プロローグ
高校三年生の時の事だった。
『人生のターニングポイント』
壮年の女性担任教師がいきなりこんな話を持ち出した。
今日は四月六日、春休みも終わって、今日からまた日常が戻り始める。桜も丁度満開を迎えるいい季節となっていた。
俺に今の桜より衰えていない時があったのだろうか。
その女性教師は、大学受験というものは人生の大きなターニングポイントの一つだと言う。
俺はそんな話を憂鬱に聞いていた。
『転機』
そんなものがこの世に在ってはいけないとまで俺は言わない。
俺にとってそんなものは価値がないものに過ぎないだけだ。
またその説教臭い教師はその転機は人によって、良くも悪くもあると言う。
『好機』
そんなくだらないものによって人は人生を成功へと運んで行く。
『好機逸すべからず』
担任は俺達生徒にそう言った。好機を逃してはいけない、みんな努力して夢をつかむのだ、と。
誰もが皆、人生の成功を夢に、好機というものを逃すまいと努力している。
俺はもう頭が冷えた。
こんな夢見がちな教師のお言葉などに耳も貸さなくなった。
俺はもう考えるのを止めた。そんな事に人生を賭けるものではない、と。
俺はもう人生を投げやりにした。これから先、俺は俺として、たぶん生きていかないだろう。
『ターニングポイント』
俺はそんなものがあったってなにも変わりはしない。
そうだ、何も変わらない。何があったって俺はこの負に満ちた世の中で腐りかけた人生を送るしかないのだ。
昨日だってそうだ。
そして今日だってそうなのだ。
そうだ、今日、このなにもない六日の日は俺のこのどうしようもないつまらない人生の欠片に過ぎない。
あの人だって、今そう思ってこの俺をどこかで見ているのだろう。
今日、この六日の日をそう思って、
あの人は、死んでいった。