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21ー1.桜咲く結婚式

翌々年、クローバーの月。


桜が満開で良く晴れた日、村の教会でローレンとサクラの結婚式が行われた。

本来なら去年の花見の時期に挙式予定だったが、一昨年の時点で妊娠が発覚した為に延期されたのである。

式は正午前から始まり、現在、屋外での二次会には花見を兼ねて多くの村人が集まっている。


勿論、新郎新婦の長女ユスラも家族に抱かれて参加している。

父親似の金髪とエルフ耳、母親似の桃色の目。

今日はピンクのベビードレスを着て、不思議そうに人々の顔を見回す様子が愛らしい。


若すぎる祖母となったカオルコの隣では、親友の初孫にメロメロなニナがユスラに構いまくっている。

更にその隣、兄を奪われて不機嫌なティアには、親友を奪われてもご機嫌なモモが構いまくっている。

そんな中、妻子から禁酒令を出されたカヅキは少々肩身の狭い様子だ。


家族席から離れた会場端には、ジェーン婆さんを筆頭に、年代のバリエーション豊かな新郎の元カノたちが20名弱。

ハーフエルフの優男ローレンの歴史を感じるその顔触れに、幼妻サクラはハラハラと落ち着かないが、当人はニコニコと落ち着いている。

寿命の違う彼にとって、彼女たちが老いた姿であっても存命であることは嬉しいのだ。


おませさんなガトーとショコラは、クリソベリル村長を巻き込んで結婚式ごっこを始めている。

相変わらず外では完全防備の村長だが、正体がバレて以降はときどき屋敷の中庭で水浴びや日光浴を嗜むようになった。

最近の悩みは、本来の姿の時にメイドたちからモフモフされすぎることである。


一途なお嬢様サーシャは、男やもめのシドに無謀な片思いを続行中。

今日は結婚式に託けて再婚の催促をするものの、躱されるばかりだ。

側に仕えるアリスは、恋のキューピッドにはならないなりに温かく見守っている。


片思いといえば、幼馴染トリオたちも進展の無い恋が続いている。

純粋過ぎるピアはレミのわかりやすいアプローチを見落とし続け、勝算の無いリーナは自身の恋を誤魔化してレミの邪魔ばかりだ。

ちなみに、今日のピアとリーナのパーティードレスはレミが仕立てたものであるが、洋裁スキルと違って身長の方は未だ伸び悩み中である。


「本当みんな変わってないなぁ」


賑わう花見会場を見回して、ネリアはしみじみと呟いた。

任務が終わって火の国へ帰国して以来、約1年ぶりの来訪である。

長期休暇を取って来たので、数週間ほどまたピアの家で世話になる予定だ。

一方、セスはというと……


「久しぶりのネリアが言うならそうなんだろうな。ずっと居る俺が変化に疎いってだけじゃなく」


報告の為の一時帰国を済ませて以降、魔穴が発生した西の山の魔脈を監視する名目で村に定住している。

当然、愛しのステラとあの家で同棲し続けているわけだが……


「あのね、あのねっ! ステラ、すっごくかわったとおもうなの!」


「そうだね〜、ステラちゃんの変化には私もビックリしちゃったなぁ! まさかセスがペド野郎だったなんて……」


「ち、違うぞ! 俺だって想定外だったんだ……‼︎」


「ちっちゃくなっちゃったの〜!」


今のステラは、セスが初めて会った頃と同じくらい幼い姿に戻っている。

ステラがこれからセスと人生を共にすることを大地の女神に認めてもらう為、セスがシアンから預かった種を全て育てあげたまでは良かったのだが、成果を焦ったせいで依代に使った植物が成長不足だったのである。


「セスぅ、いまのステラやあなの……⁇」


「いや、そんなことはないぞステラ! どんな姿のステラだって俺は……」


「ペド野郎」


「ネリアああ⁉︎」


「セス、ペドやろー? ステラ、おぼえた!」


「ステラはそんなこと覚えなくていいから‼︎……って前にもこんなことあったような⁇」


「あっはは! 懐かしいな〜……それにしても、サクラちゃんの花嫁姿すっごく綺麗だったよねー。私も早く結婚式したくなってきちゃったかもー」


「ネリアは結婚そのものじゃなくて式が挙げたいだけに聞こえるぞー?」


ネリアの話題が逸れて、セスはほっと胸を撫で下ろした。しかし、ステラはそうはさせない。


「ステラはねっ、またおっきくなったらセスとけっこんするなの! ちかったの!」


ステラはペンダントに吊るした指輪を得意げに掲げて見せつけた。

ステラが成長した姿だった時に、セスに露天で買ってもらったものである。


「このゆびわがね、ステラのゆびにピッタリにもどったらけっこんしようって、セスがやくそくしてくれたの!」


「あと3年くらい待てばいいはずだよな……」


「は? 最低でも5年は無理でしょ? 怖っ……」


マジトーンでボソリと呟いたセスに、ドン引きするネリア。

その反応に愕然とするセスを尻目に、ネリアはステラへ微笑みかける。


「ステラちゃん〜? ペド……セスに変なことされてない? 嫌なことはちゃんと断っていいんだからねっ」


「だいじょうぶなの! ステラたち、まいにちとってもなかよしなの! あらいっこしたり、そいねしたり、おやすみとおはようのキスもしてるの! むらのひとたちにはナイショってセスとやくそくだったけど、ネリアはむらのひとじゃないからナイショじゃないの〜」


「「………………」」


セスもネリアもしばらく何も言えなかった。


***


余談だが、あれから落ち着いたノーチェは、時々ステラに会いに来るようになっていた。

最近はすっかりシアンの娘にメロメロで、『純粋な幼な子の魂が歪まずに育つために、どうやって守ればいいのか?』『世界をより良くするためには、新しい世代のことを考えるべきだ』『自然を守る心を育むのに、必要な教育とは何かを考えたい』などと、新たな目標に闘志を燃やしている。

しかしながら、大人に対する敵愾心は根強く、隙あらばステラをセスから取り上げようと企んでいるのが困りものである。



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