広がったドレスの中へ最後の1本が消えてから、精霊少女の体はしばらく空中でガクガクと痙攣していた。

その動きが急にピタリと止まる。


ヒュッ……


「落ちるっ‼︎」


どさっ!


セスは咄嗟に剣を捨てて、落下してきた精霊少女を受け止めた。

そう、受け止めることができたのだ。


「こいつ……実体化してる……」



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