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第37話「また浮気ですかっ」

 店長さんがお出かけから帰ってきました。

 レッドの嗅覚が、そんな店長さんから「いいにおい」。

 そ、村長さんのところに行ってるって言ってたのに!

 しれっと浮気ですか、この男は~

 ゆ、許しません、わたしというものがありながらっ!


 朝の食卓はにぎやか。

「ミコ姉、おいし~」

「こぼさないで食べるんですよ」

 レッドとミコちゃん、親子みたいですね。

「これ、たまお、しょうゆを取るのじゃ」

「はい、コンお姉さま」

 たまおちゃんは、とりあえずコンちゃんで満足しているみたいです。

「ごちそうさまでした、では、任務に向かいます」

 シロちゃん早食いです、すぐに席を立って出勤しちゃいました。

 わたし、そして店長さんが並んでごはん。

 シロちゃんやたまおちゃん、レッドが来るまではしあわせでした。

 でも、一人一人増える度に、なんだか隣に座るのがつらいです。

「店長さん、お味噌汁、おいしいですね」

「ポンちゃん……みんなポンちゃんが連れて来たんだよね」

「う……朝からその会話はなしです」

「この間、ポンちゃん言ってなかったっけ?」

「え?」

「ほら、漢の器とか、女の子ばっかりで花園だとか」

「う……確かに言いました」

「てんちょー!」

 あ、いい感じでレッドが割り込んでくれました。

 しばらく店長さんレッドとお話。

 わたし、ホッと胸をなでおろしですよ。

 レッドのたくあんと店長さんのメザシがトレードされて会話終了。

「で、ポンちゃん」

「あ、レッド、メザシで喜んでいますよ」

「うん、そーだね、レッド、子供、俺、独身なのに」

「う……」

「俺、なーんにもしてないのに、いきなり子持ち、しっぽもついてるし」

「て、店長さん、わたしが結婚してあげます、今夜でもいいですよ」

 あ、店長さん黙っちゃいました。

 わたしをじっと見てます。

 もしかしたら、これっていい雰囲気なのでは!

 おもいがけない展開。

 ものは言ってみるもんですね。

「レッドはキツネだから、コンちゃんと結婚するのが一番かな?」

「えー!」

「ミコちゃんも、レッドが懐いているからいいかな?」

「……」

「シロちゃんも、ミニスカポリスでなかなかかわいいかも?」

「ちょ……」

「俺、人間だから、たまおちゃんが一番なのかな?」

 わたし、お箸とお茶碗置いて、店長さんの腕をつかまえます。

「わわわわたしは一番ダメっ娘ですかっ!」

「だってポンちゃんが選び放題って言ったんじゃん」

「そ、そんな事言いましたっけ?」

 って、店長さんニヤニヤ笑ってます。

 でも、すぐに真顔になって、

「今度またなにか連れて来たら、俺、誰かと結婚しよっかな~」

 ああ、そこにわたしの名前はなさそうな雰囲気ですね。

 わ、わたしだって好きで地雷を踏み……踏みまくってるわけじゃないんです。


 お昼ごはんの時間です。

 わたしも学校の配達から帰ってお腹減りました。

 神社に行ってたレッドもごはんの時は帰ってきます。

 お客さんもいないので、お店のテーブルでみんなで食べるの。

「ミコちゃん、店長さんは?」

「店長さんはお出かけ、村長さんのところ」

「そうなんですか~」

 って、コンちゃんとレッド、もう食べてます。

「店長さんを待ってなくていいかな?」

 わたし、まだ手をつけていないミコちゃんに聞いたけど、

「そうね……でも、お客さんいない間に食べてしまわないといけないし」

「……」

「店長さん、先に食べててアレコレ言う人じゃないから、いいんじゃない」

 って、ミコちゃんも食べ始めました。

 わたしもお腹空いたから、食べちゃいましょう。

 って、ジャストな感じで店長さんも帰ってきました。

「ただいま~……って、ここで食べてるんだ……お客さんいないんだね」

 店長さん力なく笑いながら席に着きます。

 ごはんを食べ始める店長さん。

 って、そんな店長さんの隣のレッドが、不思議そうな顔で店長さんを見てますよ。

 別に……店長さん普通に食べているだけです。

 ほっぺにお弁当をつけたりしてるわけでもない。

 でも、そんなレッドもまたごはん食べはじめました。

 なにかトレードして欲しかったのかな?


「ふう、おいしかった~」

 わたし、満腹でノビノビします。

 隣の店長さんも微笑みながら、

「ミコちゃんのごはんはおいしいね~」

「店長さん、ミコちゃんと結婚とか言い出したら怒りますよ」

「なんの事?」

「朝の事です、店長さんが結婚するのはわたしなんだから」

「はいはい」

 店長さん生返事しながらお茶をすすってます。

 そんな店長さんのところに、レッドがトテトテやってきました。

「てんちょー!」

「はいはい、抱っこ?」

 店長さんがレッドを抱っこします。

 うらやましいですね。

 って、レッドも店長さんにしがみついていますよ。

 わたしもいつか、恋人同士の抱擁ってやつをやりたいもんです。

「てんちょー」

「はいはい、なに、レッド」

「いいにおいがする」

 途端にわたしとコンちゃんのモード変更。

 店長さんに飛びついてクンクンします。

「て、店長さん、いい匂いがしますっ!」

「おぬし、どう説明するのじゃ!」

 わたしとコンちゃん、店長さんに詰め寄ります。

 ただならぬ雰囲気にレッドは一人脱出してミコちゃんのところに行っちゃいました。

 わたし、コンちゃんと目が合って頷きます。

 コンちゃんが指を鳴らすと、わたし達女王さまルックに変身。

 わたし、お店のドアに「きょうはおわりました」をさげます。

 コンちゃん店長さんを椅子に縛り付け。

 さて、準備もできたところでコンちゃんがまず、

「店長、気持ちの準備は出来ておるであろうな」

「そうです、店長さん、覚悟は出来ているんでしょうね」

「まったく、いつの間に浮気なんぞしておったのじゃ」

「そうです! そうです!」

 店長さん、わたし達を見て真っ青になって、

「ち、違う、なんか勘違いだー!」

 さて、勘違いだそうです。

 わたしとコンちゃん見合って頷きます。

 ふたり一緒になって店長さんをクンクン。

 わたし、店長さんにキスでもしそうなくらいに顔を近づけてにらみます。

「やっぱり女の人のニオイです、雌のニオイ、間違いなし」

「だ~か~ら~!」

「この間はタマちゃんやシロちゃん」

「そ~の~!」

「たまおちゃんのニオイでも、ミコちゃんのニオイでもないですっ!」

 店長さんがなにか言おうとしたら、コンちゃんの手が一振り。

 いつの間にかコンちゃん鞭持ってますよ。

 女王さまが鞭を振り振り。

「店長、安心せい、音は立派じゃが、痛くはないでのう」

「う、ウソだーっ!」

「わらわの鞭さばき、受けたいかの? それともしゃべるかの?」

「放せ~!」

「そーれ、本当の事をしゃべるまで、愛の鞭を受けるのじゃ~」

 ああ、コンちゃん楽しそうに鞭を振ります。

 店長さんに当っていい音出してますよ。

 でも、店長さん悲鳴を上げるだけで、なかなか口を割りません。

 浮気は本当に勘違いなんでしょうか?

 あ、ミコちゃんが見てますよ。

 手招きしてるから行きましょう。

 店長さんの取り調べというか尋問というか拷問はコンちゃんにまかせてね。

「なんです、ミコちゃん?」

「早めに終らせてね、教育上によくないし」

「ミコちゃん、レッドと一緒に神社に散歩に行ってきていいよ」

「え……」

「もう、閉店の札出しちゃったし、コンちゃん調子いいみたいだから、店長さんが白状してもしなくても、アレ、終らないよ」

「そ、そう……」

「ミコちゃんは……」

「?」

「店長さんが浮気してると思いますか?」

「店長さんが浮気?」

 ミコちゃん、拷問受けている店長さんを見ながら、

「私、わからないけど……」

「ふーん、わたしも浮気しているのかな~って」

「店長さんはどっちかというとパン一筋だから、どうなのかしら」

「ミコちゃんがそう言うと、そんな感じがします」

「でも、やっぱり早く終らせてほしいわ」

「なんで?」

「レッドと一緒に神社に行くのもいいんだけど、お客さんが来るのよ」

「お店は閉めちゃったよ」

「村長さんが支払いとか、レッドの学校の事で……」

 言ってるそばからドアのカウベルが鳴ります。

 半分開けたドアから中をのぞきこんでいるのは女の人です。

 おばちゃんだけど、なんだか品の良さそうな感じの人。

 って、途端にコンちゃんはいつものメイド服に戻って、わたしはそのまま女王さまルック。

 おまけにさっきまでコンちゃんが振っていた鞭、わたしの手の中です。

「ちょ、ちょっとコンちゃん、全部わたしに押し付けるの~!」

「まったくこのタヌキ娘は、客が来るというのに昼間から女王さまゴッコかの」

「わーん!」

 わたし達が言い争いしていると、覗き込んでいた女の人はおそるおそる入ってきました。

「あの……」

 コンちゃんは知らん顔で退場。

 わたし、残されちゃったから、お客さんの話を聞かないといけません。

 女王さまの格好で、鞭持って……とほほ。

「は、はい、なんでしょうか?」

「お金の支払いと、レッドって子供の事で来たんですけど……」

 女の人、ぼろぼろになった店長さんを見て唖然としています。

 それから女王さまなわたしを見て、後ろに回ってしっぽを見てますよ。

「あ!」

 その時、女の人のニオイ、感じました。

 店長さんからしていたニオイです。

「そ、村長さんですか?」

「はい、そうですけど」

「お、女なのに村長さんなんですか!」

「ええ、まぁ……誰もなり手がいませんでしたので」

「はわわ……」

 わ、わたし、村長さんって男の人とばっかり思ってました。

 ああ、ボロボロになった店長さんが、冷たーい目でわたしを見ています。

 た、叩いたのはコンちゃんなんです。

 ま、まぁ、わたしもすごく浮気って疑ってたけど。


「……」

 店長さん無言で箸を動かしていますよ。

 わたし、夕ごはんはもう、小さくなってばかりです。

 でも、コンちゃんは知らん顔で食べていますね。

 わたしも、あれくらい図太く生きたいものです。

「ポンちゃんは、俺が浮気してると思ってたわけだ」

「う……」

 こう、言われてばっかりだとお外でお休みになりそう。

 ともかくなんでも言い返しちゃいましょう。

「店長さんが『誰かと結婚』とか言うからいけないんです!」

「そうくるか!」

「わたしを試したり、ちゃかしたりするから、疑いたくもなるんです」

「ふーん、ポンちゃんは俺が信じられないんだー」

「そ~です」

 ああ、また店長さんの冷たい目。

 あの目は死刑宣告というか、お外でお休み宣告な目です。

「鞭で叩いたのはわたしじゃなくてコンちゃんですっ!」

 なすりつけちゃえ。

 いやいや、本当に叩いたのはコンちゃん。

 途端に店長さんの目がコンちゃんに向けられます。

 これでわたしは安泰かな?

 コンちゃんすまし顔で、

「店長は熟女好きかもしらん」

 え……それはどーゆー事ですか!

 わたし、店長さんをガン見です、疑いのまなざしで!

「ね、コンちゃん、お願いがあるんだけど!」

「なんじゃポン」

「もう一度わたしを女王さまにして!」

「わらわもまざってよいかのう?」

 一緒に食事をしていたシロちゃんが、

「本官も見たいであります」

 たまおちゃんも目をランランとさせて、

「私も、コンお姉さまの勇姿が見てみたいです」

 コンちゃんが指を鳴らすと、わたし達四人は女王さまルックに変身。

 ミコちゃんとレッドは消えちゃいました。きっと寝床に転送されたんでしょう。

 店長さん、ごはん茶碗を持ったまま、ブルブル震えています。

 わたし、鞭を握りしめて、

「店長さん、熟女好きなんですか?」


「ねぇねぇ、レッド」

「なに、ポン姉~」

「学校に行くの、こわくないんですか?」

「がっこうってなに~」

 うわーん、レッド、学校でイジメられないか心配です。


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