21ー2.永遠という呪い
本編最終話ですが、***以降は番外編の前振りなので後味悪く切れてます。
「マリッサ……まだこういう場所には慣れないかい?」
「……すみません、ソラくん……私、やっぱり……」
「あー! マリッサとソラ、やっとみつかったの〜!」
花見会場からは死角となっている教会脇の木陰で休んでいたソラとマリッサ。
そこへステラが駆け寄り、セスとネリアも後に続く。
「マリッサ、まけつそうどうのとき、とてもじゅうようなカツヤクしたの! だからステラ、ごほうびにキセキおこしてあげるの。マリッサのねがいごとはなぁに?」
「えぇ……⁇」
唐突な申し出にマリッサが困惑していると、セスが補って説明する。
「ステラは依代更新直後で体内魔脈が不安定でさ。今朝なんか溢れ出た魔力が家の周りの植物を急成長させてて、ドアが開かなくて遅刻しかけたんだ。で、今の器に合わせて余分な魔力を消費しないといけないんだが、土地はもう充分元気になったし、無闇に村中の人の願いを叶えるとトラブルになりそうだろ? だから人を選ぶことにしたんだよ」
「そういうことですか……それなら叶えて欲しいことはありますけど……」
マリッサは言い淀んでソラを見た。
「……亡くなった旦那さんを生き返らせたい、だろ?」
ソラが溜息混じりに確認すると、即座にステラが指でバッテンマークを作る。
「しんでからイッテイキカンがケイカしてたり、イタイのソンカイがはげしいシシャはよみがえらせちゃダメなの〜。そんなセカイかきかえレベルのキセキはマケツのもとなの。ほかのおねがいにするの」
まだ知性が戻りきっていないものの、ステラは人知を超えたところにあるルールを淡々と説明した。
魔女は落胆することなく、静かに首を振る。
「流石にそれはもう望めないとわかっています……ただ、せめて彼の霊と会えないでしょうか? 少しだけでいい……話がしたいんです」
「う〜ん……ちょっぴりちがうかもだけど、がんばってなんとかしてみるの〜!」
そう言うとステラは早速祈りのポーズを始めた。
途端に光の靄のようなものがマリッサの前に出現し、マリッサの目にはその中に亡き夫の姿が見え始める。
「カイ……」
マリッサは話したいことがたくさんあったはずなのに、いざとなると言葉が詰まって出てこなかった。
言葉の代わりにただただ手が伸びると、光の中のカイがその手を取って跪く。
「……大丈夫。俺はずっと、マリッサの幸せを願っているよ……」
マリッサの左手の甲に口付けてそう言い残すと、カイの姿は光とともに霧散してしまった。
温もりの残る左手をマリッサが見ると、薬指から刻印の指輪が消えている。
「きっとカイは、私たちのことを許してくれたんだと思います……」
マリッサは薬指を見つめる目に喜びの涙を浮かべながら、ソラの胸へと寄りかかった。
ソラは片腕でマリッサの肩を抱きながら、空いた方の手でマリッサの左手を握る。
「マリッサ……聞いて欲しい話がある。実はオレ、ずっと考えていたことがあるんだ。……火の国で研究していた魔脈からのエネルギー変換効率化術式……あれを更に改良して、無視できない絶対的な結果を出し、今度こそ承認を勝ち取る! オレの発明で世界をより良くしたいんだ! その為には再びあの国に行って、義父の金でもコネでもなんでも利用しないといけない。何年かかるかわからないけど、必ずやり遂げてみせる! だから……帰国したらオレと結婚してほしい」
刻印の指輪が消えたマリッサの指に、ソラは新しい指輪をはめる。
「待っていてくれるかい?」
「いいえ! 待ちません‼︎」
「そんなぁ‼︎⁇」
「もうこれ以上待つなんて絶対に嫌ですから! 私もソラくんと一緒に行きます‼︎ 結果を出すより先に結婚しましょう。内助の功があった方がきっとうまくいきますよ♪」
マリッサはソラに抱きついてキスをした。そのとき……
「ギイイイイイイイイイイイイ‼︎‼︎」
ガガガッ‼︎
「ぎゃあ⁉︎」
耳をつん裂くようなけたたましい鳴き声と共に、ソラの背中に強烈な鉤爪キックが浴びせられた。
ソラの巻き添えでマリッサも芝生に倒れ込むと、胸の上にストンとドクロウが着地する。
「クロくん⁉︎……そんな、死んだはずじゃ……」
「ギィ!」
困惑するマリッサにスリスリと嘴を寄せた後、ドクロウはチラリとステラを振り返った。
それに釣られてマリッサもステラを見ると、ステラがニッコリと微笑む。
「ニンゲンはダメでもドクロウはセーフなの〜」
「!……あ、ありがとうございます……っ! ああ、クロくん……本当に……本当に良かった……!」
「ギィ〜イ」
「クロに美味しいとこ全部持ってかれた気がするな……」
蹴られた背中を摩りながらぼやくソラ。
その横でドクロウと熱い抱擁を交わしていたマリッサが、突然すっくと立ち上がる。
「今ならクロくんもこの村に受け入れてもらえるはずです! 皆さんも協力してください!」
「はいなの〜!」
5人と1匹は意気揚々と花見会場へ戻っていく。
***
「よっぽどの大魔導士とかならともかく、大昔に亡くなった人の残留思念が未だに会話できるほどハッキリ残っているなんてことあり得るんですかね?」
教会の窓から一部始終を見ていた神父は、聖書台に腰掛けて足を揺らしている少女に尋ねた。
灰色のボブヘアー、ぱっちり開いた金色の目の超絶美少女。
白い羽飾りの付いた黒い帽子。ふんわりとボリュームのある白いスカーフ。
丸みのある襟や折り返しが可愛らしいジャケット。たっぷり広がったシルエットの膝丈スカート。手袋。タイツ。
全体的にグレースケールで統一されているのに、ブーツと日傘の持ち手だけは明るいピンク色。
屋内なのに日傘をさしている少女は、それをくるくる回しながら淡々と答える。
「あれはただ彼女の望みを叶えるための魔法だから、願った通りになっただけだわ」
神父は不満げに尋ねる。
「それでは、幻に騙されて故人を裏切ってしまったのですか?」
自分で何も変えることのできない死者を、生者の都合で一方的に歪める。
神父にはそれが酷い冒涜行為に思えるのだ。
「一度でも解放を望んだ時点でどうせ彼女には『永遠』の資格は無いのだから、嘘吐きが騙り続けていても不愉快なだけでしょう?」
灰色少女は冷淡な口調でそう言うと、神父を見据えて口元だけで笑った。
読んでいただきありがとうございました!
完結後の時系列修正や会話追加などの訂正はその話の前書きでお知らせして行います。
誤字脱字、表記揺れ、キャラデザ微修正(服の色変更とか)などの些細な訂正はサイレントで行います。
番外編は本編の雰囲気と違う話が多いので、タイトルを分けて投稿しています。




