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逃避

 気がついた僕は硬いベッドの上だった。薄暗く消毒液とか薬の臭いでいっぱい。

 思い出す。よく嗅いだことのある臭い。

 ここは地獄に近くて遠い場所。僕は今、病院か診療所にいる。

「起きたか。バケモンめ」

 おじいさんのお医者さんが僕をのぞきこんできた。

「まったく、昨日近くで火事が起こっているから見に来てみれば。燃え盛っている本屋からお前がフラフラと出てきて、目の前で倒れられた時には、こっちの心臓が止まるかと思ったぞ」

 僕はモルガンに撃たれたんだ。確か四発は致命傷を外していたんだけど、一発は心臓の辺りに当たったはず。

 その後、アジトである本屋に火が放たれた。でも僕の死にたくないは生きようともがいていたらしい。なにも覚えていないけど、助けてくれたお医者さんがそう言うんだからそうなんだろう。

「お前は運もいい。コイツが受け止めてくれなかったら間違いなく死んでいた」

 銃弾が突き刺さっている懐中時計。あの鈍く光る銀色と、顔は潰れちゃったけどその勇ましいグリフォンの翼は間違いない。

 僕はお医者さんから取り返そうと手を伸ばした。

「ッッーー」

 起き上がり手を伸ばそうとしただけなのにジュワジュワ痛くてたまらない。

 なにより体が石みたいに重い。

「バカモン。傷口が開いたらどうする。止まっているだけならまだしも、こんなガラクタ誰も欲しがりゃせん」

 それはそれで嫌な言われ方だけど、言い返したってしょうがない。

「あの、お代、お代はいくらですか?」

「三年前、違う街で医者をやっていたんだが、マフィアの幹部を死なせちまった」

 いきなりお医者さんの話になった。よほど聞いて欲しいんだろう。助けてもらったし、大人しく聞いてみることにした。

 その幹部は重傷だったらしくて、お医者さんは最善の手を尽くしたんだけどだめだった。ファミリーは助けられたはずだと納得せず腹いせに殺そうとした。

「追手がカゾーニャまで来てな。それをベルティーナに助けられた。残した息子家族もこっちへ逃がしてくれた」

 きっとたくさんの人がベルティーナとパルメジャーニファミリーに助けられている。だから街の人達が助けてくれる。

 僕は何かを見つけたような気がするけど、怖くて目を逸らしてしまった。

「お前、パルメジャーニファミリーだろ。陽が落ちる頃になって、あの燃えた本屋に近づくのはファミリーだけだからな」

 お医者さんはパルメジャーニファミリーが壊滅していることを知らないと思う。モルガン達が僕のことを聞いてきたら疑わずに話すかもしれない。ごまかそうと思ったけど、よくよく考えたら懐中時計を持っていたってことは拳銃だって見られている。素直に頷こう。

「そうか。動けるんだったら、とっとと出て行ってくれ。診てやんなきゃいけない患者はまだいるからな」

 着替えを持つ。袖に腕を通す。ちょっと動いただけでもすごく痛かった。僕はお医者さんにこれ以上迷惑をかけたくないから痛いのを我慢した。

 銃弾によって穴が空いた服。破れたところから見える包帯。こんなに撃たれたのにこうして生きている。

 お医者さんは僕をバケモンだと言った。

 ちがう。運がよかっただけ。

 僕は命を救ってくれた懐中時計をポケットにしまった。

「ありがとうございます。必ずこのお礼をさせてもらいます。いくら持っていったらいいですか?」

「いらねぇよ」

 僕は耳を疑った。

「パルメジャーニには返しきれない恩があるからな」

「そんな、困ります」

 お金を支払わずに済むのならそうしたいけど、できれば僕はしたくなかった。

「それならファミリーの一人としてベルティーナをしっかり支えてやってくれ。昨日の火事と言い、最近おかしいことばかりだ。カゾーニャを守って欲しい」

「はい」

 僕はついしてしまった。

 果たそうともしない約束を。


 カゾーニャの街はいつもと変わらず活気がある。でも今日は雲が多くて風がちょっぴり冷たかった。

 街の人達からはパルメジャーニファミリーの不在が聞こえてきた。

 昨日から配達が来ない、休みじゃないのにお店が閉まったまま、予定通り船が来ているのに港が動いていない。ファミリーの誰かを見ない、アジトに見張りが立っていない。

 背骨を喰われてしまった街。不吉が足音を立てて近づいてくるのを人々は感じ取っている。

 僕は小さな食堂で遅めの朝食を食べていた。

 プッタネスカ。刺激のある魅惑的な香りに、たくさんの魚貝がのったパスタ。あと引く辛さは美味しくて、お行儀なんか捨てて荒々しく食べたい。

 こんな時でもこの街のご飯は美味しい。

 僕はプッタネスカを二皿食べて食堂を出た。

 借りているアパートへまっすぐ戻り、まとめた荷物と一緒にカゾーニャの街を出よう。

 花を散りばめたみたいに可愛らしい服、お話の中の女の子が着ていそうな服。どれもお嬢様に似合いそう。

 でもベルティーナなら白と黒の大人でカッコイイ、けどちょっぴり甘い服を選ぶと思う。

 僕の目はガラスの向こうを見ていた。初めてベルティーナの護衛につき、初めて行った商店街。その中にある洋服屋の前。

 どうしてここに、アパートに帰って街を出ると決めたのに。いや、せっかくここまで来ちゃったんだし、本当に時間が無いわけじゃないんだし、最後なんだし、そう思って寄り道することにした。

 僕は洋服屋の隣にある雑貨屋に入ってウサギの置物を眺めていた。

 今見ているのとは仕草が違うけど、ベルティーナが買おうとして買わなかったことを思い出す。確か無駄づかいだから、いや本当は欲しかったみたいだけど、子供っぽいって言って買わなかったんだ。

 僕は雑貨屋を出て通りを歩いていると、時計屋の小さな看板が目に入った。

 中はたくさんの時計が詰め込まれた宝箱って感じで、カチコチ、チクタク、それぞれが時を刻んでいる。

 時計屋だから当たり前のことかもしれないけど、僕にはとても神秘的に見えた。愛想のいい女の人に「いらっしゃい」と声をかけられなかったら、ドアの前でずっと突っ立って見惚れていただろう。

 僕は懐中時計が並べられているところから一つずつ手に取って眺めてみた。

 花や小さな動物を模様にした可愛らしいもの、ステンドグラスみたいに豪華なもの。僕の手が届くものから、お金持ちじゃないと買えそうにないもの。どれも作りはしっかりしていて見た目も良かった。

 でもベルティーナの懐中時計の方が良かった。

 持った時の重み、艶のある触り心地、生きているような力強い装飾、透き通るガラス、剣のように鋭くて気品のある針、飾らず見やすい文字盤。同じ懐中時計のはずなのに、あの懐中時計は特別にすごかった。

「あら、その様子だと、お気に入りの懐中時計は見つからなかったみたいね? それなら、腕時計はどうかしら」

 今は腕時計が流行っている。丈夫で精度が良い。腕に巻いているから、すぐに時間を確かめられて失くす心配が無い。服装に合わせて腕に巻くバンドを交換できる。

 女の人がグイグイと僕に腕時計をすすめてきた。

 高そうでキザな腕時計。あの黒い革のバンドが悪魔の手に見えて、捕まれたら最後、地獄へ連れて行かれるんじゃないかと思うくらい。今は見たくない。

 出ようかと思ったけど、お店の奥で作業しているおじさんに目が行った。

 小さくて失くしてしまいそうな部品をピンセットでつまみ、無駄のない手つきで時計を組み立てている。

 出っ張ったルーペを付けて黙々と作業をする職人さん。もしかしたら機械(デウス・)仕掛け(エクス)の(・)神様(マキナ)もこんな風に創られたのかもしれない。

「ごめんなさい。もしかして時計を直したかったの? 旦那の腕なら心配ないわよ。時計の本場デュレーブでちゃんと勉強したわ。それに、少しだけど安くするわよ」

 ここは夫婦でやっているお店なのか。いやそうじゃなくて。

 ポケットからでも分かるグリフォンの翼と忌まわしい銃弾。時を止めてしまったベルティーナの懐中時計。今おじさんに頼めば直してもらえるのか。

「いえ、すいません。大丈夫です」

 僕はお店を出た。奥さんが不思議そうな顔をしていたけど、時計は直さなくていい。

 おじさんは奥さんの言うとおり一流の職人だと思う。でもベルティーナの懐中時計は銃弾を受け止めたから普通じゃない壊れ方をしている。もしかしたら直せないことはないのかもしれないけど、元に戻ることはない。

 もし奇跡が起きてきれいに元通りに直ったとしても、もうそれはベルティーナの懐中時計じゃない。同じだけど別の懐中時計になってしまう。そんな気がする。だから頼まなかった。


 僕は商店街を南に出て海辺の方へと歩いた。

 穏やかな波の音。深くて青いカゾーニャの海。街に大きな影が差している今も、初めて見た時と変わらない美しさだった。

 ちょっぴり冷たい潮風に吹かれながら僕はジェラートを食べている。

 シャリシャリしたジェラートが口の中で溶けて、ミルクの甘さとストロベリーの甘酸っぱさでいっぱいになる。その後にヘーゼルナッツの素朴な甘さで口直し。なくなるまでくり返すおいしいひととき。

 この海辺にある小さなジェラート屋さんは僕が初めてジェラートを食べたお店で、ベルティーナのお気に入り。

 どれくらい気にいっているかと言うと、全ての味と全ての組み合わせを食べたことがあるらしくて、できることなら一番の大好物であるプディングと一緒に毎日食べたいと言っていた。

 潮風がさっきより冷たくなってきたので僕は海辺を後にした。


 街の外れにある高台から見るカゾーニャの街。夕日のオレンジに染まるこの光景を見ると、今日も一日無事に終わるんだなとホッとする。でも今は街が闇に飲み込まれるようにしか見えない。

 カゾーニャ。いい街だったけど、変わってしまう。

 パルメジャーニファミリーは壊滅し、ベルティーナは連れ去らわれてしまった。

 この街を守る。僕には無理だ。一人でできることなんてたかが知れている。

 だから僕はこの街を去る。

 よそ者が一人いなくなったところでなにも変わりやしない。

 アパートへ戻ろうとした時、後ろの殺気と風を切る音がしてきたので僕は身を翻した。

「ロッコ」

「あ~あ外しちゃったよ。手負いだからやれると思ったんだけどな」

 中性的な顔立ちと不釣り合いなナイフ。不意打ちに失敗しているから今は構えているだけだけど、僕を殺す気でいるのが伝わってくる。

「僕になんの用だい?」

「アンタを殺しに来た」

 ロッコが飛び出してきたから僕も飛び出す。

 すぐ蹴り飛ばして、登ってきた緩やかな坂から転げ落とそうと思ったけど、向こうのナイフの方が早い。

 何度も襲いかかるナイフをがんばって避ける。なんとか隙を見つけた僕は拳を突き出しロッコに距離を取らせた。

「おかしいな。この前より鈍いのに全然当たんないや」

 嫌になる。生き抜くために身に付けた術なんだろうけど、息一つ切らさずナイフを振り回せる子供なんて本当に嫌になる。

「僕はただの三下だ。どうして君に殺されなきゃいけないんだ」

「アンタがパルメジャーニファミリーの宝を持っているからさ」

「知らない」

 もしかしてベルティーナからもらった懐中時計のことか。

「とぼけたって無駄だよ。パルメジャーニファミリーを裏切り、殺して奪ったんだろ」

「ちがう。僕はもらったんだ」

 子供らしくない薄笑いを浮かべたロッコが迫ってくる。

 バカ正直を後悔している暇なんてない。僕は蹴りを放ち近づけさせない。

 いつもより体の動きが鈍い。動かす度にどこかが痛いと叫んでる。せっかく縫ってもらった傷口が開きそう。

 あっちは早いし殺意がある。このままじゃ本当に殺されるかもしれない。

 いっそ懐中時計をあげちゃおうか。

 蹴り。ナイフを使うと思っていたけど使わず、僕を真似た蹴りが僕を襲った。

 蹴られたところよりも撃たれた脇腹が痛い。倒れるよりはマシか。

 どうしてロッコは僕が懐中時計を持っていることを知っている。子供がどうやってコカを仕入れた。雇ったのはきっと裏切り者のモルガンだと思う。

 絶対やるもんか。僕は息を深く吸って痛いのを我慢する。そして戦おうと構える。

「どうしてコカの売人や殺し屋紛いのことをしている? まっとうに働けるじゃないか」

「関係無いね」

 吐き捨てられた言葉は本当にそうかもしれない。さっき喰らった蹴りよりも重たい。

 一歩出遅れたけど、まだ取り返せる。僕はすぐに勝負を決めようと早く動き、めいいっぱいの蹴りを放つ。

 僕の回し蹴りが防いだ手を上へと弾き、本命である二段目の蹴りが胸に入りロッコを吹っ飛ばした。

 立ち上がらないでくれ。頼む、立ち上がらないでくれ。死んでさえいなければいい。起き上がらないでくれ。ものすごく息が切れるし、撃たれたところ全てが痛い。動けるかと言われたら動けるけど、できることならふかふかのベッドで眠りたい。

 「ふぅはぁ」とうめき声が聞こえてくる。土を握りしめてよろよろと立ち上がる。いったい少年を立ち上がらせる理由はなんなんだ。

「やめるんだロッコ。今の君を見たら孤児院のみんなが悲しむ」

「よく分かんないな。もっと分かりやすく言ってくれよ」

 ロッコはナイフを構え直して今すぐ戦えそう。僕はできるだけ息を整え、強そうに構えて、まだまだ戦えるように見せかける。攻められないよう、ちょっとでもいいから時間を稼いで休みたい。

「コカを売っていること、これから人を殺すこと、君がやっていることを孤児院のみんなに話せるのか」

「関係無いね。どうしてアイツらに話さなきゃいけないんだよ」

 また関係無い。じゃなくて、突風みたいに迫ってくるロッコをいつでも蹴れるよう僕は身構える。

 僕を横切っていった、本当の風みたいに。なんのつもりだろうと思ったけど、後ろから感じる殺気で狙いが分かった。

 不意打ちを狙おうとしたナイフを僕は横に跳んでやり過ごした。

 また僕を横切り、今度は振り返っての投げナイフ。体を低くして避けなかったら、撃たれた肩が深く抉れるところだった。本当に嫌になる。こんなの咄嗟じゃできないし、やっぱりたくさん練習したんだろう。子供が使う技じゃない。

「こんな生き方ルイスは望んでいない」

「なんで」

 よかった。ルイスの名前を出したらロッコが動きを止めてくれた。ズルいやり方だけど、説得できるなら説得したい。殺し合いなんてしたくない。

「なんでアンタがアニキを知ってんだよ」

「僕はルイスと会ったことがあって、君の話を聞かせてもらったんだ。賢いって、将来偉い人になるんじゃないかって期待してたんだよ」

 頼む、届いてくれ。すごくうろ覚えだけど、ルイスはロッコにこんなことをして欲しくないのは確かなんだ。これは僕の願いでもある。頼む、こんなことはやめてマフィアの世界から出ていってくれ。

「……へぇ」

 笑っている。馬鹿にしているような嫌な笑みだ。

 襲いかかるナイフを僕は避けた。さっきよりもロッコの動きが早い。怒ってめちゃくちゃになっているなら隙はある。でもどういうわけか見つけられない。

 どうしてロッコは氷みたいに落ち着いているんだ。一緒に写っている写真を肌身離さず持っていたくらい慕っている『アニキ』が言ったことなのに。僕が嘘をついていると思って信じていないのかな。

 切り刻もうと押し寄せてくるナイフを耐え抜いていくうち、ようやく向こうも疲れてきたのか、振ってからもう一度振ろうとするまでに隙がある。だから僕はつかんで投げようと腕を伸ばす。

 ロッコがするりと後ろに下がった。

 隙ができてしまった僕の肩をナイフが切っていく。縫ってもらった傷口が開き、刺してくるような痛みが襲ってくる。

「クぅぅ」

「死んだアニキの名前を出して動揺させるつもりだったんだろ」

「ごめん」

 僕は素直に謝った。卑怯な真似をしたと思う。

「いいさ。ついでに言っとくけど、どうして死んだかも知ってる。アニキはルーポファミリーがカゾーニャの港に運び込んでいたコカの番をしていた。嗅ぎつけてきたパルメジャーニファミリーと撃ち合いになって、死んだってな」

 ルイスが旅立ってしまったことを知って、理由も知っていて、どうしてこんな命を投げ捨てるような生き方をするんだ。

「俺はパルメジャーニファミリーを恨んじゃいないよ。アニキはバカだから死んだのさ」

 僕は背筋が凍りついた。写真じゃ仲良く一緒に笑っていたけど、あれは嘘だったのかって言いたくなるくらい。大切な人をあっさりと捨てられるのが怖い。

「きみだってバカなんじゃないのか。ルイスはマフィアの世界で死んだんだ。君もこんなところにいたら死んじゃうかもしれない」

「そうだね。それがどうした」

 僕の言葉はロッコに届かないのか。

「アンタさぁ、前に孤児院がキラキラしてるって言ったよな」

「言ったよ。キラキラしていると思う」

 僕が孤児院を見て思ったことは今も変わらない。それを素直に伝えたらナイフよりも鋭い殺意を向けられた。

 ロッコの動きが今までで一番いい。獲物を狩る獣だ。僕は追い払おうと雑な蹴りを放つのでせいいっぱい。

 蹴った足に痛みが走る。かわしたロッコにナイフで切られた。このまま押し倒されてしまうと思ったらもう手遅れ。僕の体は地面に叩き付けられた。

 僕の上をロッコが馬乗りになっている。もし両腕をつかめていなかったら、今頃ナイフで首を切られるか心臓を一突きにされたりして殺されていただろう。

「おんぼろな建物、ボロボロなカーテン、ツギハギだらけの服、粗末な食事。あっちじゃプディング一つ作るんだって贅沢なんだよ」

 確かに孤児院はレンガが剥がれているし、雨漏りの跡だろうシミもあった。服も長年着回していて、破れても捨てずに違う布で塞いでいた。子供は元気だし、ご飯をあまり食べていないって感じはしなかったけど、もっとたくさん美味しいものを食べたいって気持ちも分かる。

 お金がないとか、いろんな問題があるかもしれないけど、僕にはそんなことを感じさせないくらい子供達がキラキラして見えた。

「あの孤児院はアントニオが作ったんだ。娘のベルティーナは贅沢して遊びたいから支援を減らしていった。そのくせ善人ヅラして来やがった。自己満足のために」

「そんなことしない。ベルティーナはそんなことしない。困っている人の味方だ」

 買い物にデザート、毎日遊んでいるように見えるけど、ベルティーナはカゾーニャの街に住んでいる人や働いている人の声を聞いている。大好きな街をより良くしようとしていた。

「おめでたいアンタにはそう見えても、俺にはそう見えないね」

 怒りが、溜め込んでいた怒りが伝わってくる。それと一緒にロッコの振りほどこうとする力が強くなっている。

 いや僕が疲れてきているだけか。右肩や右足から血が出ているのが分かる。つかんでいる手から力が抜けてきているのが分かる。もしこのままがずっと続いたら僕は死んじゃうかもしれない。

「アンタの言うとおり孤児院はキラキラしてるよ。いる間は楽しいんだ。みんなと一緒に遊んで勉強して、誕生日やクリスマスを祝う」

 よかった。孤児院がキラキラしているのは僕の思い込みじゃないみたい。だって殺意を剥き出しにして僕を殺そうとしていたのに、今話しているロッコはどこか楽しそう。

「でも孤児院を出たらお先まっくら」

 また黒いものがロッコからいっぱい出ている。さっきは子供らしくキラキラしていたのに。孤児院を出てからいったい何があったんだ。

「俺達ガキに居場所は無い。出ていって最初に学ぶ事さ。仕事が見つからない、寝られる場所が無い、そもそも金も無い、助けてくれる奴は誰もいない」

「そんなことは、君と同じ年の子が、お店で働いているのを見たことあるよ」

「ふっ、はははははははは」

 どうして笑うんだ。僕は何かおかしいことを言ったのか。

「そうやって働ける奴はまだ幸せな方だね。でもそれはほんの一部。たいていは農園や工場で奴隷みたいにこき使われるんだよ」

 両方とも働いたことがあるから分かる。僕でも辛いんだから子供達にはもっと辛いだろう。でも住む場所はあるし、食べることはできるし、決してまっくらとは言えない。三日月が出ている夜くらいの明るさはあると思う。

「一番最悪なのは仕事が無くて野たれ死ぬか、スリをヘマして返り討ち遭う。どっちみちクソみたいな人生が約束されているのさ」

「約束なんかされてないよ。諦めなければ、がんばれば、楽しい生き方だってできるよ」

 孤児院を出た子がみんな、ロッコが言うような地獄を歩いているわけじゃない。天国には程遠くても楽しく生きている子だっているはず。僕なんかが言える立場じゃないけど、そう信じたい。

「アンタつくづくおめでたいな。ダニエラは洋服を作る工場で一日中働きっぱなし、休みは十日に一度あるか無いか。騙されたフレッドは鉱山に連れてかれて一生どこにも行く事ができねぇ。アニキはマフィアの下っ端として死んだ」

「ごめん」

 辛いことを思い出させた。僕がおめでたかったことを謝った。

「だから俺は決めたんだ。アイツらが孤児院にいても、出ても、絶望しないようにしてやるってな」

 立派だと思う。ルイスと同じ、それ以上にロッコは子供達の為に何かをしたいんだ。お金や地位の為じゃない。それがはっきり分かって良かった。

「俺には考えがある。まず新しい孤児院を建てて、そこで少しはマシな暮らしをさせる。出ても困らないように、アイツらに教養や技術を身に付けさせる。ちゃんとした大人を雇うんだ。後は人脈と、世間から使えるって評判があれば、もっと良い仕事につく事だってできる」

 なんとかしたいと思っても、なんとかしたいだけで止まって、なかなか考えなんて思いつかない。それが思いつけるロッコを僕は素直にすごいと思った。

「その為にアンタを殺して、宝を手に入れて、信頼を勝ち取る。幹部になる。アイツを蹴落としてボスになってやる」

 僕にとどめを刺そうとロッコはナイフを力強く押し込んでくる。本気で押し返してはいるけど胸を刺そうとするヒヤリが伝わってくる。

 子供なのにロッコがギラギラして見えるのは悪魔に魂でも売ったからなのか。

「まちがってるよ。誰が街を守るんだよ」

 僕はなんとか声をしぼり出した。なんとかしたいから。

「ハッ、パルメジャーニファミリーが、ベルティーナがか」

 鼻で笑われたけど、正直ナイフを引いてくれたのはありがたかった。

「おめでたいアンタには分からないだろうな。もうすぐカゾーニャで戦争が起こるところだった。アンタの好きなファミリーと、バカなお嬢のせいでな」

 どういうことだろう。パルメジャーニファミリーが弱くなったから、その隙に攻め込んでカゾーニャの街を乗っ取ろうと戦争が起こる。壊滅してがら空きになった街を奪おうと、マフィアの間で戦争が起こる。

 そうじゃなくて、パルメジャーニファミリーが健在でも戦争が起きてしまう。僕にはどうしてなのか分からなかった。

「簡単に言えば目ざわりだったんだよ。ファミリー同士で結託してカゾーニャを攻撃しようとするくらいに」

 僕はロッコの言うことが信じられない。モルガンも同じようなことを言ってたけど、でたらめに決まってる。そう思った。

 だけど一つだけ思い当たることがある。

「ルーポファミリー。あれを呼んだのはボスだ。アンタ達が囮になってくれたおかげでパルメジャーニは外側ばかりに目が行った」

 僕のことはどうでもいい。それよりもルイスが利用されて死んだのに。アニキをチェスの駒みたいに言うのがたえられない。ロッコは本当に悪魔に魂を売ってしまったんだ。

「怒るなよ。俺やアンタ達は戦争を止めたんだぜ。もっと胸を張れよ」

「戦争を止めた?」

 僕には言ってることが理解できない。どうしてパルメジャーニファミリーが壊滅したら戦争が起こらない。どうして壊滅しなきゃいけなかったのか。わからない。

「しょうがないなぁ。アンタにも分かりやすく教えてやるよ。いいか。カゾーニャの周辺にはパルメジャーニファミリーをよく思ってないファミリーがいる。けど、力でも金でも負けている。そこに四大ファミリーの一角が加わった。後は分かるよな。どっちが多いか、少ないか、数を比べればいいのさ」

「…………向こうの方が多い」

「戦って勝てると思ってないよな。まさか、街を戦場にするつもりじゃないよな」

 炎に包まれる街、雨みたいに降る銃弾、たくさんの死んでしまった人。地獄を見るのが嫌だから、巻き込まれるのが嫌だから、逃げたいくらいなのに。

「普通のマフィアと清く正しいパルメジャーニファミリー。水と油。色々とビジネスの話し合いをしてたけど、お互いが納得いく事なんてそうそう無かった。お偉方も我慢の限界。戦争をしかけるつもりだ。ボスはパルメジャーニファミリーを潰してお偉方を黙らせる。必要な犠牲だったんだよ」

 なんとなく分かった。マフィア達は睨み合いながらもお互いが儲かるようにしている。パルメジャーニファミリーはみんなと違っているから、マフィア達はそれが気に入らない。だから潰そうとする。

 戦いなんてしない方がいい。カゾーニャの街を悲しみでいっぱいにするなんてあってはならない。でもそれを避ける方法があったとして、こんな方法しかなかったのか。こんな酷い方法しかなかったのか。

「とにかくカゾーニャは救われた。それで十分だろ」

 僕を見下ろすロッコ。悪魔が笑っているみたい。

「………………バカだよ」

「なんつった?」

「バカだよ!!」

 僕は大砲を撃ったみたいに叫んだ。

 力いっぱい服を引っ張り、僕はロッコの顔面におもいっきり頭突きを喰らわせてやった。

 のけぞったロッコを横に倒して僕はできるだけすぐに立ち上がった。

 危ないからナイフはお互いの手が届かないところに捨てた。

「……救われてないよ。悪い奴らのものになったんだ」

 ロッコはパルメジャーニファミリーを少ない犠牲だって言うけど、マフィア達にカゾーニャの街を差し出したのと同じだ。

「あ゛?」

 もう立ち上がっている。それに顎を強打したくらいじゃ参ったって言ってくれないか。

「街が悪い奴らのものになったんだよ。孤児院の子供達が酷い目に遭っちゃうんだよ」

「ハッ、心配しなくてもアイツらは俺が守るし、街はボスが上手く仕切るさ」

モルガンか。違う奴だとしても、カゾーニャの街を悪くするのは間違いない。

「君のボスには無理だよ」

「できるさ」

「できないよ。パルメジャーニファミリーじゃなきゃ」

 僕がそう言うとロッコが動いた。

「奴らが何をした」

 今までよりも怒りを剥き出しにしてロッコが僕を殺そうとしてくる。

 さっき捨てたのに。投げてきたのを入れて、いったい何本ナイフを持っている。

「戦争がしたかったのか?」

「ちがう」

 体が重たい。帆船を引っ張っているみたい。さっきの反撃でものすごい疲れた。もうとっくのとうに疲れているんだけど、死にたくないから生きようと動いている。

「なんにも守れちゃいねぇ。まやかしだ。儲けを独占したいだけだ。他のマフィアと変わらねぇよ」

「そんなことない」

 僕はナイフをかわしロッコの足を引っかけて転ばせた。怒って隙だらけだからできた。

 カゾーニャの街を今まで守ってきたのはパルメジャーニファミリーだ。他の街と比べて居心地は良くて、住んでいる人は生きているって感じがするし、お店だって活気がある。それこそがなによりの証しだと思う。

「君のボスに街をまかせられないよ。君を利用して街にコカを流したんだよ。あんな危険なものを平気な顔してばらまくんだよ」

「アンタもその片棒を担いだろ」

 ロッコは立ち上がりながら言った。

「そうだね。僕も悪い奴だよ」

 僕もカゾーニャの街にコカをばらまこうとした。本当のことだからごまかしちゃいけない。認めないといけない罪なんだ。

「僕は昔から暗い海の底を歩いているようで周りがあんまり見えなかったんだ。でもパルメジャーニファミリーのおかげで変われたよ。周りが明るく見えるようになったよ」

「まやかしだ。アンタもまやかしを見せられてるんだよ」

 僕が草原を見ているならロッコは荒野を見ている。それくらい見ている景色が違っていると思う。

「君が言うまやかしって何? わからないよ」

「生きてていい、夢を見ていい。この街にいるとそんな気になっちまう。現実はクソだってのに。ハンパに手を差し伸べるパルメジャーニのせいで」

 孤児院でキラキラした生活をしても、出て行ってしまえば暗闇に包まれる。そうなるなら楽しいものなんていらない、初めから暗闇にいた方がよかった。

 そんなの悲しすぎる。

「君のボスだって孤児院をなんとかするってまやかしを見せてるんじゃないのか」

「そうかもな」

 まやかしかもしれないと分かっているのに。なんでロッコは言うことを聞いてるんだ。

「ボスは話を聞いてくれた。パルメジャーニの時ならもらえなかった機会をくれた」

「バカだよ。どうして、トカゲの尻尾みたいに仲間を切るような奴だと分かっているのに。ベルティーナなら話を聞いてくれたのに。君が本当にしたいことができるのに」

「もうパルメジャーニは滅んだんだよ」

 パルメジャーニファミリーに対する憎しみ。

「生まれながら持っている奴に。わがまま偽善のお嬢になにができる」

 ベルティーナへの嫉妬。

 ロッコは目の前の僕じゃなくて、違うものを殺してやろうとめちゃくちゃに刃物を振り回している。

 僕はロッコを蹴り飛ばした。

「君もあの場にいたんだろ。ベルティーナは中毒者(ジャンキー)になった人の為に涙を流したんだよ。孤児院だって助けてくれる。君のボスと違ってベルティーナはこの街が好きだから」

 僕はベルティーナがロッコの思うようなお嬢様じゃないことを伝えたかった。見え方が簡単に変わるとは思えない。それでも伝えずにはいられなかった。

「孤児院の子供達を大切にしているけど。君もあの子達も親がいたよね。悪い奴らのせいで親と離れ離れになった子だっているんじゃないのか。悪い奴らに街をまかせたら今より悲しい思いをする子が増えちゃうよ。おかしいよ」

「うるせぇッ」

 だだっ子みたいなロッコの叫び。僕を刺し殺そうと突っ込んでくる。

 ロッコは初めから自分のやっていることがおかしいって分かっていたと思う。孤児院を良くしても街が悪い奴らのものだったら、そこを出た子供達が悲しい目に遭ってしまう。ひとりぼっちで寂しい子が増えてしまう。子供達に悲しい思いをさせたくないのに。

 分かっていたけどやるしかなかった。それしか方法が無かった。だからここまで引き返せなかったんだと思う。

 終わらせよう。

 僕の体はもう既に地面を離れ前へ跳んでいた。

 僕は突っ込んできたロッコにおもいっきり跳び蹴りを放った。

 本当はベルティーナみたいに抱きしめてあげて「大丈夫だよ」とか言ってあげたかった。でも今の僕にはそんな余裕が無かった。

 跳び蹴りを喰らって倒れたロッコ。ぼんやりだけど意識はあるみたいで僕の方を見ている。

「やり直そう。君のキラキラを見つけるんだよ」

 ロッコはカゾーニャに来たばかりの頃の僕に似ている。探しものをしている内に何を探しているのかわからなくなってしまった僕に。

「そう言うアンタは見つけたのかよ」

 答えられないでいるとロッコにまた鼻で笑われた。もうこれで何度目か分からない。

 なんだか僕の嘘を見抜かれた気がする。

「僕は、失くしちゃった」

 あれだけ偉そうに言っておきながら僕は探すつもりはない。

 カゾーニャの街を守るつもりも、ベルティーナを助けるつもりもない。

 今も逃げ出したいと思っている。

 僕が死にたくないから、ロッコを殺したくないから言ってただけだ。

「でも君のキラキラなら持っているよ」

 僕はロッコに写真を返した。正しく言うと手から落とした。しゃがんだら二度と立ち上がれない気がするから。

 写真がひらひらとゆっくり舞って、ロッコの胸に落ちた。

「アンタが()ってたのかよ」

「引き寄せられたんだよ。僕の方がキラキラしてたからね。でも今は君の方がキラキラしてるよ」

 ちょっと笑っている。

 ルイスと友達と一緒に写っていた写真みたいに、ロッコにはもう一度子供らしく笑って欲しい。

 この街を去ってしまう僕の勝手な願いだけど。


 僕はロッコの肩を借りながら高台の緩やかな坂を下りていた。

 本当は僕の方が大人だし、怪我した足でたくさん蹴れていたから一人で降りられると思う。でも緩やかとは言え今の足で坂を下りるのは危ないし、なによりロッコから肩を貸してきてくれたのが嬉しかったからつい甘えてしまった。

 もうすっかり日が落ちてしまった。僕とロッコは十五分くらいケンカしてたんだから暗くもなるか。

 遠くから聞こえてくる動物の鳴き声。木々を揺らす風。僕とロッコで踏みしめる土。支えてくれている息づかい。なぜかハンモックで寝ているみたいに心地よくて、このまま眠ってしまいたくなる。

 背中を強く叩かれた。

「こっからは一人で歩けるよな。お兄さん」

 もう少しのところで死ぬところだった。楽に死ねなかったのはちょっぴり残念だった気もするけど、僕はまだ死にたくない。

 とにかく気を抜かないよう気をつけないと。

「お兄さん。前にベルティーナがお兄さんの名前を呼んでたけど忘れた。教えてくれよ」

「ジェフリー。ジェフでいいよ」

 ロッコが「アンタ」や「お兄さん」じゃなくて僕の名前を初めて呼んでくれる。たったそれだけのことなのにすごく嬉しい。

 たくさんの銃声にかき消されるまでは。

 僕の目の前でルイスが撃たれた。

 今度はロッコが撃たれた。

 僕の手はコートを翻し腰のホルスターにしまった銃を握っていた。

 既に体は撃った奴がいるだろう方を向いていて、抜いた瞬間には引き金を引いていた。

 手にちょうどよく収まる握り。ちょうどいい重さ。ちょうどいい反動。ずっと撃っていなかったのに今も体の一部とも言えるくらいよく馴染んでいる。

 僕は人を殺す機械になった。


 僕の周りは暗闇と静寂に包まれていた。

 足元に落っこちている薬莢は六つ。

 僕は六人殺してしまった。

 ルイスが死んで、同じ境遇のロッコを死なせたくなかった。だからマフィアの世界から出ていくよう説得した。本当に説得できたかどうか分からないけど、野望のギラギラは消えて晴れやかな空みたいにすっきりして見えた。

 あいつらを許せなかった。これからやり直すはずだったのに奪われてしまった。本当に許せなかった。

 でも僕は六人の人生を奪ってしまった。ロッコを殺した奴らと同じことをしてしまった。もう二度と誰かを殺さないと決めておきながら、怒りにまかせて使わないと決めた銃を撃ってしまった。

 どうしたらいいのかわからない。

「ぅぅ」

 月と星が僕の周りを照らしていた。

 ロッコの背中は真っ赤に染まっていて、太ももの裏と後頭部も撃たれていた。もう旅立ってしまったかと思っていたけど生きている。僕を助けてくれたおじいさんのお医者さんのところまで運んであげられればきっと助かるはず。

「なぁ」

 今にも消えてしまいそうなくらい弱っている。後でたくさん聞いてあげるから話しかけないでくれ。

「大丈夫だよ。僕がお医者さんのところまで運ぶよ。すごい腕なんだ」

 まず血を止める。その後は抱き上げてお医者さんのところまで行く。いや傷を地面に向けていいのか。屋根から落っこちる水滴みたいに血が出てくるかもしれない。無理やり引っ張り上げてから背負った方がいいのかもしれない。

「ベル…………は」

 今、かすかにロッコがベルティーナと口にした。

「さいしゅう列車。モルガン、貸し切った。ロディノに行く」

 モルガンが今日最後の列車を貸し切ってベルティーナをロディノに連れていく。

 ロディノは四大ファミリーやいろんなマフィア達が集まる街。大切な決め事や新しくボスになった人を本当のボスとして認める会合をする場所。

 もしそこでパルメジャーニファミリーのボスがモルガンだと認められたら、ベルティーナは殺されカゾーニャの街は死ぬ。

「ありがとう」

 ごめんね。僕はロッコをお医者さんに預けたら街を出る。

 きっと僕が助けてくれる。街を守ってくれると信じて言ってくれたんだろう。

 でもできない。

 怖いから。

「キラキラを、ジェフ、俺のかわりに守ってくれ」

 そう言い残してロッコは旅立ってしまった。

 僕は泣き叫んでいた。涙が枯れるまでずっと。

 このまま同じことをくり返してもいいのか。

 新しいところに行って新しい大切なものを見つけたとしても、また同じことをくり返してしまう。

 僕こそ終わりにしよう。

 終わりにしなければならない。

 僕は僕に逃げないと誓った。

 やらなきゃいけないのは僕だから。


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