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第33話「レッドのプロポーズ」

「ぼく、コン姉とけっこんした~い」

「コンちゃん女狐ですよ、いいんですか?」

 わたしはコンちゃん結婚相手にどうかな~って思うけど…

 でも、レッドとコンちゃんがひっつけば店長さんはわたしのもの!

 ふふ、わたしはエロポンなんです、もう、ばっちりな入れ知恵伝授です。


「うわ!」

 朝の祠掃除の後、わたしだけじゃなくて店長さんも声をあげました。

 声を上げた後はもう、沈黙しかないんです。

 どうしてかって……コンちゃんですよコンちゃん。

「なんじゃ、二人とも、わらわを見て」

「……」

 いや、本当、最初見た時からなんだか変って思ってたんです。

 コンちゃんは花壇に水やりしているだけだったんだけど……

「こりゃ、二人とも、なにが言いたいのじゃ」

 いつも通りに水やりなんだけど、その格好が問題なんですよ。

 そう、コンちゃんはこの作品じゃセクシー担当なんだから、スケスケ寝巻きでいるところなんです。

 それが今日は普通のパジャマ姿で水やり。

 最初ちらっと見た時、変だな~って思ったんだけど、気付くのに時間がかかりました。

 でも、普通パジャマに気付いたら、なんだかすごい異次元みたいな「なにか」感じまくり。

 わ、わたしようやく話し掛ける事ができました。

「こここコンちゃん、どーしたの!」

「なんじゃ、ポン、なにをびっくりしておるのじゃ」

「い、いや……その格好」

「ふむ、別に普通に寝巻き、パジャマではないか」

「い、いや……スケスケじゃないよ」

 わたし、ついついコンちゃんのパジャマを触ったり、しっぽも触ります。

「こりゃ、しっぽを触るでない」

「い、いや、確かにコンちゃんです」

「なにを寝ぼけておるのじゃ」

 わたし、今の言葉を受けて店長さんに自分のしっぽを差し出します。

「店長さん店長さん、わたしのしっぽ、ギュッてして!」

「う、うん……」

 店長さん、わたしのしっぽをモフモフした後でギュッてします。

「痛いです、夢なんかじゃないです」

 わたし、コンちゃんの腕をつかんで揺すりながら、

「コンちゃんなんで普通の格好なんですかっ!」

「あー、その事か、レッドがおるからじゃ」

「レッド?」

 仔キツネ・レッドはまだ寝ているはずです。

 わたしが首を傾げていると、

「あの格好では子供の教育に悪いであろう」

「うわ、コンちゃんすごい普通の意見です」

「あの格好をしておると、ミコが怒るでのう」

「な、なるほど……」

 最後のはわたしと店長さん一緒です。

 そうそう、山のパン屋さんに、あたらしい家族のレッド。

 赤毛のフサフサなしっぽがトレードマークな仔キツネの男の子です。


「ポン姉~」

 レッドが呼んでいます。

 なんとわたしが教育係りなんですよ。

 レッドはキツネなんだからコンちゃんが面倒を見ればいいと思うんだけど……

「面倒じゃ」

 ……なんだって。

 そうそう、ミコちゃん子供が欲しいって、絶妙な入れ知恵までしていたのに……

「私もいろいろ忙しいから」

 ……なんだって。

 一瞬お父さん役の店長さんがって思った事もあったけど……

「ま、ポンちゃんが拾ってきたんだしね」

 ……てな感じでしょうか。

 まぁ、せっかく教育係りになったんで、まず最初に教えたのが「ポン姉」「コン姉」「ミコ姉」「てんちょー」でした。

 わたしの事「おかあさん」って呼んでて、店長さんの事「おとうさん」って呼んでたのは良かったんですが、店長さんが嫌がっていたので、そうなったんです。

 まぁ、あとはお店の手伝いとか、ちょっとずつ教えていくとしましょう。

 ってか、もう、挨拶とかは教えたんですよ。

 レッドは元ペットなだけあって、なかなか筋がいいみたい。

 レジに立って……踏み台すごいんだけど……お客さんに「ありがとうございました」って言うだけなんだけど、お客さん達みんなすごいニコニコしてます。

 女のお客さんが多いからかな?

 レッドはなかなかかわいいから、ポイント高いみたいです。

 もしかしたら、レッド目当てのリピーターが増えるかもしれません。

「ふふふ……レッド、なかなか筋がいいですよ」

「ほめられた~」

「そうです、働かざる者食うべからず……一緒に頑張りましょう」

 って、わたし言いながら、その働いていないのに食べているコンちゃんを見ます。

 テーブル席でぼんやりと外を眺めています。

 お稲荷さまだから、一応あれでも「働いているうち」なんでしょう。

 傍目には「ボーっ」としているだけなんですけどね。

「ねぇねぇ、ポン姉~」

「なになに、レッド?」

「ぼく、コン姉とけっこんした~い」

 おお、いきなりおませな発言です。

「コンちゃん女狐ですよ、いいんですか?」

「コン姉きれいだもん、すきすき~」

「ふーん、そうなんだ、で?」

「どうしたら、いいかなぁ~」

「プロポーズですね」

「ですね~」

 わたし、考えます。

 とりあえず……

「お花とかどうかな?」

「おはな?」

「そう、花を持って行って、結婚してくださいって言えば?」

「なるほど~」

 レッド、お店を見渡してからわたしを見ます。

 お客さんいないから頷くと、すぐさま踏み台を飛び降りてお店を出て行っちゃいました。

 店先の、コンちゃんの花壇に咲いている花を一つ摘んで来ます。

 まさかコンちゃんが怒るなんて事はないと思うけど……どうでしょうね。

 レッド、その花を持ってテーブルのコンちゃんの所に行っちゃいました。

「ポンちゃんどうしたの?」

「うわ、ミコちゃん、いつからいたの!」

「今だけど……レッドちゃんはなにをしてるの?」

「レッドはコンちゃんと結婚したいんだって~」

「そうなの……それでお花持って行ったの」

「今、プロポーズの最中ですね」

 見てるとなかなか笑えます。

 レッドは小さいから、テーブルの高さもないんです。

 そんなレッドが花を持った手を必死になって伸ばしていますよ。

 当然つま先立ちなんですね。

 あ、コンちゃん気付きました。

 花を受け取っていますよ。

 花壇の花だから怒るかな……って思ったけど、そんな事はなかったです。

 ぼんやりと受け取った花を見てから、なにかしゃべっています。

 レッドはコクコクと何度も頷いて、トテトテと戻ってきました。

「レッド、どーでしたか?」

「ポン姉、ミコ姉……まだダメっていわれた~」

「えー、振られたんですか?」

「おこさまだからだって~」

「なるほど~、大人になったらOK貰えるかもしれませんよ」

 ミコちゃんがレッドの頭を撫でながら、

「レッドちゃん、他にもなにか言われてたでしょ?」

「うん……つよいおとこになったら……っていわれた~」

 わたしとミコちゃん、ついついコンちゃんの方を見ちゃいます。

 それからわたし、ミコちゃんに目で、

『コンちゃんも、なんだか大人な態度ですね』

『だったら、もうちょっと働いてくれるといいんだけどね』

 そうですね、そうしたらレッドの教育にもよさそうですね~


 夕ごはんを食べて、お風呂にはいって、お休みの時間です。

「ごほん、よんで~」

 レッドは「人魚姫」を持って来ました。

 わたしは一緒のお布団に入ってから読もうとすると、

「ねー、ポン姉~」

「なに、レッド」

「ぼく、もうつよくなった? おおきくなった?」

「すぐには大きくなりませんよ~」

「がーん、ごはんもたくさんたべたのに~」

「ふふふ……」

「おとなのおとことは、なんですか~」

 ふむ、大人の男ですか、それはわたし、よく知ってますよ。

 なんたって不法投棄の本だけはたくさん読んでいるんですから。

 伊達にエロポンって呼ばれているわけではないのです。

 うーん、この間ミコちゃんも絶妙な作戦をレッドに伝授していました。

 あの店長さんに対しての「おとうさん」の破壊力はすごかったですね。

 わたしも教育係りとして、なにかこう、すごい成果を上げたいです。

 それに……

 もしもレッドとコンちゃんが結婚したら……

 強敵が一人減るって事に……

「そうですね……今からコンちゃんと一緒に寝るといいんですよ」

「え~、てれるな~」

「照れてる場合ですか!」

「それからどーするの?」

「そうですね、お布団に一緒に入る時に言うんです……今夜は寝かさないぜ……って」

「わかった~」

 レッド、わたしから「人魚姫」を奪ってトテトテと行っちゃいました。

 微かに声が聞こえてきますよ。

『コン姉、いっしょに、ねよ~』

『むー、ポンはどうしたのじゃ』

『こんやはねかさないぜ~』

 は、早すぎ!

 そ、そこは言うところじゃないです。

 ああ、なんだかみんながコケている音が聞こえますよ。

 大人二人分の足音が急速接近。

 部屋の入り口で、店長さんとミコちゃんがわたしを見ています。

 目がこわい……

 でも、二人がわたしになにか言う前に、コンちゃんがレッドを抱いて来ました。

「ほれ、わらわが寝かしつけるゆえ、代わるのじゃ」

 コンちゃん店長さん達を押し退けて入ってきます。

 そしてわたしと交代。

「こんやはねかさないぜ~」

 レッド、まだ言ってます、やめてほしいです。

 わたし、お布団出ます。

 そしてすぐに店長さん達に捕まっちゃいました。

「あ、あの、店長さん、まさかダンボールじゃないですよね?」

 それには店長さんじゃなくてミコちゃんが、

「今日は私がお説教します、お外でなんか寝かせません」

 わたしの腕をつかんでいるミコちゃん、なんかすげー力がこもってます。

 今だけ、お外で寝る方がいいな~なんて思っちゃいました。


 わたしがお説教を受けていると、十分もしないでコンちゃんが現れました。

「コンちゃん、どーしたんですっ!」

「ああ、ポン、まだ説教を受けておるのか……」

「いや、寝かしつけてるはずじゃ?」

「あやつ、すぐに寝てしもうた、まだまだお子さまじゃ」


 レジを守っていると、レッドなんだかソワソワしっぱなしです。

「ポン姉、ちょっといい~?」

「うん? なに? え?」

 レッド、お客さんがいないのを確かめて出て行っちゃいました。

 なにか手に持っていましたよ、紙みたいでしたね。

 全然帰って来ないから、不安になります。

「ねー、コンちゃん、レッド出て行って帰って来ないんだけど、どうしよう」

「うむ、よいのじゃ、わらわが大人の男のテストをしておるのじゃ」

「大人の男のテスト?」

「そうじゃ、誰かさんみたいに『夜は寝かさないぜ』みたいな薄っぺらいモノではないのじゃ」

 って、お店のドアがカラカラ鳴りました。

 レッド帰還。

 でっかいヒマワリ持ってます。

 引き抜いてきたんですね。

 根が付いています。

 わたしより大きいです、レッドの何倍もあるの。

「コン姉~、とってきた~」

「うむ、大きいのを取ってきたのう」

「コン姉~、けっこんして~」

「まずはデートからじゃ、デート」

 コンちゃん、レッドの手を引いてお散歩に行きました。

 いつのまにか、わたしの背後にミコちゃんと店長さんがいます。

「ポンちゃんが一番教育係りに向いていないような気がしてきた」

 うう、わたしも今、そー思っていました。


 お店の花壇にヒマワリが一本増えました。


「レッド、どーしたんですっ!」

「や、やられちゃった」

「さっきはシロちゃんと仲良しだったのに!」

「なかよしだよ」

「やられてるじゃないですか」


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