魔女の闇
ルイスは石の壁で覆われた、窓ひとつない、湿った部屋に閉じ込められていた。壁に立て掛けてある蝋燭の灯りだけが部屋を照らす。目の前には鉄で出来た頑丈な鉄格子の柵。
意識を取り戻したルイスが逃げようと手を動かすが、足には足枷と重りが。両腕は壁に縄でくくりつけられ全く身動きがとれない。
コツ、コツ、コツ……と石の階段を歩きこちらに向かってくる不気味な靴音が聞こえる。それと目と目が合うとルイスは震え上がる。そう、ルイスをくくりつけ逃げられぬように足枷を着け、牢屋に閉じ込めた犯人、『シュリーゼ』だ。
シュリーゼは鉄格子の外からルイスを楽しそうに観察する。ドレスのポケットから鍵束を取り出すと、鍵束から一本だけ鍵を外す。それは牢屋に付けてある南京錠の鍵だったーー……。
「……ここから出して欲しい?」
ルイスが動けば動くほど腕をきつく締めた縄が擦り付けられ、手からは無数の擦り傷が出来る。
全然本気を出さないルイスにつまらなくなったシュリーゼは飽きたのか雑談を始める。
「この牢屋の奥には国王の歴代のコレクションが隠してあるのーー……」
「コレクションーー……?」
シュリーゼは燭台を床に置く。蝋燭の灯りはシュリーゼの口許だけを不気味に照らしていた。
「……それが何か教えて欲しい……?」
牢の外に備え付けてある鉄の取っ手を回すと、ルイスをくくりつけている縄が緩み、体が固い石の上に打ち付けられる。
「残念ね……ライリはもうこの城にはいないの」
「なんだ……と?」
「……もうここにはあの子はいないのに、私に嫌われてもいいのかしら?」
「……おまえ……」
「……あなたの運命は私が握っているの。そういえば、あなたブール帝国の由緒ある貴族でしたわね。育ちも肩書きも一級品のあなたがブール帝国とシュリア帝国を結ぶ架け橋となってくれたら良かったのに……」




