表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/95

第43話 再会の喜び

第五章スタートです。章タイトルはまだ決まっていません。スイマセン・・・。

「エリザベートですわ」

「メイドのイネスでございます」


 今、俺達はベルニエ家の屋敷に来ている。

 

 東の門の前で再会した俺達は、事態の収拾をつけるため、事情を聴こうと二人を屋敷へと案内することにした。


 とりあえずは街の危機が去ったと言う事で、自警団の皆には解散してもらった。まぁ、団長をはじめとする仲間たちが帰ってきたのだ。積もる話もあるだろう。


 その場は団長に任せ、アリゼと共に二人を屋敷へと案内したのである。





 話を聴くに、俺が王都を飛び出してから、二人は俺を追うことにしたらしい。しかし、走って追いかけるのでは絶対に追いつけないと考えた二人は馬車を購入することにしたそうだ。

 カリエール家に有った家財道具をほとんど売り払い、金に換え、その資金と、俺が売った呪いの品の金を使って馬車を買おうという事になり、もちろん、そのまま馬も買う予定だったのだが、ちょうど、あの地竜もセットで売っていたのを見つけ、その方が早いだろうと、それを買ったらしい。値段も安かったそうだ。


 まぁ、安い値段には何か裏があるものだ。馬より早くて力があって、それなのに安い。何か問題がないほうがおかしいだろう。


 で、その問題なのだが、言うことを聞かなかったらしい。行く方角、走る速度、休憩場所、全て自分の気の向くままに決めるらしく、よくここまで辿り着けたなと感心してしまった。


 そんなわけで、俺を追ってきた二人だが、折角来てくれたのだ。俺は二人を歓迎することにした。


 適当な挨拶を済ませ、先ずは風呂と言う事になった。引き摺り回された二人もひどい有り様だったが、俺だって乾いた血が沁みを作り、カピカピだった。こんな恰好で屋敷をうろついて汚すのも悪いので、アリゼの厚意に甘えることにしたのだ。


 汚れを洗い流し、湯船に浸かった。三人で入るには少し狭かったため、イネスは後で入るということになり、エリザベートと二人で入ることになった。ただ、イネスは風呂に入らないだけで、風呂場に入る、服を着たままで控えているのだ。過保護というかなんというか。まぁ、イネスの心情も理解できるがな……。


 正直、二人が追いかけて来てくれて、俺は嬉しかった。皆、俺から離れていってしまうと思っていたのに、二人は違った。離れた俺を追いかけてまで一緒に居てくれようとしたのだ。

 もちろん、アリゼ達だって離れてはいないが、二人と他の人との決定的な違いは、俺のあの力を目の当たりにしていると言う事である。


 二人との初めての出会いの時、俺はあの力を使って五人の男を殺した。いや、正確にはあの力で殺したのは三人なのだが、そんなことは重要ではない。重要なのは、二人が目の前であの惨状を目の当たりにしているということだ。


 あれを見ても尚、二人は俺を追ってここまで来てくれた。俺は独りじゃない。俺を一人にしない存在がいる事を、俺は今日、しっかりと心に刻んだ。


「どうしたんですの?」

 何でもないよ――

「変なレリアですの」

 ふふ、そうかもね――

「……レリアには笑顔が似合いますわ」

「そうですね。大変かわいらしいですよ」

 ちょっと、照れる――

「ふふふ」


 エリザベートの胸にはまだ黒い染みがあった。しかし、エリザベートを縛り付けるその染みは今ではすっかり薄くなり、パッと見にはわからない程になっている。完全に消えるのも時間の問題だろう。


 イネスの表情は初めて会った時のような硬さはなく、柔らかい微笑があった。本来の彼女はこっちなのだろうか。だが、どちらにせよ俺はこっちのイネスの方が好きだな。



 俺の中で、二人の存在は大切なものになっているのだと思う。大切なものはもう作らないと決めたはずなのに、俺はなんて弱い人間なんだろうな。失った途端、それを埋めるように他のものを用意するなんて。


 アリゼ達だってそうだ。マリーの面影を何処かに求めて、アリゼをマリーの代わりにしようとしている。


 このままだと、きっとランスの代わりとしてセレスタンをその位置に置くのだろう。


 だが、それでいいのかもしれない。二人が望んだ俺の姿は、きっと、こんな風に大切な人達に囲まれた生活だったのだと思う。復讐なんかよりも、きっと……。





 綺麗な服に着替え、サッパリとした気持ちで自室へと向かった。イネスが風呂に入っている間、今後のことについて少し話したのだが、その結果がこれだ。

 エリザベート達の部屋を用意することもできたのだが、彼女はそれを断ってしまった。つまり、メイドのイネスもその流れで断るわけで……。そして、何故か俺の部屋で過ごす事になったのだ。

 まぁ、恐らくエリザベートは寂しいのだろう。王都でも、一緒の部屋で過していたしな。彼女もまだ十二歳。もうすぐ成人とは言え、まだまだ子供だ。一緒に居たいというのなら、そうしよう。



「ここがレリアの部屋ですのね。……狭いですわね」


 うん、まぁ、そうなんだけどさ。確かに、お前の部屋よりは狭いよ? だが、森の中の俺の部屋よりは十分広いわけで。はぁ、まぁいいか、事実だし。


 部屋を歩き回るエリザベートに対し、入り口に佇むイネス。やはりメイドだ。入り口で待機し、主人の命令を待っているのだ。まぁ、首から上はキョロキョロしているが……。


 二人とも、俺の部屋に興味津々といった様子だった。


「しかし、レリアは速いですわね。ピー君でも追いつけないなんて」


 俺の傍へと戻ってきたエリザベートがそう告げた。ピー君というのはあの地竜の事で、ピーピー鳴くからだそうだ。今は敷地内の厩舎に入って貰っている。案外おとなしいものだった。


「ここには何時着きましたの?」


 えーと、何時だったか。六日くらい前か? 俺は六本の指を立て、エリザベートに示してやった。


「……速すぎですわ。しかも、その大盾を持ってですわよね? 案外、その盾は軽いのではなくて?」


 そう言いながら、壁に立てかけてある大盾に手を伸ばすエリザベート。持てるものなら持ってみるといい。軽いわけないだろう? 俺だって、気力を駆使して振り回しているんだから。顔を真っ赤にして持ち上げようとするエリザベートを想像して、俺はフッと笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ