第35話「レッドは眼鏡娘がお好き」
神社に配達です。
レッドを連れて来たらたまおちゃんの眼鏡にゾッコンなの。
む~、眼鏡フェチですが。
レッドはたまおちゃんがお気に入りなので、置いてきちゃいました。
そ、それがとんでもない事になるなんて!!
朝食はシロちゃんも加わってにぎやかです。
でも、店長さんはそんなシロちゃんを見てどんよりしてます。
いや、レッドにやられた慰謝料で公務執行妨害をチャラ……
慰謝料とは居候。
「店長さん、大丈夫です?」
「ポンちゃんには大丈夫に見える?」
「怒ってますね?」
「わかってるじゃん」
店長さんの不機嫌顔、みんなも知ってるはずです。
でも、みんな知らん顔でごはんを食べてますよ。
そんなみんなの態度に、店長さんの冷たい目はわたしに向いちゃう。
な、なんで!
「ポンちゃんが原因な事が、多いような気がするんだよな~」
「そ、そんな……レッドの輪ゴム銃は店長さんが教えたんです」
「輪ゴム銃はそうだけど、レッドが人間になったのはポンちゃんが原因……」
「う……」
こーゆー時はコレです。
「店長さんは器が小さいです」
「!!」
「漢とは、少々の事では動じないものです」
「ポンちゃん、コンちゃん、ミコちゃん、レッド、シロちゃん……少々と?」
「う……動じないものです」
「……」
「そ、それにっ!」
「それに?」
「ほら、レッド以外は女の子ばっかりです、花園です、店長さんひゅーひゅー!」
「じゃ、俺、コンちゃんと仲良くしちゃおうかな~」
「なんでわたしじゃないんですかーっ!」
店長さん笑ってます。
機嫌が戻ってくれてよかったけど、今のところはわたしを指名するべきです。
いっつもわたしの事、ちゃかしてばっかりなんだからモウ!
ミコちゃんとレッドがどら焼きに模様をいれています。
神社に持って行くどら焼きでナマズの焼印がはいっているの。
「はい、完成、ポンちゃん配達に行ってきて」
「はいは~い」
わたしがどら焼きを受け取って行こうとしたら、レッドがしっぽをつかみます。
「レッド、しっぽをつかむのはやめて~」
「ぼくもいく~」
わたし、ミコちゃんを見たら頷いています。
ちょっと考えてから、
「遠いから、最後まで歩ける?」
「おとこをあげます」
そんなわけで、レッドと一緒に配達。
レッドが階段を上がるのは、なんだか登山みたいな雰囲気だったから、途中からおんぶしてあげました。
「たまおちゃ~ん、どら焼き持ってきたよ~」
「はいは~い」
社務所で声をかけると、たまおちゃんが出てきました。
たまおちゃんが現れた瞬間、わたしの肩をレッドがギュってします。
「ちょ、レッド、痛いですよ~」
「は、は、はわわ……」
「はわわ?」
「きれーなおねーさん!」
「はぁ?」
すごい興奮しているみたいだから、レッドをたまおちゃんにパス。
レッド、コンちゃんが好きだって思っていたけど、たまおちゃんも好みなんでしょうか?
「レッド、レッド、たまおちゃんのどこがいいの?」
わたしの意見としては、コンちゃん・ミコちゃんは確かに美人さん。
たまおちゃんはかわいいほうに分類しときましょう。
「めめめめがねなところ!」
あー、そこですか、眼鏡フェチなんですね、お子様のくせに。
「この子は?」
たまおちゃん、抱き着いてくるレッドに微笑んでいたけど、しっぽを見て真っ青。
「こここコンお姉さまの子供とか!」
「レッドはこの間、交番に捨てられていたの」
「そ、そう、よかった」
「コンちゃんよりも、ミコちゃんと仲良しだよ」
「そ、そう……ミコお姉さまと……」
「うん、コンちゃんはレッドに素っ気ないけど、ミコちゃんは一緒にどら焼き作ってたくらいだもん」
「そうなんだ……」
「ミコちゃん、子供が欲しいって言ってたしね」
「ミコお姉さまは、この子と一緒にこのどら焼きを作っていた……のですね?」
「うん、そうだよ」
「なんで、配達はポンちゃんなんですか?」
「あ、ミコちゃんは学校と老人ホームに配達してると思うよ、コンちゃんは面倒くさがり屋さんだから配達なんてめったに……」
「なんでこっちに配達してくれないの……」
うわ、なんだかダークなオーラを背負ってますよ。
わたし、早く帰りたいな~
レッドはたまおちゃんに抱き着いて離れそうもありません。
でも、早く退避しましょう。嫌な予感しまくりです。
「じゃ、レッド、帰ろう~」
「いや、もうちょっといる」
「わがまま言うと漢がさがりますよ」
「えーゆーいろをこのむ」
余計な事知ってますね、それはわたしが教えてないからコンちゃんから聞きましたね。
って、たまおちゃんがにやりとしています。
「じゃ、この子……レッドは私が後で連れて行きますから」
「あ、そう……交番まででいいよ」
「え? 交番? なんで?」
「交番のシロちゃん、うちで居候になったから、お仕事(?)終ったら夜はパン屋さんに来るから」
「ちょ……なんですかそれ!」
「うん、シロちゃんはうちの居候……」
「ど、どーしてそんな事に! 私もお姉さまと一緒がいいのに!」
「なに言ってるんですかモウ」
ミコちゃんムッとした顔してます。
ああ、早く帰りたいなぁ。
「あ、じゃ、ちょっと待って、明日は観光バスが来るから、注文を書きます」
「あ、はいは~い」
わたしが待っていると、たまおちゃんサラサラ注文を書いて封筒に入れて持ってきました。
「はい、ミコお姉さまによろしくね」
「は~い、じゃ、レッドは交番のシロちゃんにね」
「うん、ヌシを捕まえた犬のお巡りさん」
「そうそう、警察の犬」
わたし、注文の封筒を持ってパン屋さんに戻ったんです。
わたし、注文の封筒を持ってパン屋さんに戻ったんです。
「あ、ミコちゃんもう帰ってたの」
「ええ、別に配達だけだったし」
「これ、たまおちゃんが明日の注文って、観光バスが来るって言ってた」
「はいはい」
って、ミコちゃん封筒の中を見て、一瞬ピクッてきました。
「どうしました?」
「ポンちゃん、本当に注文って言ってたの?」
「うん、言ってたけど……」
「レッドちゃんはどうしたの?」
「たまおちゃんがお気に入りで……眼鏡フェチで……置いてきちゃったよ」
「ほら」
ミコちゃんが注文書を見せてくれます。
あれ、これは注文書じゃないですね。
なになに?
「レッドは預かった、返してほしくばミコお姉さま一人で神社まで来るように……ですか」
「あのダメ巫女ちゃんは、なんて事を!」
「レッド、たまおちゃんお気に入りだったから、あっちの子になったらいいのに」
途端にミコちゃんチョップ炸裂。
わたし★一つのダメージ。
「ちょ、なんでわたしを叩くんですかっ!」
「今度そんな事を言ったら、ポンちゃん追い出しますよ!」
「み、ミコちゃんこわい……でもでも」
「でもでも?」
「ミコちゃんもいけないんだよ、神事を教える約束じゃなかったっけ」
「だ、だってあの娘、なんだか私を見る目が変」
「あ、それ、わかるかも、『ミコお姉さま』だし、お姉さまってなにかな」
わたし、改めて手紙を見てから、
「ミコちゃん取り返しに行けばいいのに」
「その……つもりだったけど……」
「そのつもりだったけど?」
「コンちゃんに頼みましょう」
「なんでミコちゃんが行かないの?」
「だってほら、私、リミッター我慢できるかわからないから」
「……」
「たまおちゃん、殺しちゃうかも」
「それならコンちゃんの方が、まだマシかも」
「これ、ボンクラ巫女、おるかの」
そんなわけでコンちゃんと来ました。
あの手紙には「ミコお姉さま一人で」って書いてあったけど、コンちゃんの時点で約束破りだから、わたしが着いて来ても、この際どーでもいいでしょう。
「あら、コンお姉さま、どうして?」
レッドを抱っこしてたまおちゃん登場。
ミコちゃんじゃなくてコンちゃんが来たのに驚いたみたいだけど、コンちゃんならコンちゃんでもよさそうな感じです。
たまおちゃん、わたしをじっと見て、
「私、手紙にミコお姉さまって書いたつもりだったけど」
「あ、わたしも見たけど、ミコちゃんすごい怒ってたよ」
「え……」
「レッド誘拐したら、そりゃミコちゃん怒るよ」
「なら、なんでミコお姉さま本人が救出に来ないんです? 来ると思ったのに!」
「あー、ミコちゃん怒りで我を忘れそうだから……代打コンちゃん」
「そ、そんなに怒ってたんです……」
「ま、まぁ……」
わたし達の会話を傍で聞いてたコンちゃんは、うんざりした顔で、
「おぬしのせいで、わらわがわざわざ出向く事になったであろうが!」
「す、すみません……」
「おぬし、一体なにがしたいのじゃ」
「ミコお姉さまが全然かまってくれないな~とか……」
「……」
「一緒にいたいな~とか……」
「なんじゃ、そんな事か、テキトー言って居候決めればよいのじゃ」
「え!」
「警察の犬はレッドにやられたから居候じゃ」
「この子に……」
「たまおもレッドにやられればよいのじゃ」
「この子に……」
沈黙……たまおちゃんが考えながらコンちゃんに、
「あの、コンお姉さま……」
「なんじゃ」
「私、この間ポンちゃんにやられたんですけど……」
え……そこでわたしが出るんですか!
それにあれは正当防衛のはずですよ!
「それでよかろう、ほれ、着替えを持って家に帰るぞ」
「こ、コンちゃんなに勝手な事言ってるんですかーっ!」
「なんじゃポン、大きな声を出しおって!」
「たまおちゃん居候になっちゃうんですよー!」
「よいではないか、にぎやかになって」
「そ、そんな……またわたしのせいになりそうなのにっ!」
「そうじゃろう……それにたまおが来ればミコも面白い事になりそうじゃしな」
あ、コンちゃんニヤニヤしながら行っちゃいます。
今回一番得してるのはコンちゃんかも。
こ、この女狐っ!!
「ほーれ、よく見るのじゃ」
「なになに?」
「人魚姫の格好はこうでなくてはのう」
「……」
絵本の人魚姫は水着…