空の国
「地上を見てみたい」
この国でその言葉を言うものはいない。
空の国アバンでは空の国が最上のもので、地上は危険で汚らわしい場所であると習わずとも全員がその価値観に浸っている。
エドモンドはそれが不思議でならなかった。
地上のことを記載した図鑑を幼い頃見たとき、素晴らしい世界がこの世の中にはたくさんあると感じた。
見たこともない景色、人、動物がこの世界にはたくさんある。
空の国の人々は地上に行ったこともないにもかかわらず、
地上は悪いところと決めつけ、誰も出ようとはしたがらない。
エドモンドは大人になったとき、地上に行くと決めていた。
ただ、この国から地上に出る正式な方法は一つしかない。
軍の地上偵察隊だ。
この国では若い優秀な人間は軍に入る。軍には様々な隊が存在し、その中で誰も行きたがらない隊、それが地上偵察隊だ。
任務は地上に降り、世界情勢を調査することだが、誰もそんなことはしたがらない。
ただ、エドモンドにとっては自分の一番やりたいことができる
最高の舞台であった。
しかし、その軍に入るには最低でも後5年は必要だった。
エドモンドはやりきれない想いをいつも抱えながら
学校の屋上で寝ころびその言葉を口にするしかなかった。