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第30話「ザ・西部劇パート2」

 17話で西部の決闘になっちゃったコンちゃんとシロちゃん。

 二人は銃vs銃でした。

 そして今回はわたしが決闘する事になっちゃいました。

 飛び道具のシロちゃんに、わたしの得物は打ち出の小槌。

 店長さんと一緒にいるために、パン屋の店員の座は渡せませんっ!


 店長さん、わたしの武器「打ち出の小槌」を見ながら、

「もう、これ、振り回したらダメだよ」

「はーい」

「っても、これ、そんなにすごい武器って訳でもないんだけどな~」

 店長さんブツクサ言いながら、打ち出の小槌でわたしの頭を軽く叩きます。

 さっき振り回したらダメって言ってなかったっけ。

 でも、店長さん力加減しているから全然痛くないです。

 店長さん改めて打ち出の小槌を見て、

「これってさ、縁日なんかで売ってるようなヤツだよ、紙で出来てる」

「軽いと思ってたんですよ~」

「でも、コンちゃん叩いた時は本気だったんだよね?」

「はい……」

 あの時は★三つのダメージを与えました。

 わたし、打ち出の小槌を手にして、

「たまおちゃん正当防衛の時も使ったんですよ」

「こっちが壊れない方が不思議だな~」

 カウベルが鳴って、シロちゃんが入ってきました。

「見回りであります」

「見回りなんだ、じゃ、パンはいらないね」

「いじわるはナシであります」

 って、シロちゃんなんだか疲れているみたい。

 声に元気がなくて、トボトボ歩いてコンちゃんのテーブルに着いちゃいました。

 わたし、パンを適当に見繕って持っていきます。

「どうしたの、元気ない」

「はい、実は……」

「?」

「また、交番にダンボールが……拾ってくださいって書いてありました」

「あう……今度の動物はなに?」

「それが箱だけで……もうどこかに行っててくれればよいのでありますが」

「犬のお巡りさんなんだから、身柄を保護するのがお仕事では?」

「捨てられた動物の保護は保健所の仕事であります」

「困っている人を助けるのは警察の仕事では?」

「動物であります」

「タマちゃんみたいに、人になるかも」

「む~!」

 なんだかシロちゃんが悩んでいるの、初めて見るような気がします。

 きっと黒猫タマちゃんの事を思い出しているはずです。

 あの時、シロちゃん犬だったけど、すごく困っているのわたしも感じたもん。

 って、シロちゃんわたしをじっと見つめています。

「そんなに保護保護言うのであれば、ポンちゃんが警察やればいいであります」

「え!」

「大体、動物が人になるのはポンちゃんのせいだと店長さんは言っているであります」

 ま、まぁ、そう言われるとそうなんですけどね。

「では、今日から交代するであります」

「ちょ、ちょっと、なに勝手な事言ってるんですかっ!」

「本官、今は警察の犬をやっておりますが、ここならパン屋の犬でもいいであります」

「ダメー」

 コンちゃんがなんとなく、

「お、なんだか願い事発表会のようじゃ、わらわはいなり寿しが食べれればよいかの」

 神さまが誰にお願いするんですかっ!

 ミコちゃんがお茶を持って現れて、

「私は子供が欲しいわね」

 しれっとおそろしい事を言って、すぐさま退場しました。

 コンちゃんが改めて、

「うむ、警察の犬の交代を許す」

「ちょ、コンちゃんどっちの味方ですかっ!」

「ポンがいなくなれば、ここではわらわが一番じゃしなぁ」

「ひ、ひどい……ま、まさかこの間の事を根に持ってるんじゃ」

「どうせわらわは嫌われ者じゃ、クスン」

 あ、また出ました「クスン」です。

 わたしから顔を背けていますが、ちらっと横顔見えます、笑ってます。

 シロちゃんが立ち上がって、

「では、交代でよいでありますね」

「ぜ、ぜったい嫌、ぜったいダメ」

 って、コンちゃんが指を鳴らしたら、わたしがミニスカポリスでシロちゃんメイド服になります。

「交代完了であります」

「ちょ、ちょっとー!」

 もう、わたし、コンちゃんとシロちゃん揺すりまくり。

 でもコンちゃんはニヤニヤしているだけ。

 シロちゃんは怒った顔して、

「営業妨害であります」

「む……言うね!」

「もう本官はここの店員であります」

「じゃ、わたし、パンを買いに来たお客さんになる」

 もう、子供のケンカじみてきましたよ。

「警察のタヌキに売るようなパンはないであります」

「む……公務執行妨害だーっ!」

 わたし、腰に手をやったけど、警官に付き物の拳銃がないです。

 それどころかシロちゃんがいつもの拳銃構えてます。

「ちょ、なんで店員になったシロちゃんが持ってるの~」

「これは本官がコンちゃんから貰ったものでありますから」

「て、店員さんが持っていたら、銃刀法違反でタイホです」

 沈黙。

 シロちゃんメイド姿で銃を構えたまま、動きが止まりました。

 ふふん、不法投棄の漫画雑誌である程度そーゆーのは知ってるんです。

 でも……

「では、本官は今から『表はパン屋店員』『裏はヒットマン』って設定でいいです」

「は……」

「お店に営業妨害に現れた悪い警官を倒すって筋書きでいいであります」

「ちょ……それって……」

「死人に口なしであります」

「もう、やる気満々ですね」

「タイホだーっ!」

「タイホだ」はヒットマンの台詞でしょうか?

 シロちゃん容赦なく連射。

 わたし、ペイント弾を横っ飛びで回避。

「ちょ、タイホはわたしの台詞です」

「すまないであります、ついついいつもの調子で……タイホだーっ!」

 また撃って来ました。

 六発撃ったら弾切れのはず。

 撃ってくる数しっかり数えているんです。

 一・二・三・四・五・六・GO!

 わたしが立ち上がったら、シロちゃん弾を詰め終わったところでした。

 は、早い……笑ってるし、ピンチかも。

「タイホー!」

 どんどん飛んで来るペイント弾。

 このままでは血まみれです、ペイント弾だけど。

 それに、わたし、警官になる気なんてないんです。

 店長さんと結婚するのが夢なんですから。

 そんなわたしの目に打ち出の小槌。

 アレしかないです。

 わたしが打ち出の小槌をゲットすると店長さんが、

「ポンちゃんっ!」

 さっき「振り回しちゃダメだよ」って言ってました。

 きっと店長さん、それが言いたいんです。

 店長さんの静止の目。

 わたし、叫びます。

「正当防衛だもんっ!」

「ポンちゃん……でも、それで勝てるの?」

「やってみないと……」

 わたし、打ち出の小槌を振り上げます。

 そーです、よく考えたらリーチが全然違いますよ。

 あっちは飛び道具で、こっちは接近戦専用なの。

 こっちの攻撃が届く前に……って、手がすべっちゃいました。

 わたしの手を離れて飛んで行く打ち出の小槌。

「むっ!」

 シロちゃん連射して打ち出の小槌を撃ち落とそうとするけど、打ち出の小槌ビクともしません。

 そのままシロちゃんにヒットしちゃいました。

 ★二つのダメージ。

 ダウンするシロちゃん。

 頭の上でヒヨコが踊ってます。

 目はナルトみたいにぐるぐる巻き。

「わ、わたし、やっつけましたよ!」

 拳を突き上げてガッツポーズ。

 変身も解けて、元通りのメイド服になりました。

 でも、みんなシロちゃんの回りに集まってます。

「ま、まさか、シロちゃん死なないよね?」

「いいから奥にお布団敷いてっ!」

 はわわ、シロちゃんが死にませんように。


「店長さんは、厳しいでありますな」

 今日のダンボールは、シロちゃんと一緒なの。

「本官は負傷したので、お布団で休みたかったであります」

「それはシロちゃんが悪いんだよ」

「?」

「お店で決闘したら、こうなってもしかたないよ~」

「そうでありますか……」

「もう、シロちゃんがいけないんだから」

 わたし膨れて、

「わたしまで巻き添え」

「本官が思うに、ポンちゃんが一番悪いであります」

「え……なんで!」

「大体先輩株なのに、後輩に譲らない辺りが器が小さいであります」

「そ、そんな勝手な!」

「交番で一人はさみしいであります」

 シロちゃん、体操座りのまま、急速潜航、あっという間に眠っちゃいました。

 わたしに肩、ひっつけてスヤスヤです。

「一人はさみしいんだ……」

 今夜は一緒にいてあげるとしましょう。

 どうです、良い先輩でしょ。


 赤いしっぽの男の子。

 右手にアンパン。

 左手にわたしのしっぽ。

「お母さんの所に帰ってくださいっ!」

「きょうからタヌキさんがおかあさん」


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