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魔国脱出(2)


私の名はリディ。家名はありません。

あの御方に命を救われて以来、忠誠を誓い、ずっと仕えています。

もちろん、あの御方に従う者は私以外にも沢山います。

あの御方は凄い方なのです。

永く戦争が続いていた帝国との和睦を実現させ、他の諸国とも相互不可侵の条約を結びました。

その後、あの御方は内政に力を注がれました。

私たちの生活もだんだん良くなり、荒んでいた魔国に光が差し込みました。

あの御方がいる限り、この国は安泰。

誰もがそう思い、そう願っていました。


しかし、平穏は長く続きませんでした。

あの御方には弟さまがおられます。

その弟さまが突然、反乱を起こし、あの御方に成り代わったのです。

そして弟さまは、あの御方の死を私たちに告げ、自分が後を継ぐことを宣言しました。

誰もが嘆き、悲しみ、絶望しました。

私は何が起こったのか理解できず、ただ呆然としていました。


それから数日後、新たな王による暗黒の時代が幕を開けます。

新たな王は、あの御方が苦労して実現させた帝国との和睦を台無しにしやがりました。

あろうことか、民から税を巻き上げ、軍を増強し、帝国に攻め入ったのです。

帝国も警戒していたようで、侵略は失敗に終わったようですが、両国の関係は再び悪化してしまいました。

今後、帝国と和睦するのは無理でしょう。

たとえ叶ったとしても、大きな代償が必要になると思われます。


しかも、馬鹿王は帝国だけでなく、世界に宣戦布告して、周辺各国に攻め入りやがったのです。

不幸中の幸いと言っていいのか、我が国の軍事力は大幅に強化されていたので、不利な状況にはなっていませんが。

それでも平穏を望んでいた私たちには衝撃的な出来事でした。

私たち魔族は、これまで世界の敵と認識されていました。

しかしあの御方によって、少しずつではありますが、その認識が改められつつあったのです。

私たちは世界に認められつつあったのです。

他国との交流も始まっていました。

私たち魔族の悲願でもありました。

それが目の前で崩れ去りました。


誰もが絶望していました。

でも、私はまだ諦めていません。

あの御方の死を告げられて幾日が過ぎました。

私はどうしても信じられず、あの日からずっと、秘密裏に調べ続けていました。

そしてやっと、あの御方の手掛かりを掴んだのです。

あの御方は絶対に生きている。

何があっても、あの御方が死ぬはずがない。

あの御方を殺せる者はいない。

あの御方は…


「魔王さま、このリディが今助けに参ります!」


あの御方は魔王さまなのですから。


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