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3ー4.バスルームとボディスポンジと童貞


(うっわ~……すげーいい匂いする……俺、本当にここで浴びていいのか⁇)


瑞々しく甘やかな花の香り。タオル掛けには花の刺繍が入った上品なタオル。

洗面台には、ピアとネリア、どちらかの私物かわからない可愛らしいデザインの小物類が並んでいる。

咽せ返るほどの女子力に満ちた空間で、男のセスは裸になることさえ躊躇われた。


(この背徳感の正体、わかったぞ……! 女湯にいる気分にさせられるせいだ……!)


何もしていなくても罪悪感が込み上げてくるセスは、急いでシャワーを浴びて無事にこの空間から脱出しようと誓う。

しかし、服を脱いでいざシャワーを浴びようとしたところで、セスの手は止まった。


(なんか無駄にいっぱいあるなぁ……)


壁を窪ませるようにして造られた小物棚には、可愛いらしいデザインのボトルが複数並んでいる。

中身はそれぞれ何が入っているのだろうか? いつも石鹸1つで全身を洗っているセスには、見当がつかない。


(まあ俺はいつも通り石鹸だけあればいいし……)


気を取り直してセスは花を模した石鹸皿へ手を伸ばした。

だが、そこでまたピタリと動きを止めた。

家族以外の女性が体を洗っている石鹸を使うことも、自分が体を洗った石鹸をまたその女性に使わせることも、急に罪深く思えてしまったのだ。

きっと普段のセスならこれほどまでに萎縮することは無かったはずだが、ピアという絶対不可侵の聖女様的存在がそうさせるのだろう。


(べ、別にこれ直接肌に擦り付けて使うものでもないし! 水で流してから使って、また水で流してから戻せばいいだけだし! こんなんでビビってどうする、俺‼︎ 童貞かよ⁉︎ 童貞だよ‼︎)


脳内で誰にも知られたくない激しめの1人ノリツッコミを繰り広げながら、石鹸を泡立てるセス。

ところが、緊張のあまり泡立て過ぎた石鹸は、セスの手から逃げるようにツルリと滑り落ちた。


(やっべ!)


慌てて拾い上げようと屈んだセスは、片手を壁に突いた。すると……


むぎゅっ!


硬い壁に、柔らかな感触。掴んだものを見て、セスは思わず声を上げそうになった。

それは壁に吊るされた2種類のボディスポンジのうちの1つだった。


ただのボディスポンジではない。

ピアかネリア……見知った美少女2人の内のどちらかが愛用しているボディスポンジ。


「…………」


セスは神妙な顔つきになって、美少女愛用ボディスポンジからそっと手を離した。

いっそ手にした方がネリアの物だと確証が有れば、ちょっと使ってから戻してやっても良かったかもしれない。

そんな下衆な考えも浮かんで、自己嫌悪に沈んだ。


セスはとんでもない変態に成り下がったような敗北感に打ちひしがれ、心の中で「ごめんなさい、ごめんなさい」と呪文のように繰り返しながら体を洗った。

そうしてようやく全て流し終えたときには、くたくたに疲れ切っていた。


(だが、俺は自分に勝った……! 危なかったけど、変態には成り下がらなかった……! あとは体を拭いて、ズボンを履けばいつも通りだ)


ぽふっ!


そう油断したセスが顔を埋めたふかふかのタオルは、とてもいい匂いがした。


「…………すぅーーーー、はぁぁ……すぅーーーー……」


敗北者セスは、開き直ってそれを堪能した。



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