20ー5.茶番の終わり
「ステラっ……ステラ……ステ…………」
突然、ノーチェの体がぐにゃりとその場に崩れ落ちた。
いつの間にか背後に歩み寄っていたシアンが、催眠魔法を使ったのだ。
「シアンさん⁉︎」
「このタイミングで眠らせてやるのが適切だと判断した。巫女はまだ我々に対する敵意を失くしたわけではない。無事に上司の元へ連れ帰るまでは、念のため拘束もさせてもらう」
ノーチェを憐れむネリアに淡々と説明しつつ、シアンは軍用ロープと魔石製の鎖で厳重にノーチェを拘束した。
何も言えずにネリアがそれを眺めていると、カーマインが予備のロープを手にネリアの腕を掴む。
「任務が終わったなら、これからはフリータイムww オレ様まさにフリーダムww おいメスガキ、前に『なんでもする』って言ったよな? その約束、今から果たしてもらうぜww」
「はァ⁉︎ あんなの反故に決まって……あ、やだ‼︎ 触るな! キモい! 死ね! 変態!……きゃあ⁉︎」
「精霊のほざいてた愛なんて言葉だけの幻想ww 肉欲こそ現実で真実だって、メスガキにわからせてやるよww」
ネリアの浴びせる罵声に、カーマインの高揚した気分を冷ます効果などあるはずもない。寧ろその逆だ。
カーマインは押し倒したネリアに跨ると、早速カチャカチャとベルトを外し始める。
「♪〜〜♪♪〜〜」
「いっ、嫌あッ‼︎ シアンさんっ‼︎ シアンさん助けて‼︎……シアンさん⁉︎」
必死に抵抗しながらシアンに助けを求めるネリア。
ところが、襲われるネリアを横目にシアンは剣の手入れを始める。
「無駄無駄〜ww そいつ、本当はもうと〜っくに亡命済みで、軍人どころか火の国の人間ですらねーからww」
「そんな⁉︎ 嘘‼︎ 嘘ですよねシアンさん⁉︎ シアンさんッッ‼︎‼︎」
「おい、シアンww テメーも任務中は女房と離れてて溜まってんだろww このあと回してやってもいいぜ?」
「遠慮する。娘が生まれたばかりだ。妻は裏切らん」
「だってよww シアンが愛妻家で残念だったなww ま、その分オレ様が存分に可愛がってやるから光栄に思えよ……」
すりすり♡
「嫌ああああああああーーーー‼︎‼︎‼︎‼︎」
シアンに裏切られた絶望に戦意を奪われ、視界を閉ざすネリア。
そして訪れた闇の中……
……ザシュッ‼︎
不穏な音がして、カーマインが動きを止めた。
「え……?」
ネリアが恐る恐る目を開けると、カーマインの頭部がゴロンッと落下した。
切断面からネリアの腹部に温かな液体を溢し、すぐ横の地面へ転がっていく。
頭部を失った胴体の向こうには、剣を持ったシアンが立っている。
「カーマイン、今回の任務でのお前の役目は終わった。自分ももう善良な軍人役を演じる必要は無くなったし、その首を刎ねるのを我慢する必要も無くなったというわけだ」
ダムッ‼︎
シアンはカーマインの生首を遠くへ蹴り飛ばすと、足元のネリアを見下ろした。
ネリアは「ヒッ」と小さく悲鳴を漏らし、凍てつく眼差しにただただ震えあがる。
「すぐ助けなかったこと、悪く思うな。カーマインが油断するのを待ちたかったのだ。……さて、自分にはまだ任務が残っている。指示に従ってもらうぞ、ネリア」




