この刺繍は、強い死臭がする。
生臭い。
生臭いというか、不快感がダイレクトに殴ってくる。
死臭だ。
死臭に近いのだが、何処からどう見ても死の視覚情報が薄い。
情緒的であり、神秘的でもある、その死臭がする布からは、陽のイメージしか湧かない。
死体の上に長らく放置されていた臭いのイメージを、そのまま忠実に再現したかのような強烈な臭い。
色彩豊かな刺繍に、纏うセピア色の死臭。
刺繍から遠ざかれば臭いは消えていくが、その記憶は一生消えることはない。
全身血だらけだ。
布から溢れんばかりに主張してくる、死臭に気を取られて全く気付かなかった。
痛みも触れたときの感覚もほぼ無くなり、死臭だけを強く感じる身体になっていた。
自分はいったい何者なのだろうか。