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第29話「そろそろはっきりさせましょう」

 わたし、へまをやらかすとお外でお休みです。

 一部意見で「いかがなものか?」とのご意見があります。

 む~、作者はそんなふうに育ったんだからしょうがないんですよ。

 今回もわたしとコンちゃんお外でお休みなの。

 でもでも、お外でお休みも、案外いいんですよ。


 さて、ここのところ、お外でお休み(ダンボールでお休み)がありません。

 わたしも三クール目って事で成長したんですよ。

 こう、店長さんに怒られなくなったから、そろそろ好感度を上げる作業に入る頃でしょうか。

「ねぇねぇ、店長さん」

 朝の祠掃除、店長さんも一緒です。

「なに、ポンちゃん」

 まず、店長さんの腕に腕、絡めちゃいましょう。

「うわ、なに、ポンちゃん」

「店長さん、店長さんはどんな女の子が好きです?」

「えー!」

「わたしの事、好きですか」

「えー!」

「ねー!」

「えー!」

 店長さん、答えませんね。

 でも、今日は逃げられませんよ。

 そのために腕を絡めてるんですから。

「いつもいつも肩すかし、今日ははっきりしてもらいます!」

「えー!」

「さぁ、わたしが好きですか!」

 もう、キス待ちです。

 でも、全然キスしませんね。

「なんでキスしないんですかっ!」

「い、いや、ほら……」

 店長さんが指差します。

 花壇の所でコンちゃんが眠そうな顔して水やりしているのが見えました。

「コンちゃんがどうかしたんですか?」

「いや、ここでポンちゃんにキスしたら、コンちゃん荒れまくるから」

「なるほど……って!」

「て?」

「それとわたしにキスは関係ないでしょーっ!」

「え! え?」

「わたしが好きならキスしたらいいのにー!」

 店長さんは引き離すのに腕がピクピク。

 わたしは引き寄せるのに腕がプルプル。

「店長さん、まさかわたしよりもコンちゃんが好きとか!」

「今はコンちゃんの方がいいかもっ!」

「なんて事を!」

「強引なタヌキは嫌い」

「む……も、もしかしたらわたしよりも、ミコちゃんが好きとか!」

「今はミコちゃんがいいかもっ!」

「いつになったらわたしにキスしてくれるんですかっ!」

「ポンちゃんタヌキだしな~」

「しょうがないでしょう! わたしタヌキに生まれたんだし!」

 もう、店長さんを揺すりまくりです。

「こう、ここまで人間みたいになったのに、店長さんは責任を取るべきなんです」

「なんでそーなるかなぁ」

 すると、コンちゃんがスケスケ寝巻き姿でやって来ました。

 朝早いからいいけど、よくこの格好で歩き回るものです。

 ま、まぁ……このスタイルなら人前でもへっちゃらかもしれません。

 ちっ!

「どうしたのじゃ、二人とも」

「コンちゃんには関係な~い!」

「さっきわらわの名前を呼んでおらんかったかの」

 コンちゃんあくびまじりで言います。

 あ、店長さんコンちゃんのスケスケ寝巻きに赤くなってます。

 わたしが体を密着させても無反応なのに、どーしてっ!

「これ、ポン、店長の首を絞めるでない、顔が赤くなっておる」

 わたし、店長さんを放して、

「コンちゃん、勝負しましょう、勝負!」

「え……ポン、朝からなにを言っておるのじゃ」

「勝負ですよ勝負! じゃんけんなんかじゃない、生死を賭けた決闘ですっ!」

「はぁ……なんでわらわがおぬしとケンカするのじゃ」

「わたしが店長さんと結婚できないのは、コンちゃんがいるからですっ!」

「……」

「コンちゃんがいなかったら、もう、今ごろは野球チームができるくらい子沢山のはずですっ!」

「む……なにがなんだかよくわからんが、おぬしはわらわが邪魔だと言うのじゃな」

「そうです、コンちゃんなんかいなくなっちゃえ!」

 あ、勢いで言っちゃったけど、コンちゃん髪がうねりだしました。

 目が赤く光ってますよ。

 よ、余計な挑発しないで、不意を突いて亡き者にしてしまった方がよかったような気がします。

「ふむ、では、おぬしの言う通り、決闘してやろう」

「!!」

「わらわも前々から、おぬしのわらわに対する態度にムッとしておったのじゃ」

 コンちゃん指を鳴らして変身しました。

 武道家? 空手家? 柔道家? そんな格好です。

「店長、おぬしの立会いで決闘じゃ」

 店長さん、祠の影にかくれてブンブン頷いています。

「ポン、おぬしにはハンデをやろう、得物を使う事を許す」

「え……ハンデ? 得物?」

「そうじゃ、神であるわらわがタヌキのおぬしに負けるはずなかろう、せめてものハンデじゃ」

 言いたい放題です。

 でも、くやしいけど事実。

 わたし、ダッシュでお店に戻って、前回ゲットした「打ち出の小槌」持ってきます。

「コンちゃん覚悟っ!」

「ふふん、タヌキごときに負けるものか!」

「コンちゃんはわたしに負けた事があるの、すっかり忘れてますっ!」

「!!」

「女子プロレスの時(神楽の時)、あれはわたしの勝ち!」

「な、なんじゃとーっ!」

 ああ、さらに髪のうねりがすごくなったような気がします。

 でも、これはもしかしたら、チャンスかもしれません。

 コンちゃんから冷静さを奪う作戦はありではないでしょうか。

「コンちゃんなんか、術がなければただのぐーたらキツネ」

 わたしの言葉に、駐車場の砂利が一瞬宙に浮かびました。

 でも、すぐに地面に戻ります。

 コンちゃんを見ると、なんだかダークなオーラを背負ってますよ。

「よかろう、ポン、おぬしがそう言うのであらば、わらわは術を封じて戦ってやると……」

 待ってました、そのお言葉。

 あの物が飛んで来る術がなければ、あっという間に接近できますよ。

「たーっ!」

「うわ、ポン、卑怯っ!」

 言い終わる前にやっつけちゃうのがいいんです。

 コンちゃん相手にわたしが手加減なんか必要なし。

 打ち出の小槌全力で振り切っちゃいます。

 びっくりしたコンちゃんの顔。

 打ち出の小槌、ヒットです。

 ★三つのダメージ。

 コンちゃんダウンっ!

「やったー、わたしの勝ちっ!」

 わたし、ぴょんぴょん大はしゃぎ。

 でも……コンちゃん倒れたまま全然動きません。

 いつもだったら、さらにオーラが増して立ち上がりそうなところです。

「コンちゃん……どうしたの?」

「うう……おぬしの勝ちじゃ、ポン」

「コ、コンちゃん、ここは立ち上がって髪をうねらせるところですよ」

「さっきの一撃、効いたぞ……」

 ああ、なんだかコンちゃん、声も絶え絶え、力もないです。

 わたしの一撃、すごく効いちゃったみたい。

 コンちゃんぐったりして、今にも死にそう。

「コンちゃん、コンちゃんっ!」

 あ、頭から血がドクドク出てます。

 こ、これは本当に大事です、ぜったい。

「コンちゃん! コンちゃん!」

「うう……ポン、おぬしと一緒で、楽しかったぞ……」

「こ、コンちゃん、本当に死んじゃうの!」

 ああ、わたしの手にも、血が垂れてきました。

「さ……最後に店長を……」

 わたし、店長さんにバトンタッチ。

 店長さんコンちゃんを抱きかかえて見つめています。

「て、店長……わらわが死んでも、祠を……頼む……」

 コンちゃんの言葉に、店長さん頷くだけです。

「さ、最後に……キスして……くれぬか……」

 コンちゃん死んじゃう前に、早くキスしてあげて!

 店長さんの手も血で濡れてます。

「は、早く……クスン」

 ああ、コンちゃんの声、もう蚊の鳴くような声です。

 って、店長さん、いきなり手を離しました。

 コンちゃんの体は自由落下して、地面にゴンなんて音させましたよ。

 大きな★一つのダメージです。

「ちょ! 店長さん、なにやってんですかーっ!」

「ポンちゃん、これ、前にもあったよ、祠が溶岩に沈んだ時」

「そ、それはそーだけど、今日は血が!」

 って、言い合っている間、コンちゃんすごいのたうち回ってます。

「うおっ! 痛いっ! 死ぬっ!」

 叫びながら、あっちにゴロゴロこっちにゴロゴロ。

 なんだかさっきまでの死にそうだったの、どっかに行っちゃいましたよ。

 全然元気そうです。

「店長、なにをするのじゃ、頭が割れるであろうっ!」

 コンちゃんすごい剣幕でにらんでから、固まっちゃいました。

 店長さんがブスっとした顔で、

「コンちゃん、本当に女狐なんだからもう」

「て、店長、なんでわらわのウソを見抜いたのじゃっ!」

「『クスン』の辺りで……ウソ泣きってわかった」

「くっ!」

 わたし、自分の手に付いた血を見ながら、

「でも、血がすごい出てますよ」

 わたしの言葉に店長さん、じっと血を見てからペロって舐めました。

 渋い顔のまま、

「ほら、ペイント弾の時のアレだよ」

 わたしも自分の手に付いた血を舐めます、甘~い。


「今回はうまくいくと思ったのにのう」

「コンちゃん、まさか最初からアレやるつもりだったとか!」

「まぁ、なんとなく、決闘の辺りから」

 結局わたしとコンちゃん、ダンボールの夜です。

「モウ、コンちゃんのせいでお外でお休みになっちゃった!」

「ふん、わらわもおぬしの本心がよーくわかった」

「う……」

「おぬしはわらわが邪魔なんじゃな……」

「あ、あの時は流れでそう言っただけで……」

「クスン」

「コンちゃんウソ泣きーっ!」

 コンちゃんヘラヘラ笑ってます。

 もう、いつもふざけてばっかりなんだから。

 でもでも、お外で一緒にお休みすると、仲直りできます。

 なんたって一緒にいないと、寒いんですよ、本当に。


「そんなに保護保護言うのであれば、ポンちゃんが警察やればいいであります」

「大体、動物が人になるのはポンちゃんのせいだと店長さんは言っているであります」

「では、今日から交代するであります」

「本官、今は警察の犬をやっておりますが、ここならパン屋の犬でもいいであります」

 わ、わたし、シロちゃんと交代しちゃうの?


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