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魔国脱出（１）
場所は魔国、世界の中央に広がる魔族の国。
魔王が座する城、魔王城の地下深くに造られた牢獄。
両手足を枷に封じられ、鎖で拘束された囚人。
灰色の髪が足元まで伸びきり、床に散らばっている。
表情は髪に埋もれ、窺うことはできない。
「…」
かすかに呼吸の音が聞こえる。
囚人は生きていた。
弟の謀略に嵌まり、囚われて幾日が過ぎた。
外界から完全に閉ざされた牢獄。
私がここに封じられて以来、訪れる者は一人としていない。
当然、食事や水も与えられていない。
どうやら弟は、私をこのまま殺すつもりのようだ。
裏切られた時の感情は既に消え失せている。
飢えと乾きには慣れた。
目が霞む。
意識を失いそうになる。
「もはや、これまで…か。」
囚人は意識をゆっくりと手放した。
