縁あるものたち
死神Diary最終話です。最後まで楽しんで読んでいただければ幸いです。
「桐生君,こっちの資料まとめておいて!」
「はい!」
「桐生さん,この資料のここの部分ってどうしたらいいんですか?」
「えーと,これは・・・」
俺の名前は桐生 未来。社会人をやって,今は仕事に追われる日々を過ごしている。
「お先失礼します。お疲れ様でした。」
「はーい。お疲れ様です。」
今日も夜遅くまで仕事をしていた。こんなに頑張っていても給料は中々上がらない。
「はあー,あの上司,仕事押しつけすぎなんだよ・・・。」
ため息をつき,上司の愚痴をブツブツいいながら家に向かい歩いていると。ダンボールが置いてあり,ダンボールには「拾って下さい」という文字が書かれていた。のぞき込んで見ると,一匹の子犬が丸くなっていた。
「か,可愛い!」
仕事で疲れた体を癒やしてくれるような人もいなかった俺は,すぐさま犬を連れて帰った。少し汚れていたから,お風呂に連れて行き,子犬を洗った。洗い終わったら,しっかりとタオルで拭いて,ドライヤーで乾かすと,かなり綺麗になった。
「おおー,だいぶ良いな。」
「わん!」
子犬は嬉しそうに,顔を舐めてくる。
「はは,くすぐったいなー。そうだ,大家さんに報告したり,予防注射行ったり,色々としないといけないなー。」
俺の住んでいるマンションはペットを飼っても良いことになっているが,飼うときには,大家さんに報告しなければならない。今度,休みをとってまとめてやれば良いだろうと思い。取りあえず,もふもふを堪能することにした。黒い色をしていて,くりくりの目が可愛い。そして,何処か懐かしい気がしてしまう。犬を飼ったことは無いはずなのになぜだろう。
「名前付けないと。何がいいかなー?ごま?クロ?にぼしとか?」
子犬は嫌そうな顔をしているのが何となく分かる。
「うーん・・・・。」
悩んでいると,ふと頭に浮かんできた。
「ルディとかどうかな!」
「わん!」
嬉しそうに尻尾を振って,飛びついてきた。
(でも,何でこの名前が浮かんできたんだろう?)
疲れていた俺は考える気も起きず,子犬が食べられそうなものを与えて,ベットにもぐった。高校生の時から,胸に穴が開いたような感じは,ルディが来てから,半分埋まったきがした。
目覚まし時計で,目を覚まして,バタバタと朝ご飯を食べ,会社へ向かった。もちろん,子犬には水と食べられそうなものをだしてきた。仕事帰りに,犬用のご飯などを買いにいくつもりだった。朝のこの時間帯は通勤ラッシュで電車がすごく混む。会社に着くまでが俺は苦手だった。すごく疲れるからだ。
「おはようございます。」
自分の場所へ座ると,パソコンと向き合った。ルディもいるため,俺は定時で帰りたかった。そのため,いつも以上に頑張った。昼の休憩時間も休まず,仕事に没頭した。俺の先輩が,話しかけてきた。
「頑張っているとこ邪魔するようで悪いけど,桐生,今日どうした?俺の買ってきたパン一つやるから,休憩はしっかりとれよ。」
そう言って,クリームパンを渡された。
「あ,ありがとうございます。実は昨日犬を拾ったんですよ。ご飯とか買って帰りたいんで,今日は絶対に定時で帰りたいんです。」
「なるほど。まあ,頑張れよ。」
先輩が去って行った後,俺は先輩に貰ったクリームパンを食べた。頑張った甲斐があって,定時に帰ることが出来た。ペットショップへ行き,ドックフードを買い,ついでに,店員さんに教えて貰い,首輪や,ご飯を入れる皿,犬用トイレなど,一通り買い急いで家に帰った。
「ただいまー!」
玄関を開けると,勢いよくルディが飛びついてきた。
「わん!」
「ルディ,玄関で待っていてくれたのかー!あははは,舐めないでくれよ。くすぐったい。」
ルディを抱っこして,リビングへ連れて行った。首輪を付けて上げて,ご飯を上げると,すごい早さでルディは食べ終わってしまった。朝は多めにご飯を置いていったはずだけども,よっぽどお腹が空いていたんだろう。
(主,また再び主と過ごせることが,俺にとって幸せです・・・・。)
次の日,会社の女性陣がざわざわしていた。何事だろうと思いながらも,仕事を始めると,先輩がまたもや話し掛けてきた。
「聞いたか桐生?今日新しく入社してくるやつがいるんだが,誰かがそれらしき人を見かけて,それがとてつもなくイケメンだったらしい。」
「そうなんですね。」
「だから,女性陣は朝からテンションが高いってことだ。」
それだけ言うと,先輩は自分の仕事へ戻って行った。正直興味が無くて,俺は今日もルディのために定時で帰ろうと,仕事に集中していた。上司が会社に出勤してきて,ミーティングが行われた。そこで,新しく入社してきた人を紹介した。
「皆さん,今日からこの会社のこの部署で一緒に働いてくれる神木君だ。神木君,挨拶を。」
「初めまして。今日からここで働かせていただくことになりました。神木 梓紗です。まだまだ未熟者ですが,ご指導していただけるとありがたいです。」
丁寧に挨拶をしたその新入社員は,騒がれていただけあり,誰が見てもイケメンだと分かるほどだった。綺麗な黒髪に色白の肌。そして,優しく,安心できるような声。
「神木君の指導はそうだな・・・。桐生君,君に任せたよ。」
「は,はい!分かりました。」
上司に指導係を任されて,俺は,神木君に自己紹介した。
「これからよろしく。俺は桐生 未来。俺は,人に指導したり苦手だけど,分からないところがあれば,教えるから。」
「ありがとうございます。改めまして神木 梓紗といいます。桐生さん,ご指導のほど,よろしくお願いします。」
初対面のはずなのに,何故か神木君を知っているような気がする。前にも,何処かで会ったことがあったのだろうか。思い出せないけれども,俺の心の穴が,埋まったような気がした。
(未来君,また君と出会えて,僕は本当に良かった・・・。)
死神Diaryついに完結です!!ここまで読んでくださった方,心より感謝申し上げます!!時間をかけての投稿になってしまいましたが,最後まで本当にありがとうございました。感想やアドバイス等ありましたらお待ちしております(*^-^*)