4ー3.からまる。
魔女に加護をもらった翌日から、西の山の魔脈調査は始まった。
村人の出入りもある明るい東の山と違い、こちらは樹々の間隔も狭く、足元に茂る草も長い。
傾斜も急でデコボコした獣道は、精霊少女のように浮いていないと歩くのも一苦労だ。
「昨日のピアさん、よくこんなところをスタスタ歩けてたよなぁ……」
「セスはせっかく両手空けてたのに、抱きとめる機会が無くて残念だったね!」
「そういう邪な心はあの人に対して持ってねーよ。下らないこと言ってると転ぶ、ぞ……⁉︎」
そう言い終わらないうちに、さっそく足に蔓が絡んでバランスを崩すセス。
ネリアは咄嗟に支えようと駆け寄ったが……
「セスっ……きゃあっ⁉︎」
ズザアァーーーー……ドサドサッ‼︎
結局、2人揃って斜面を滑り落ちるはめになった。
「イテテテテ…………ん? 蔓が腕にも?……げっ!」
セスがよく見ると、巻きついてきた蔓は魔力を吸収する『魔吸蔓』という植物だった。
魔力に反応して巻きついてくるこの蔓は、焦って魔法で除こうとすると魔力を吸収して急成長してしまう。
強力な魔法で一気に駆除することもできるが、無駄に魔力を消耗するし、こんな場所では予想以上に多くの魔吸蔓が繁殖していて、それらが一気に巻きついてくる恐れもある。
こういうときのため、魔導士でも魔法に頼らない装備は重要だ。
「ネリア、これは魔吸蔓だから魔法は使わずに抜けるぞ」
「わかったから早くどいてよぅ! 私のお腹、枕にしてるってば~!」
2人は仰向けで重なって倒れている状態で、ネリアの腹の上にセスの頭がきていた。
セスが少し頭を動かすと、頭上にネリアの胸がどっしりと乗っているのを感じる。
「わ、わりぃ……ネリア、手は動かせるか?」
「うーん……両手とも蔓が絡まって、自力だと魔法使わなきゃいけないっぽい」
「そっか……俺は片手が無事だ。今から蔓を切るから、お前の短剣借りるぞ? 俺のは蔓が絡まって抜きにくい」
「うんっ」
ネリアの許可を得たものの、蔓に体を固定されているせいで、セスにはネリアの腰まわりを視認できない。
ゴソゴソ……さわさわ…………ぐいっ
「あん♡……そんなとこ触ったら……ぁ♡……やん♡♡♡」
やむを得ずセスが手探りで抜こうとすると、ネリアはわざとらしく身を捩って喘ぐ。
「いちいち妙な声を出してからかうな! こんな状況だってのに…………おっと!」
ずるるっ!
セスが自身の上半身を縛っていた蔓を短剣で切ると、足に絡んでいた蔓に引っ張られて体が下に移動した。
今度はセスの頭がネリアの股下にきている。
「ひゃははっ! セスの髪、くすぐったいよぉ~」
「もががっ⁉︎……お前、腿で俺の頭挟んでるっ! 足閉じんな‼︎」
がばっ‼︎
「きゃっ♡ 大胆~」
セスはネリアの膝を掴んでこじ開けると、起き上がって自身に絡まった蔓を切り終えた。
今度は色ボケた相棒の蔓を切るため振り返ると、相棒は思いのほか扇状的な姿で待っていた。
「セス、早くぅ」
ネリアは蔓に両手を頭上で拘束され、セスに開かれた脚をまだ閉じていなかった。
蔓が食い込んだ胸は、いつも以上にその大きさと柔らかさを強調されて、圧倒的な存在感を放っている。
「…………ごくりっ……」
「もぉ、じっくり見てないで早くしてよ~」
「はっ!……ああ、今切るからじっとしてろよ」
ガサガサ……
セスが短剣をネリアの体に向けたとき、何かが草を分けて近づいてくる音がした。
「セス、さっきねっ……」
「しっ!……何か来る。声を出すな」
ブチッ……ブチチッ……
何か言いかけたネリアの口を押さえたまま、セスは素早くネリアに絡んだ蔓を切った。
刃を体に当てないように密着していない部分から切り離したので、本人にはまだ蔓が巻きついて見えるが、もう自力で払い落とせる。
セスは草に隠れてやり過ごせないかと、ネリアに覆い被さったまま姿勢を低くした。
ガサッ…………
草を分ける音は、坂上の道のちょうどさっきセスたちが落ちた辺りで止まった。
セスがそろりと顔を上げて様子を見てみると……
「いよーーっス! 奇跡のイケメン天才発明家、ソラさん参上ッ‼︎」
ソラはピースした手で敬礼しつつ、派手な金縁眼鏡の下からウインクを決めた。
燃えるような赤い短髪。継ぎ接ぎだらけの白衣に、ネオンカラーの紫フードと緑のインナー。
そうしたごちゃごちゃした色合いと対照的に、暗い色のスキニーとブーツを履いた足はモデルのように細く長い。
本人の言う通り、顔がキリリと整ったイケメンである。
「あっれあれー?……お二人さ~ん、こんなところでお楽しみ中? それとも、実は襲われてて助けが必要な感じ⁇」
「襲われてて助けが必要な感じですっ!」
緩んだセスの手の下から、ネリアが叫んだ。
「魔吸蔓に‼︎ 襲われてて助けが必要な感じです!」
セスは慌てて補足した。
魔力を吸い取る蔓の名前は、結局『魔吸蔓』に変更しました。
1、アブソーブとバインで『アブソーバイン』……ググると馬のアクセサリー?の名前だった
2、シンプルに吸い蔓で『スイツル』……ググると瑞西と紛らわしかった
3、魔吸蔓で『マキューツル』に。
4、いっそ漢字の方がわかりやすいのでは?
という流れでした。名前考えるの難しい(´・ω・`)また次の出番で変えるかも




