20ー7.お喋りな死人
「はぁ……まさかシアンさんが数年前に捕獲命令の出ていた人型精霊と恋仲になって、駆け落ちするために火の国から亡命していたなんて……はあぁ〜〜……」
ネリアは大きな溜息を吐いていた。
「ギャハハハww その反応、やっぱりメスガキはシアンの奴に惚れてやがったなww」
それを見て大笑いしているのは、今や生首となったカーマイン。
実はこのカーマイン、かつて駆け落ちしたシアンたちを追手として追い詰めたものの、シアンの反撃に遭い、既に絶命していたのである。
ところが、カーマインの魔導士としての優秀さに目を付けた大地の女神がそれを回収。
蘇生させて使役することにしたのである。
そのことによって変質したカーマインの体からは、血の代わりに樹液のようなものが溢れて断面を覆っている。
この断面同士を合わせると容易に再生してしまうため、ネリアはシアンから、ノーチェの見張りと合わせてカーマインの見張りも命じられていた。
「なんつーか、各地域にそれぞれついてる神ってのはさ、互いにいろいろとめんどくせールール決めた上で各々の箱庭を管理してんだってよww ま、結局のところ、奴らにとっての人間なんて、虫取りしてるガキにとってのカゴの虫みたいなもんなんだよなww」
お喋り生首野郎、カーマインは語る。
「神たちは魔脈を利用して世界を書き換えることもできるらしいぜ? けどそれで世界に負荷をかけすぎた場合、魔脈で繋がってる範囲ならどこでも魔穴が発生しちまう可能性があるんだと。だから神同士見張り合って、魔脈の乱用を禁じてるんだと! まじ使えねーww……ただ、狡猾な水の国の女神だけは自力で海底魔脈を新規開設しやがったらしい。んで、大陸にある魔脈の使用権限をぜ〜んぶ手放しちまう代わりに、そっちを好きに使ってるんだとよww まじずりぃww」
「はぁ……人型精霊の派遣っていう回りくどいやり方も、魔脈乱用を防ぐために神様たちが決めたルールだったってわけですね。それに……もしかしたら、そうしてお使いさせる過程を観察して楽しんでいらっしゃるのかも……」
「おww メスガキも奴らのことよくわかってきたじゃねーかww オレ様たちに正体隠させたのも、お前ら試してあの精霊を預けるか決めるためだったしなww……でよ、魔脈管理用の人型精霊は神同士で決めちまったルールのせいで使いにくいが、その辺にいる一般の魔導士なら特にそういった縛りはねーんだよ。今回オレ様たちに巫女を回収させたのも、自由に使える便利な手駒を増やすためってわけだww」
「ふぅん……大地の女神様ってどんな方なんですか?」
「オレ様も直接会ったことはねーよ。ただ女神っていうからには、ハメ甲斐のあるとびっきりの美女を期待するけどなww ま、シアンにとっては外姑みたいなもんだな。シアンの女房は女神の娘みたいなもんだし? だからシアンの奴、女神や他の精霊どもの機嫌を損ねちまわないよう、あいつらにはメスガキをお嬢様扱いしてた時以上にヘコヘコしてるんだぜww ギャハハww」
「…………シアンさんの奥様ってどんな方なんですか⁇」
「ん〜、オレ様が会ったのは逃避行中のアイツらを襲撃した時だけなんだよな〜……今はシアンとの間にガキも産まれてるわけだから、マジで人間の体になってるみたいだけどよー? あん時は違ったんだぜww 一応もう実体化はしてたけど、体はまだ全然人間になってなくてよー。せっかくシアンの目の前で犯してやろーと思ってひん剥いたら、胸も付いてねーし入れる穴すら開いてねーの! まじツルツルの無ww ラブドール以下ww」
「最っっ低‼︎‼︎ あんた本当に死ね‼︎‼︎」
「でもよー、あん時も今回みたいに山中をずっと追っかけてて女に飢えてたもんだからよー、もうこの際コイツで我慢すっか〜って思ったら『穴が無けりゃ自分で開けりゃイイじゃん?』って閃いたんだよww で、早速ナイフ刺そうとしたら、瀕死だったはずのシアンがマジギレしやがってさww 突然呪術士として覚醒して、あろうことかオレ様をぶっ殺しやがったの! まじねーわww つまり、ザコだったシアンが覚醒できたのはオレ様のおかげ! あいつ恩知らず過ぎww」
「シアンさんがあんたを本気で憎む理由がよぉ〜〜くわかりました……!」
「あ! そういや少しメスガキに似てたかもな? つっても、向こうはペッチャパイだったけどww 顔の雰囲気とか、キャピキャピした頭悪そ〜な感じがww つかメスガキ知ってる? シアンって元々、お前の家に取り入って玉の輿狙ってたんだぜ?」
「は? 嘘っ……」
ネリアはカーマイン愛用の赤いシャベルを振りかぶったところだったが、それを引っ込めた。続きが気になったのだ。
「ま、本人から聞いたわけじゃねーけどなww ただメスガキの父親って変わり者で、権力とか欲しがるどころか忌避してたらしいじゃん? 上級ほどいろいろ煩わしいことも多いからな、そういうの嫌だったんだろ、たぶん。で、『娘婿には自分より身分が低くて従わせやすく、精神的肉体的に信頼できる男を欲しがってる』って噂でさww シアンはそこ狙ってたのに、結局もっと都合のいいあのザコガキが見つかったせいで、厄介払いされちまったらしいww まじウケるww」
「え? セスのこと……」
「そうそう! なのにメスガキ、お前ときたらどっちの男も精霊のメスに奪われやがってwwww まじ超絶ミジメ〜〜wwww ギャーハハハハハ……」
ドムッ‼︎
ネリアは唐突にカーマインヘッドを高々と蹴り上げた。
それから赤シャベルを振り上げると、それを頭部を失った胴体……その股間部へと無慈悲に振り下ろす。
グシャっ……⭐︎
「さてとっ! 真偽不明のくっだらない話はもう充分聞いたし、セスたちが戻ってくる前にお片付けしちゃわないと! シアンさんの言う通り、こんな汚物を私たちのステラちゃんみたいな純真無垢な子には会わせられないもんね♪」
ネリアはそう言うと、大まかに解体したカーマインの袋詰め作業に取り掛かった。
シアンから見張りついでにやっておくよう指示されていたのである。
余談だが、カーマイン本人はシアンたちを追っている最中、自国で恨みを買っていた人々に過去の様々な悪事の証拠を集められ、同じく追われる身となっていた。
決め手となったのは、カーマイン自身の姪との淫行がバレたことにより、いよいよ身内からも完全に見限られたことである。
今でも彼の行方を探す者がいるとしたら、熱烈な復讐希望者くらいだ。
カーマインの姪スカーレットは火の国番外編で重要人物。
地の国番外編と火の国本編を先に書かないといけないので出番はずっと後ですが……




