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第五話 魔物狩りとお茶会

「グギッ」「グギャギャ‼︎」


俺を取り囲むように五体のゴブリンが茂みから現れた。普段ならこの時点で俺に付いている護衛が出てくるのだが、今は俺の後方にある茂みに隠れて様子を伺っている。別に彼らが怠けていたり俺が何かの罠にかかったわけではなく、今日は俺たちが魔物狩りに来ているのである。おれはゴブリンの位置を把握した後、素早く魔力を練る。そして風の刃を作るとそれをゴブリンの喉と心臓の部分目掛けて的確に攻撃し、確実にゴブリンの息の根を刈り取った。すると、茂みの一つから拍手をしながらモレラさんが現れた。


「さすが、ジャック様だね。森の中という状況判断による魔法の選択。魔力の練度も申し分ない。また、魔法一つ一つの質も素晴らしかったし、それをしっかりとコントロールして狙った位置を寸分違わず、しとめ損なうこともなかった。満点だよ」

「ありがとうございます。出来れば魔法を放つまでの時間をもっと短縮したかったのですが…」

「それは経験とかもあるからしょうがない部分はあるよ。それでも十歳の子どものスピードではないよ。そもそも、魔法を操るなんて十二歳から入学するヘプターシア王立学園に行って初めて習うものなんだからね。ましてやジャック様のスピードはすでに俺の現役の時のスピードと同じくらいだろう。それでもまだまだだと言われたらこちらが落ち込んでしまう」

「では、現時点では満足しておくことにしておきます」


もちろん、今の俺は本気でやってはいるが、百パーセントの力を発揮していない。この世界に転生して十年くらい経つが、この世界の基準で俺の力をみてみると圧倒的に俺は強かった。それは俺が全力で力を発揮すれば世界征服が片手で出来ると言っても過言ではない程だ。なので、俺の目的である『人望を集める』ためにまずは注目してもらうことが必要なので、俺はわざと『近年稀に見る逸材』と思われる程度に力を調節して使っているのである。また、数百年もの間に色々と努力してきた俺の力を未だ十歳の体では上手く操れないということも理由の一つだ。


「よし!今日は暗くなってきたし、この辺りにしておこう」

「はい」


モレラさんの言葉に返事をして、俺は帰る準備を始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺が社交界デビューして五年が経ったが、その間に色々なことがあった。まず、修行の一つとして魔物狩りを始めたことだ。これは思わぬところで俺にメリットがあり、俺が度々魔物狩りを行っていることを知った王都の民が貴族でしかもまだ子どもなのに魔物を退治してくれるなんて、と良い噂をし始めたのだ。魔物狩り事態は他の貴族も行っているのだが、おれは魔物狩りに行く頻度が高く、また一回での量も多いため目立っているらしい。まあ、これで良い意味で知名度が上がるのとは嬉しいことだ。


また、妹のイスカも社交界デビューを果たし、俺も多くの貴族の御子息ご令嬢と知り合った。アントニーのようにどうしても合わない奴もいたが、多くの子どもたちとは良好な関係を築けていると思っている。特に仲良くなった子どもとは家族ぐるみでの付き合いを行い、家にお邪魔させてもらったり剣の稽古や買い物をしたりした。


今日は、仲の良いいつものメンツと王城にある庭の一つを借りてお茶を飲んでいる。俺の左隣には妹であるイスカが座っている。昨年からパーティーなどにも出ているのだが、元々の可愛らしさに磨きがかかり他の貴族の御子息の目線を釘付けにしていた。不埒な目線からは全力で俺が守らせてもらったが…


俺の右隣では、その隣の兄アルフレッドと話しているオリビアがいる。俺はこの五年間でこの兄妹とはかなり親交を深められた。そして気付いたことだがこの兄妹は実はかなりアグレッシブな性格である。周りからはお淑やかであると思われているが、この二人とは良くお忍びで城下に行ったり魔物狩りに行ったりした。


「ところでこの前、ジャックさんと姉様は二人でこそこそしてましたが何を話していたんですか?」


そして、この穏やかな空気の中に爆弾を放り込んできたのはクラレンス侯爵家長男でキャシー姉さん(キャサリン嬢からこの呼び名に強要された)の弟であるシャーリーだ。これがわざとである証拠にニヤけた笑みを俺に向けてきている。キャシー姉さんの三歳下で九歳である。容姿は姉と同じ金髪紅眼だが、いつも緑色の眼鏡をしていることが特徴だ。性格と合わせて腹黒秀才タイプである。


「いくら相手がキャシー姉さんといえども私やリビア様に黙って密会とは許せません、兄様」

「どういうことですか、ジャック様?」


ほら、折角良い感じの雰囲気だったのに台無しである。リビアの後ろではアルが冷たい眼差しで俺を睨み付け、他の皆も好奇の目か疑いの目を俺に向ける。何故、俺の味方がいない…


閑話休題だが、実はアルやオリバー王、マリー様から俺はリビアとの婚約を勧められている。王家には珍しく、この家族も政略結婚よりは恋愛結婚派であり、何やらリビアが食事の時などで俺の話してを楽しそうにするので、リビアにカマをかけてみると見事にヒットしたらしい。可愛い娘の初恋を応援したい父母に妹を奪われるのは嫌だがどこの馬の骨か分からない奴よりは俺を選んだ兄はそれからリビアがいない時などを見計らい俺にこの話題を出してきた。また、この行為がリビアにバレてからは本人も交えて俺にアタックをかけているのである。俺は未だにちゃんとした返事を返してはいないので、ある意味今の俺の最優先事項となっている。


「特に大した話はしてないわ。ただ、私はあと少しで学園に入学するからその前に私の婚約者殿のことについて相談していただけよ。だから、イスカもオリビアもジャックのことをそんなに責めないでいてあげて」


その様子を見て肩を竦めてため息を吐くキャシー姉さん。これも閑話休題だが、ヘプターシア王国では十二歳になると貴族平民問わず、入学試験に合格した子どもたちはヘプターシア王立学園への入学が許されている。そして、例外はあるが基本はここで五年間色々と学ぶことになるのだ。今年、十二歳になったキャシー姉さんもあと一月でその王立学園に主席での入学が決まっている。そして、キャシー姉さんの婚約者はなんとあのエディンバラ家のアントニーである。アントニーはキャシー姉さんの一歳上で今度、学園の二学年に進級することになっている。こちらは中立のたちはを維持しているクラレンス家を引きこもうとするエディンバラ家が仕掛けた政略結婚なのだが、既に俺たちとこんなに仲の良いキャシー姉さんを完全にそちら側にすることなど出来るのだろうか?また、アントニーは口ではいつもキャシー姉さんに負けてしまうため、最近ではアントニーの苛立ちが積もる一方となっている。それが俺たちの悩みの種なのだが…


「またあの人ですか…キャシー姉さんもジャック兄さんも苦労してますね」


俺のことを『ジャック兄さん』と呼ぶ水色の髪の『ザ・男の娘』な少年は三大公爵家の一つ、ランカスター家長男シュレミーである。俺の一歳下の九歳で、なんと我が最愛なる妹イスカの婚約者だ。イスカ曰く、外見に似合わず情熱的な部分も有るらしくイスカの断りに負けずに何度もアプローチをかけていたらしい。イスカもシュレミーの気持ちやそんな態度に対して満更でもなかったらしくOKの返事をしたのだ。俺も近くでそのやりとりをかれこれ半年以上見てきたが、イスカの婚約者になる前から仲の良かったシュレミーの真っ直ぐな態度は見ていて気持ち良く、婚約が決まった時は家族全員で喜んだものである。俺もシュレミーのことを弟のように大切に思っているし、シュレミーも俺を呼ぶ名の通り、俺のことを実の兄のように慕ってくれている。


「兄さんはそんな他人事ではなく、もっとジャック兄さんたちみたいにあの方のことを考えてください。影で笑ってる殿下もですよ」

「うっ…」


この国の皇太子であるアルに対して物怖じせず、シュレミーのことを『兄さん』と呼んだ少女はレベッカ。兄であるシュレミーとは一つ違いの八歳で兄と同じ水色の髪を背中まで伸ばしている。レベッカはアルの婚約者であり、将来の王妃として日々修行中である。その教育の賜物なのか、しっかり者であり時々巫山戯るアルをいつも諌めている。最近のレベッカは俺に厳しい…。レベッカがなかなか俺のことを名前で呼んでくれない…。とアルが俺に愚痴ることが最近の俺たちの日課とかしている。


「俺からしたらあんな奴、どうでもいいけどな…」


そう言って、気怠げにため息を吐く切れ目で赤毛を短髪にした少年の名はブライアン。四大侯爵家の一つヨーク家の長男で俺と同い年であり、俺とは従兄弟にあたる。家系を上手く継いだらしく武芸に秀でており、同世代でも群を抜いて実力のある俺たちの中でも頭一つ抜けており、自分の腕にかなりの自信を持っている。ただ、俺に惨敗した過去を持っており、俺のことを勝手にライバル認定している節がある。


「まあ、キャシー姉さんもあと少しで学園に入学してしまうからな。その前に一応確認したいことがあっただけだ」


俺はキャシー姉さんから出された助け船に甘えることにして、この話題はここまでだと言外に告げる。実際、その話を二人で相談しただけなので特に卑しいこともない。


俺を入れてこの九人がこの五年の間に定着したメンバーで、大切な幼馴染である。しかし、時も流れ俺たちも成長していく。これからは都合良くメンバー全員が集まることは難しくなるだろう。その例として挙がるのがキャシー姉さんの入学である。ちなみに、今日集まったのはその主席入学のお祝いであったりする。王立学園は全寮制の学園で授業や行事でも色々と制限が出てきてしまうため、少なくともキャシー姉さんは俺たちと会うことは難しくなる。皆も同じことを考えていたようで表情に翳りが見える。それを見かねたキャシー姉さんが口を開いた。


「皆して何辛気臭い顔しているのよ。別に貴方達より早く入学するだけでここにいる全員がいずれ入学試験を受けて合格したら入学することになるのよ。それに私の送別会でそんな顔されたら縁起が悪過ぎるわ」


「そうだな。キャシー姉さんには先に入学してもらって婚約者殿の手綱をしっかりと握っていて貰わなければ困る」

「あら、お兄様。キャシーお姉様に丸投げしては流石に可哀想です」


キャシー姉さんの言葉に合わせるようにアルとリビアが冗談を言い合う。少し和んだ雰囲気の中、ブライアンが名案とばかりな勢いで提案してきた。


「そうだ。キャシー姉さんの入学前に俺たちが集まれるのがおそらく次が最後だから、このメンバーで景気良く魔物でも狩りに行かねえか?」

「そうだね。最近は勉強とかであまり体を動かせてなかったから丁度いいかもね」

「女の子としては最後に魔物狩りっていうのは思うところがないわけでもないですけど、悪くはないですね」


他のみんなも満更でもなさそうに返事をする。魔物狩りと聞けば一般的に怖いイメージが強いが、この王都の近くの森や草原ではこの国の中心ということもあり、商人などが通る道も多い。なので、管理もされており低級のゴブリンやスライム、コボルトなどしかいないのだ。だからといって、被害がゼロというわけではないので、貴族の中では一種のスポーツとなっており、それによって魔物の被害も減らしているのだ。護衛も付くので、それほど大きな危険はないのだ。


「よし!ならば後で、騎士団に護衛の依頼とスケジュール調整をしておこう。ジャックもそれでいいか?」


みんなが肯定の意志を示したことを確認したアルが俺に尋ねてきた。この光景は最近では当たり前のようになってきており、普段の態度や言動からなのか、俺がみんなのまとめ役っぽいポジションになっているのだ。俺はそのアルの問いに苦笑いで答える。


「まあ、俺が今更反対してもみんな行く気満々じゃないか。前から思っていたが、わざわざ俺に確認しなくてもいいんじゃないか?」

「それでも、私たちはジャック様の言葉を聞きたいのです」

「それで、兄様はどうなのです?」


俺の質問にリビアが答え、イスカが俺の返答を急かしてくる。


「わかったわかった。俺も予定を調整しておくよ」

「じゃあ、決まりね。楽しみにしているわ」


キャシー姉さんの言葉で解散ムードが漂い始め、俺たちは席を立つ。それぞれが別れの言葉を口にした後、俺とイスカは城門で待っているメイドのアイリの元へと歩く。


「ジャック様、イスカ様。お楽しみでしたね。今日はハロルド様が久しぶりに夕食を家族と食べれると申しておりましたので、邸宅にお帰りになった後、すぐに夕食となっております」

「あら、父様は最近忙しそうにしてたみたいだから珍しいわね。なら、兄様急ぎましょ?」

「そうだな。ついでに今度の魔物狩りのことも話そうか」


そう言って、俺たちは馬車に乗って王城を後にする。









そしてこの魔物狩りから運命の歯車が動き始めるのだが、この時の俺たちはもちろんそのことを知らない。

こんにちわ‼︎作者の星司です。


早速、皆様に謝罪をしなければならないのですが、テスト投稿で挙げるとお話していた序章なのですが、作者が考えていたよりも長くなってしまい、年中に全ての話を挙げるのは難しそうです。また、作者のリアルの事情により、更新速度も少し落ちるかもです。しかし、キリの良いところまではしっかりと責任を持って書いていきたいと思うので気長に待っていていただけると助かります。


それでは今後とも、神様候補生の転生をよろしくお願いいたします。

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