閑話:思考する女
アリストの出番が少ないとの事なので。。。
閑話なので非常に短いです。
アリストが漠然と抱いていたウォーレンへの憧れは、ギルベルとの戦いを見た後にその形を少しだけ変えた。
彼女が以前、ウォーレンに抱いていた尊敬の念は、"魔力が無いのに"他を寄せ付けない強さや技術を持ち凄いといったものだった。
それは、多少の憐れみが含まれた想い。彼女自身が魔術師だから、そういった視点が自然と混ざっていた。
本当はそうではない。"魔力がないけれども"も"体格が良くないけれども"でもない。ただ、彼の姿勢を評価をするのが正しいやり方だったのだ。
ギルベルとウォーレンの戦いであるが、剣士としての素質はウォーレンの方が劣っている事は誰の目にも明らかだった。
では、なぜ彼が善戦し、勝利を収める事が出来たのか。
それは彼が今まで己の才能など歯牙にも掛けずただ真摯に自分と向き合い、腐らずに自身を磨き続けたからだ。
話は剣や魔術に限らないのだろう。それは1年次の成績からも分かる。手の届く範囲、その全てに手を伸ばし続けたのだろう。
これまで表面的にしか分からなかった事が少しずつアリストには分かってくる。
彼は確かに頭が良く器用だと思う。
しかし、世間が張っている天才というレッテルとその実像は些か違うように今のアリストには思えた。
ただ誰よりも手の届く事に対して、学び続けたのだ。
それは、利口ではない生き方のように思う。生き急いでいるようにも思う。きっと他の誰もそんな風には生きられない。
(きっと今まで多くの物を犠牲にしてきたのだろう……っ!?)
ここで彼女はある事に気付いてしまった。
事実ではまだない。しかし、限りなく真実に近いであろう事。
そして、おそらくはウォーレンすらもまだ気付いていないもの。
(ウォーレンは師にこの学園に放り込まれたと言っていた)
それは、彼の師がウォーレンの学ぶべき事がこの学園に存在すると思っているという事だ。
ウォーレンが学ぶべき事があるかと、教師に聞けば彼らは口を揃えて言うだろう。
「高等部のレベルでは、もはや教える事は何も無い。学びたいなら、早く研究室に行け」と。
事実、彼には多くの教員から飛び級と研究室の誘いがあった。
しかし、ウォーレンは「すみません、後見人に高等部は飛び級せずに普通に進級しろと言われていまして……」と言った具合に上手く話を躱していた。
(あぁ、彼は師に愛されているんだな)
きっと彼の師が学ばせたかった物は、魔術などではなく、もっと普通の、そう普通の物だ。
誰もが持っている物。だけど、彼には欠けている物。
皮肉にも彼はこの1年で他人が近寄り難い程の実績を積み上げてしまった。
彼にとっては、それは彼の師に向けて果たすべき義理だったのだろう。
結果、彼に近寄るのは分別のついた大人だけとなってしまった。
誰もが自分より劣った才能を持った人間よりも、実力がないなんて思いたくはない。ましてや多感な時期だ。
(……それでも私が気づいた)
アリストは密かに決意をする。
この想いが何かは、まだ分からないままに。
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「う、ウォーレン!昼でも一緒にたた、食べないか!」
「委員長。後ろで親友のコスモさんがもの凄く睨んでいるのですが……」
ルーエンス学園の魔術科2年Sクラスは今日も平和だった。
ヒロインはアリストで、この小説を書き始めました。
コスモはだいたいウォーレンの悪口を言っている脇役だったのですが。。。
作者にもこの先がどうなるかは分かりません☆・゜:*|・∀・|ノ【ワケワカメ!!】ヽ|・∀・|*:゜・☆