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<水魔・外伝 respect for 炯>

作者: 北川 圭

外伝執筆 北川 圭     キャラクター設定・デザイン 時任 炯(c)


☆すべてのキャラクターについての著作権は<時任 炯>さんに帰属します。

#1


水面がわずかな風を受けてたゆたう。昴醒はその滑らかな細く長い指を水中からそっと引き上げた。まとわりつくように身体を舞う水滴は、彼の肌を転がるように滴っていった。

長い髪のほとんどを水中につかせ、両の手でそれを払う。上げた顔に浮かぶ憂いの表情は、この水たちとの逢瀬を悦んでいるのか嘆いているのか。


昴醒は水魔族と呼ばれる種族であり、巧みに水を操る。そのえねるぎーは計り知れぬものであり、また同時に彼も水に縛られる宿命を背負う。


このように清らかな泉と戯れるひとときが、彼にとっての唯一の慰めであった。


青白く透き通る陶器のような肌、冷ややかに見えて奥に熱を帯びる瞳。相反する要素をその群青色に染め上げられたかと思わせる美しく長い髪が、覆い隠すようにしている。

彼は水の感触を楽しむかのように右手でそれをすくい、髪に指を差し込んでかき上げた。


目を僅かに細め、唇を開く。愉悦の表情にも似たその姿を見る者がいれば、彼の魔に引き込まれることであっただろう。


もっとも、ここには誰もいまい。

それほど森の奥まった深く静かな静謐の泉。

しかし、昴醒にはとうに気づいていた。風の中には微少な単位の水があるのだ。

それらは常に姿を変え、この星を包んでいた。変化へんげするもの…それがあくあ。


彼にしか感じられぬ水が濁る。わからぬ昴醒ではない。



…ふん、虫けらが…



聖なる時間を邪魔されたという思いで、彼は小さく舌打ちをした。

身には何もまとってはおらぬ。もとよりそれを気にする彼ではなかったが。

濁りは、気づかれているとも知らず昴醒へと足音を忍ばせた。

ぎりりとした音は、おそらく…粗末な弓…。

面白い。水魔族の中でも力を誇るこの私に、その矢を撃ち込むとでもいうのか。

弦を引く軋みが次第に大きくなる。それを操る虫けらの息づかいまでもが手に取るように感じられる。

昴醒はゆっくりとおのが身体を持ち上げてゆく。水面みなもから徐々に姿を現す様子を、射手は驚愕の表情で見つめている。水面は鏡。すべての真実は映し出される。



ククッ。



射手のあまりの無防備さに、昴醒は嘲りの声を上げた。

さっと両手を挙げると水しぶきはひとかたまりの水矢となって、逆にかの射手へと向かっていった。


うわあ!!


たまらず声を出す敵は、腰を抜かしたようで思わず手を地面に付けた。極限まで張られていた弓が、びいいんという音を立てて弾かれた。まるで天空の音楽のように。

矢は近くの木に刺さり、羽を揺らしている。

昴醒が何も触らぬまま、彼の身体には薄衣がまとわれ、生まれ出たばかりのすらりとした足先からは水がしたたり落ちている。

しかし、振り返りしかの瞳は、残忍な色を帯びたまま怯える射手を捉えた。


「ククッ。人間という名の虫けらよ。私に矢を向けてどうしようと思うたのだ?」


響き渡る涼やかな声と裏腹に、そこにはあからさまな嘲笑と獲物をいたぶる残虐さが含まれていた。

兵士の装いこそしてはいるものの、気の弱そうな細身の青年はすでに身体を震わせている。


ばっ!


昴醒の片手が上げられると同時に、水矢が襲いかかる。すんでの所でそれをかわした青年は、青ざめた顔で息を弾ませている。

あきらかに昴醒はわざと外したのだ。獲物をいたぶる獣のように。


もう一度、今度は反対の手が挙げられた。しゅん!と空を切る音がしたかと思うと、青年がいたはずの地面がえぐり取られている。彼は必死の思いで身体を丸め、それを避けた。


「逃げるのなら、もう少し気概を見せてはくれぬか。抵抗なき者を襲うても面白みがない」


口元を歪め、嘲りの笑いを隠そうともしなくなった昴醒が、とどめとばかりに両の手を挙げた。


…と、そのとき。


「その辺りにしとけ、昴醒。約束は約束だろ」


木に刺さりし矢を簡単に手で引き抜き、その陰から姿を現すは…金色こんじきの瞳を光らせ、豊かな茶毛を揺らす引き締まった体躯の若い男だった。



男、と呼ぶには荒々しすぎる。雄とでも言うべきか。

彼の姿を認めた昴醒は、仕方なさげに腕を降ろすとため息をついた。


「邪魔だてをするでない、雷雨。これはそちらから仕掛けられたもの。正当防衛という言葉があるのであろう?虫けらどもの世界には」


いまいましげに吐き捨てる。雷雨と呼ばれた男は、震えて丸まったままの人間に近寄っていった。


「ほら、大丈夫か?何でよりによってこんな奴を狙った?相手が悪すぎるぜ。こいつの性格はそれはもうひん曲がっているからな」


そう言いつつも、優しく青年の腕を取る。おそるおそる顔を上げた青年は息を飲んだ。


「あ…あなた様も、魔族の方で…」


「こいつなど、魔の仲間にも入れとうないわ。ただの獣だ。獅子だ獅子。世が世なら檻の中で見せ物だ!」


昴醒は、おのが獲物を横取りされた腹いせに悪態をついた。すでに身体は水面近くまで降ろされ、腕を組んで二人を見やっている。


「はいはい、水の物の怪野郎には言われたくねぇな。人間はみんな食料ってなんつう単純思考。…殺生はナシって約束だったよな?」


昴醒はふてくされた。確かにそうだ。彼はこの雷雨とともに地上を旅する約束として、人間どもを食らって生き血を吸うことはせぬという誓いを立てた。魔の者にとって言の葉は裏切れぬ。


「ただ少し遊ばせてもろうただけだ。こやつは私を撃とうとしたのだぞ?」


そっぽを向いた昴醒に少々呆れ気味の笑みを向けてから、雷雨は青年に向き直った。


「俺は獅子族の雷雨だ。これは水魔族の昴醒。まあ命を狙うくらいなら名は知ってはいるだろうがな。訳あって旅をしている。もう一人は…」


「ええい、忌々しい人間よりもっと下等な虫けらの名など出さぬともよい!このままどこぞに消えてくれた方がましだとて」


もう一人、旅に同行する緑黄は昆虫界の蜂族だ。確かに虫には違いないが昴醒にあってはひとたまりもない。


「酷い言われ方であるなあ、緑黄も。ヤツはヤツでいろいろと忙しいのだろうに。とにかく、昴醒が無事で良かったよ。ふだん虫けら扱いの人間に倒されたとあっては、水魔族の上流階級のプライドがこなごなだろうからな」


そう言うと、雷雨は高らかに笑った。昴醒は、最初から気配などわかっておったわ!と叫ぶ。

雷雨は少しばかりまじめな顔になると、改めて青年に目をやった。


「おい。これはこう見えてもとんでもない水魔だぞ?手を出して無事でいられるでも思ったのか?詳しく話してもらおうか。事と次第によってはただでは済まんぞ」


金色の瞳が妖しく光る。穏やかに見えてもやはり魔の者には違いない。青年は震えを止めることができない。

それでも意を決したのか、ようやく二人の方へと顔を向けた。


「も、申し訳ありません。お命を取ろうなどと大それたことは考えもしてませんでした。ただ、あの…」


ただ、何だ。それまでの穏やかな表情がゆるやかに変化していく。やはり雷雨とて獅子族。人間とは格が違う。細められた目は、今にも跳びかからんばかりの気迫を伝えている。

さらに怯えた青年は、がばっと身を伏せると額を地面にこすりつけた。


「どうか、どうかもう少しだけでいいのです!我が身かわいさで言うのではありません!私を食らうのは待っていただけませんか!?妹を、妹を助けてから!!」


妹?


雷雨と昴醒は思わず目を見合わせた。この人間はいったい何を言い出すのか…。


「妹が、別の魔の者に捕らえられているのです!!美しき水魔の女を連れてくれば、妹の命は助けてやると!!どうか妹を、私の大切な美雨めいゆいをお助けください!!」


泉のふちは、先ほどの昴醒が投げつけた水矢でぬかってしまっていた。その泥で汚れるのもかまわずに、青年は二人の妖魔に懇願した。


「美しき…水魔の…お・ん・な!?」


素っ頓狂な雷雨の声にも、はい!このような美しい女性ならば必ずや妹は助かると!!と青年は叫んだ。

昴醒はわなわなと拳を握りしめ、顔は引きつりだした。

雷雨は真剣な青年の姿に必死にこらえたが、とうとう口元からごふっと音を立てた。

昴醒の射るような視線が雷雨をにらみつける。唇を噛み、耐えに耐えていた雷雨は…次の瞬間…大声で笑い出した。


「げほ、ごほ、あひゃひゃ、ごめ!わら、わらわな、、はは!!」


「ええい!うるさいわっ!!誰が女だ!?私は、私は男だ!!」


怒りにまかせて両手を挙げ、水矢を放ちまくろうとする昴醒を、まあまあとなだめようとしては…雷雨は何度も声を上げて笑った。


青年は、ぽかんとした顔つきで昴醒と雷雨を交互に見つめるばかりだった。


#2


粗末ななりの人間でしかない青年は、月亮ゆえらんと名乗った。

よりによって水魔一の魔づかいを襲おうとした命知らずのか弱き虫けら…月亮は今、当の相手にしっかとしがみつき、おのが身体を震わせていた。


「ええい!そばに寄るでない!!忌々しい虫けらの分際で!」


昴醒は仏頂面で吐き捨てた。

月亮が怯えるのも無理はない。彼らは天空高くふわりと浮き上がっておるのだから。


「…こ、これが雲と…云うのもの…なのですか。何やら霞のように下の景色が透けて見えます。墜ちてしまわぬかと、気になって気になって…」


彼ら三人は、魔の者が造り出す水の変化へんげに乗り、敵のアジトへと向かうところであった。

その端に鍛えた腕を組みつつ、冷ややかに二人のやりとりを聞いていた雷雨が声を掛ける。


「無理もないだろうよ。人間どもにとって空を飛ぶことは尋常じゃあない。ましてやこんな吹けば飛ぶような塵のような雲なんだからな。もったいぶらずにいつものでかい珠でも出してやればいいだろうによ」


「たかが虫けらの為に、我が至宝である黒真珠をむやみやたらに具象化などできるものか。敵といえども所詮は小悪党に過ぎぬのだろう。このような下らぬ茶番に付き合うほどの暇であるとは思えぬがな…我らが旅は」


はん。昴醒の繰り言に冷たいいらえ。雷雨は彼に一度醒めた目を向け、つと視線を外した。


「美しき水魔の女…気にはならないのか。その敵とやらが欲しているものの正体を」


雷雨の言葉の真意を捉えた昴醒は、気づかれぬように唇をそっと噛んだ。

…水魔の…女…。こやつはまさか、詢のことを指して云っているのではないかと思い至ったのだ。



昴醒の許嫁でありながら、彼の前から姿を消した少女。

彼女を捜す長い長い旅…。昴醒は知らず目を細めた。

雷雨もまた黙った。金色の瞳を持つ獣族の王は何を思うか。


月亮は二人の顔を交互に見やると、再び不安げに昴醒へとしがみついた。


……

「妹は、突然村を襲ってきた大男どもに連れ去られてしまったのです」


あの泉のほとりで、身体を泥まみれにしながら語った月亮の言葉。

成り行きで聞かされた二人の魔の者は、うなだれる力なき人間の姿を一瞥すると立ち上がった。


「話にならぬな。虫けら一匹を助けるが為に水魔の女を連れてこいなどと。相手にする暇もない。征くぞ雷雨よ」


「まあ待て。それで…なぜそいつらが水魔を捜しているんだ?」


冷ややかに見捨てようとした昴醒と裏腹に、雷雨は表情を少しばかり歪めて薄く笑った。

昴醒の瞳が、ぎろりと彼を睨む。また余計なかかずり合いを…。

オドオドとした月亮は、それでもおのが最愛の妹を想う気持ち故か、持ちうる勇気をかき集めて彼らに訴えた。


「大男どもは、この近隣の村を襲っては美しい女ばかり攫ってゆくのです。水魔の女が化けているかも知れぬと。どうかお願いです!水魔の女人を…いえ、女人のいそうな場所だけでも教えていただけませぬでしょうか!?」


あのような貧相な武器で倒せるものか。昴醒の冷酷な嘲笑。彼らの種族はその数を減らされつつあり、それ故に高い魔の力を持つ。


「私はどうなってもいいのです!美雨は、可愛い我が妹の美雨は十と半ばを過ぎた頃。大男の魔に捉えられ喰われてしまうには…あまりにも…」


さめざめと泣く月亮を、昴醒は醜く浅ましい姿としか見ることができなかった。


…所詮はこやつも、魔の者へ命乞いする哀れな虫けら…


彼には、妹を想う兄の篤い愛情を理解することなど不可能であった。喰われるのならそれもさだめ。運命を変えるにはそれ相応の力がなければどうともできぬ。

我が手に力を。その想いは昴醒も…雷雨も同じ。払った代償は取り返しの利かぬほど大きいのだ。

しかし、何も言わずにその場を離れようとした昴醒を、差し出した腕で制止するのは雷雨であった。


「このままあてもない旅を続けて命を落としたいのか?それとも…それがおまえの本心か、月亮」


月亮ははっとしたように顔を上げた。


「妹が戻ってくる可能性は殆どない。いてもたってもいられないのならばせめて、無駄死にができる場所を探していたのか。為す術もなく村から動けずにいるくらいならと」


静かな声。それは誰に向かって問うているのか…雷雨。


それにな…、意味ありげに言葉を不意に切ると、雷雨は昴醒の背を押して月亮に向き合わせた。気軽に触るでない!小声での無駄な抗い。


「 『美しき-水・魔・の・女-』ならここにいるぜ?」


そう言って雷雨はにやりと笑った。


……

「ええい、忌々しい。このような格好までさせおって!」


女人のように髪を結い上げ、朱を差す白装束を無理やりまとわされた昴醒は、まあ少々育ちすぎた『美しき水魔の女』と見えなくもなかった。

薄衣を幾重にも羽織り、その一つ一つには金糸銀糸の刺繍が施されている。ふうわりとした上ごろもは、遠方伝来の織りをとりまぜたのか、光を受けて綺羅星のごとく輝きを放っている。袖にはさらに薄い飾り布を絡ませ、紗を通して衣の美しい色合いを淡く透かせていた。

正装でなければ着るものか。冷ややかに棘を吐く水魔に、月亮が懸命に言われるがまま同じようなものを探し当て用意した、心づくしの女装束。

それすらも、とても気位の高い彼を満足させるものではなかったらしい。険のある声がますます尖る。


「地上を勝手に荒らす魔の者がいたと聞いては、そのままにしておけるか。最近、身体もなまっていたところだ。存分に運動させてもらおうじゃねえか」


そう言いながら雷雨は大きく伸びをした。その決して広いと言えぬおのが領域で。

ほんの少しの刺激で、雲という名のただの微細な氷の粒が揺れる。月亮はたまらずに悲鳴を上げた。


「だから!!私に触れるでないと言っておるだろうが!?次にしがみついたのなら、まずおまえから喰ろうてやるわっ!!」


聖なる水の湧き出でる我が生命の源泉。水魔である昴醒にとって、そこから離れることは持てる力を酷く失ってゆくこと。このような茶番はさっさと片付けてしまいたい。

くわっと口を開きかねない水の妖魔を見て、塵のような存在の人間は再び震え上がった。


「わかってんだろうな。敵を見かけた途端に攻撃を仕掛けるなよ。相手の企みをすべて暴いてからだ」


金色の王に釘を刺され、昴醒はさらにふくれた。


「馬鹿げておるわ。よもや、このようなことで手がかりが見つかるだのと本気で思うているはずがないだろうて。…!」


さすがの昴醒も、その次の言葉を続けることはできなかった。この道が本当に詢につながるのであろうか。それでも頼るしかない一縷の望み。希望と落胆を続けてきた。或いは今度こそ…。

雷雨の面も冷たく引き締まる。さあ、何が出てくるか…。大男の魔が住むという祠は、山腹の一角にひっそりとある。月亮が万一、水魔を捉えたとして、いかようにして連れてくるつもりであったのか。


…それも妹を想う兄の愛か。もしくは、これすらも大きな罠か…


祠の前でようやく足を地に着けた三人は、知らずと居住まいを正していた。


#3


山の中腹をくりぬいて作られた祠には、獣臭さが充満していた。そもそも水と土は相容れぬもの。昴醒はこみ上げる不快感を必死にこらえていた。


…ばかばかしい、なぜこのような真似を「この」私が!…


答えはわかっている。だからこそ認めたくはなかったのだ。ほんの一縷でも詢につながる何かが得られるのであれば。切ないほどの微かな望み。


大男どもは酒を酌み交わし、生臭い息を吐き散らしていた。ぐわはははと下卑た笑い。

従順そうに見えるよう、しとやかに俯いていた昴醒は、そうっと辺りを探り始めた。

そう大きくはない祠は、ただ本当に岩肌を掘り抜いて人やらそうでない者やらが入ることのできる空間を作り出しているだけであった。ごつごつとしたその壁は、触ればほろほろと土がこぼれることだろう。

思うたより高度がある為か、空気が薄い。同時に非常に湿度も低い。意地でも意識したくはないが、昴醒の思考能力にそれはうっすらと陰りを差し込んでいた。長引けば、目眩…あるいは能力を削がれ危機に陥る。それだけは避けたいものだ。


いや、違う。


何かが彼を取り巻く状況に異変を感じさせていた。

奇妙で嗅いだことすらない…異国の香、か。

それらは人のみならず人ならぬ者にさえ、異様なほどの違和感を覚えさせるものだった。高地にあって気が薄いだけではない。少しずつ周りのじとりとした湿気を奪い取ってゆくかのような…目に見えぬ飢えと渇きを内包した香り。


傍らで、美雨の兄である月亮が頭をこすりつけんばかりに土下座を繰り返していた。


「お約束通り、見目麗しき水魔の女を連れて参りました。どうか妹を、美雨をお返しください!」


奥まったところに、少しばかりの祭壇がもうけてある。嗅ぎ慣れぬ香がさらに気を刺激する。確かにそこには、か弱き人間の少女が手足の自由を奪われ、ボロ布をまとったまま頭を垂らしている。


…ふん、あれとこの私が引き換えか。随分とまあ安く見積もられたものよ…


心の中でもありとあらゆる罵倒を続けなければ、到底腹の虫など収まろうはずがない。昴醒はできるだけなよなよしく肩を落とすフリをしながら、口元を歪めて不機嫌さを隠そうともしなかった。


「よくやったな。大勢のニンゲンが命乞いをしたが、本当に水魔を連れてきたのはおまえが初めてだ。それは褒めてつかわそう」


ぐわっはっは。繊細さとは真逆な醜さに、美しき昴醒は身の毛もよだつほどの嫌悪感を覚える。

大男の一人が、手に鞭のような者を持ち、あろうことかその昴醒に近づいてきた。唇をぎゅっと噛みしめる。


「おい、女。顔をよく見せろ」


汚らしい獣の皮でできた鞭の先で、男は昴醒のあごを持ち上げてみせた。当然目も合わせぬ。


「ほう、これは美しい。噂に違わず、水の者はみなこの世のものとは思えぬ美貌を兼ね備えているというのは本当なのだな」


その手を離せ。汚らわしい手を離せ。心の中の罵倒は激しくなるばかり。

思わず厳しい視線をヤツに向ける。見る者を凍らせるという昴醒の瞳に浮かぶ、冷ややかな侮蔑の色。


「気の強いおなごだ。そちが<じ・ゅ・ん>とやらか」


その瞬間、さしもの昴醒も冷静さを忘れた。目がこれ以上なく見開かれる。なぜ、なぜこのような山の魔どもから、詢の名が出ようとは!!口に出された音は言霊。穢すでない!!彼女の名をおまえどものような下等な魔が口にして良いはずなどない!!

怒りで表情の歪む昴醒に、「本来の名を当てられ動揺している」と思いこんだ山の魔は、さらに笑い声を大きくさせた。


「これは素晴らしい。ニンゲン、よくやったな。こちらにこやつが手に入った以上、我々にも幸運が舞い込むというもの!!」


「で、では!!美雨は返していただけるのですね!?」


勢いづいて本音を叫ぶ月亮に、山の魔どもは一斉に腹を押さえだした。


「ぐわはははは。ニンゲンの生娘は一番の馳走だ。おまえもいくぶんとうが立ってはいるが、煮込んで喰らうにはちょうどいいだろう。今夜は酒宴だ。さあてと準備に取りかかろうとするかの」


耳に障る魔の者の下卑た声に、月亮はいきり立った。


「約束が違うではありませんか!!やっとの思いで、この水魔をここに連れてきたというのに!?」


「確かにおまえはよくやった。水魔の女とは言ったがまさか本物の<じ・ゅ・ん>を見つけてくるとはな。我々にとってこれ以上の収穫はなかろうさ。だから酒宴だと言っているのだ!」


完全に我を忘れた月亮が妹に向かって走り出す、まさにそのとき!



ゆらりと昴醒は立ち上がった。暗く深い深い想いを込めたぞっとするようなその瞳で。


「その名を軽々しく口にするでない。ぬしらのような下賎な者が声に出せるものではないのだからな」


昴醒の言葉もいつものような傲慢なほどの力強さを失っている。聖なる生命の源である水から離れ…幾時が経つからか。そうではない。先ほどの香はその匂いを強め、厭でもその辺りの者らの乾きを引き出している。

山の魔はにやにやしながら、もう隠すことなく香へと火をくべた。これが何かわかるか、と。おまえら水の者らが忌み嫌うはずの乾きだ。遠方伝来のこの香を焚きしめよ。それがおまえらの力を削ぐのだからとの教えだ。

誰に、その悪知恵を吹き込まれたというのだ…美しき水の魔の心に、黒き疑惑の渦が生まれる。この程度の場に連れてこられた程度で、彼の気が弱ろうはずもない。その生命の元である水を奪い取ろうとする…禍々しい香。水矢ですべて吹き飛ばしてしまいたい。誰が、いったい誰がそのような術をこ奴らに。

それでも、いやそれ故、彼の放つ台詞には妖気が漂う。


これこそが、言霊。


昴醒の指が複雑な印を組む。唱える呪詛はしかし、掠れて消えかける。術をあきらめた彼は、胸元から細かな細工の施された煌びやかな短刀を取り出した。下手に敵の前で水術の手の内を見せとうもない。


「ほう、おもしろい。その女の細腕で俺たちを倒そうとでもいうのか。それとも何か?高貴な御方の仰る下賎な者から触れられるくらいなら自害して果てようとでも?」


品のない笑い声は、やがてどう猛さを少しずつ増してきた。

他の山の魔どももゆっくりと立ち上がる。

昴醒は気力だけで立ち、彼らを睨め付けた。


敵は五名。こちらは水さえないこの乾ききった空間に、蜉蝣のように儚く消えかけようというほどなのに。

それでもあまりの昴醒の気迫に、魔どもは間合いをも詰めることすらできずにいた。どう見ても不利なのは彼なのに、のまれているのは魔の者の方。

昴醒は視線の端に、にじりにじりと我が妹へと歩み寄ろうとすり膝で進む月亮を捉えていた。そうであろう。魔の闘いにニンゲンは手出しなどできぬ。彼とてどれだけ恩義があろうとも、可愛い妹が大切なのだろう。


珍しい、私ともあろうものが。


視界はかすみ、足元はふらついている。それでも<じ・ゅ・ん>を知るという山の魔をそのままになどしておけるものか。

昴醒は短刀の柄だけは手離さじと、渾身の力を込めた。

いかな彼でも気力は続かぬ。ぐらりとその細身の体躯が揺れるのを山の魔どもは見逃さなかった!


「ぐええええっ!」


この気迫に、ただのか弱き女とはさすがに思えなかったのだろう。先頭の男は昴醒へとおのが武器を繰り出すように向かってきた。避けられぬ!しかし、気高き彼が何に対してをも屈しようというのか!?



ばさり。



そのとき、祠の入り口に掛けられた粗末な布がはぎ取られた。


「だから言っただろうが。噛みつくのは、相手の企みをすべて暴いてからにしろと。全く気が短いんだからよ。うちのおひい様は」


そこには、背後からの陽を浴び、身体全体を金色に輝かせた魔の王が立っていた。

もちろんそれは、獅子族の王子として高い能力と気高い魂を持つ雷雨その人であった。


「はん、こらえ性のないおひい様だよ。こいつらから詢の情報を引き出すことは諦めて一暴れでもするのか?」


くくくっと雷雨は笑いつつ、腰に掛けたおのが武器へと手を掛ける。彼がその気であれば、このような下等な魔など一瞬で倒すことができるだろう。

しかし、山の魔どもは何を思ったか、一様にニヤリと不敵な笑みを浮かべた。さしもの雷雨も不審げに眉をひそめる。


「これはこれは。獣界を統べる金色の瞳の王子よ。ようこそお出ましくださいました」


…なん、だと…?…


「<じ・ゅ・ん>という名を餌にさえすれば、かの王子の居所が掴める。生きて連れ帰れるのであればなおよし。叶わぬ時は遠慮せずとも斬り捨てよ…」


「誰の…命を…受けた?これは、俺を呼び出す為の罠であったとでも!?」


もはや山の魔どもは何一つ口にせず、咆哮を上げながら雷雨へと突進してきた。狭い祠で身動きも取れぬ。こちらには既に動くことどころか、意識を保つことさえ危うい昴醒を抱える身。


「…私に…かま…う…な…。放ておけ」


「そうは行くか!!こいつらは、どうやら俺を最初から狙っていたらしいからな!!」


叫ぶ雷雨の横に払った剣が、僅かな光を受けてきらりとそれを反射する。獣特有の叫び声。しかし敵はまだ、四ほども残っておるのだ!!


と、手足のいましめを解かれたニンゲンの少女は、手に木製の樽を大事そうに抱え走り寄ってきた。


「きれーなお姉さん!!あんた、水魔なんでしょう!?ちょっとぶっかけるけど、我慢してよねっ!!」


言うないなや、少女は樽の中身を昴醒の頭上からざぶりと掛けた。その美しき美貌も麗しき衣装も水浸しとなる。


「ここは聖なる山!宝麗山よっ!!長いこと蓄え続けてきたその豊かな湧き水なんだから、水魔さんだって文句はないでしょう!?」


大声で叫んだせいか、少女の息も上がっている。

しかし、ずぶ濡れの昴醒はそれとは逆にしなやかな手の甲についた水滴を、この上もなく甘い美酒を味わうかのように、妖艶な仕草で舐め取った。


「ああ、確かに。この水は我が生命。もはや恐れるものなど何もない。礼を言うぞ、ニンゲンの女」


美雨と言いなさいよ!!少女の言葉など意に介さず、昴醒は雷雨のそばへと近づく。

背中を合わせ、もはや隠すことなく湧き水からすらりと伸びた細い剣を造り出す。


「ふん、技すらも要らぬ。今までの鬱憤を晴らさせてもらうぞよ」


今回ばかりは見逃してやらあ。小さな雷雨の苦笑混じりのいらえ。


「独りだけは残しておくさ。こやつらの企みとやらを訊き出さねばな」


祠の中に、気高き二つの宝石は、輝きを増しつつも獲物をしっかりと捉え始めた。


# 最終話


「たあっ」


言葉にならぬ叫び声は、雷雨にとってはわずかなもの。それでも山の祠は響きに震えた。敵の一人を横なぐりに斬り捨てる様を捉えつつ、昴醒は忌々しい香の数々を水剣で叩きつぶす。まるで生を持つかのように断末魔をあげる香に、やはりなと独りごちる。


「ただの香ではなかったようだな。それだけそちらは用意周到という訳か。ならば遠慮などせぬ!」


水剣はその切っ先を自在にのばし、敵をなぎ倒してゆく。血しぶきを上げる間もなく腕を切り落とされた敵は、己の状況を把握できぬまま目を見開いていた。昴醒の口元が歪み、端整な顔立ちに残忍さが加わる。つうっと体躯を空に浮かせた彼は、そのまま敵の頭へと自在に水の矢を降らせた。叫び声一つあげず、一つの魔が消滅する。穢らわしく醜いドロドロとしたかつての生命体など、すべてこの聖なる水で清めてみせるゆえ。触れた途端、消え去る残骸に、満足そうに笑みを浮かべる。


「一人は残しておけよ!べらべらとしゃべくってくれそうな奴はな!?」


わかっておる!!雷雨の余裕ありげな声に、朗らかにさえ聞こえかねぬいらえを返す。

祠の隅では、身体を寄せ合い、がたがたと震える二人の兄妹。彼らを救うことが目的でも何でもない。今はただ、目の前の敵を倒すという久々の美酒の味に酔うてみたい。


一つ、また一つ。山の魔が消えてゆく。最後に残った妖しげな香も根元から絶つ。昴醒のすらりとした細くたおやかな指先から、噴霧のようなきらめかしい氷の粒が香を包み込む。やいなや、あの乾ききった餓えを呼び覚ます香りは失われていった。


残るは、大男ただ一人。じり、じりと水魔と金色の獅子族は間合いを詰めてゆく。


「う、うわあああ、た…助けてくれえ!!」


弱気なうめき声しか上げることもできぬその男は、尻もちをついたまま後ずさった。


「さあ、もうその後ろは堅き岩盤ゆえ。どうされるおつもりかな」


く、く、く。昴醒の瞳がこの上もなく妖艶に細められてゆく。

彼の前にすっと腕を差し出すと、雷雨は男に向かって刃を向け、低く問う。


「…<じ・ゅ・ん>という名を餌にさえすれば、かの王子の居所が掴める。生きて連れ帰れるのであればなおよし。叶わぬ時は遠慮せずとも斬り捨てよ…。これは誰の台詞だ」


聞きとうもない。おおよそ見当はついてはおる。昴醒は興味もなさげに視線を外す。本人も気づいてはおらぬのだろう。その心に、隣の強き獣界の王子への淡き憐憫が隠されていようとは。

ぐいと切っ先を男に差し出すと、奴はがたがたと震えだし精いっぱいの命乞いを始めた。


「どうぞこのような些末な小魔、お見逃しくださいまし。それがしはただの使い走り。すべては……様の命により」


「聞こえぬわっ!!誰の命かと俺は訊いたはずだ!?」


獅子の咆哮が辺りを響かせた。それほどの怒りを、彼は常に内包しているというのか。


「は、はい。それは…」


「それは誰だっ!?」


覚悟を決めたのか、男も叫ぶ。それは…それは。


みぞれ様でございますっ!!」


…獣界を統べる、特に金眼の種族と呼ばれる獅子族の長兄<霙>。彼が雷雨に執着していることは、本人が重々感じていることではあった。しかし、ここまでとは…手の元に置きたいのか、それともそこまで疎んじられているというのか。



一瞬、祠が揺れた。



怒りにあかせてすべてを破壊し尽くしそうに思われた雷雨は、そうっと腕を下ろし…剣を納めた。


「雷雨…」


昴醒のたおやかな眉がひそめられる。しばしの静寂。


「兄へと必ず伝えろ、下賎の者よ。俺は帰らん。まだその本義を叶えてはないのだからとな」


沈黙の中、薄曇りの靄が立ちこめ、倒れたはずの敵共々…男は消えた。

残された雷雨は肩を落とし、あの昴醒でさえ声を掛けるのがためらわれた。



が、しかし。

大きく息を吐きつつ髪飾りをむしり取ると、昴醒は何ともまあ馬鹿げたことよ、と吐き捨てた。


「おまえにはわからねえ」


「わかりとうもないわ。我の本懐は詢を捜し出すのみ。無駄足であったか。この借り、何倍もに大きゅうして返してもらおうぞ」


宝麗山の清らかな湧き水を、絹のような髪から滴らせ、昴醒はばさりとかき上げた。豊かなそのみぐしを身体にまとわりつかせる。


「何度でも踏んでやるさ、無駄足など。それで彼女を見いだせるのならな」


視線をそらせつつ、雷雨は独りごちた。その想いはどちらとて同じ。切なき思念が辺りを包む。



「あ、あの…」


すっかり忘れ去られていた人間どもは、おそるおそる言葉を発した。何しろここは切り立った山の腹。魔の者に忘れ去られては帰るに帰れぬ。


「連れ帰る者が一人増えたぞ。雲なんぞとケチらずに黒真珠でも出してやったらどうだ?」


なにゆえ、このような下等の者に我が至玉を出さぬと行かぬのか!?またもやくわっと口を開きかけた昴醒に、兄である月亮は身をすくめた。

しかし、妹は凍り付きそうな空気には意も介さず、平気で昴醒へとにじり寄った。


「な、何をそのように見ておるのだ!?礼は言うたはずだ!!そんなに喰われたいと申すのなら!?」


「美雨って言ったでしょ?へえ、お姉さんきれーな肌。若ーい。もしかしてアタシとそんなに変わんない?ねえねえお姉さんてさあ、どこのファンデーション使ってんの?」


「ふぁ、ふぁんでーしょん!?そ、それよりも何よりも、お、お、お姉さんと言うなあ!!」


見えぬようにと背中を向けた雷雨の肩が震えるのさえ、口惜しい。


「えーっ!?まさかすっぴん?日焼けはねえ、あとで来んのよ~?そんとき慌てても知らないんだから。今からの手入れが二十代を制する。わかってんの?お姉さん!!」


あわてふためく表情で月亮が美雨のボロ布の裾を必死に引くが、美雨は口調を改めるどころか昴醒にため口を利くのを止めはしない。


「助けてくれてありがたいとは思ってるけどぉ、結局アタシらってお姉さんに間違われたってだけよね?すんごい迷惑してたんだけどぉ」


「お、おい!!止めぬか、美雨!!」


兄の声はもはや悲鳴に近い。昴醒は連発されるお姉さんの単語に、頬を引きつらせている。


「ええい、もう我慢ならぬ!!おまえから喰ろうてやるわっ!!」


本気で噛みつかんばかりの昴醒を、雷雨が後ろから羽交い締めする。力は要らぬとは言え、笑いが止まらぬ震えのせいで、昴醒は散々暴れまくった。


「近頃のニンゲンの娘はみんなこうか!?このようなものか!?すべて滅ぼしてくれるわ、役立たずめが!!」


抱き止める雷雨が、それでも笑いをこらえて美雨へと告げた。


「その辺にしておけよ、ニンゲンの女。こやつはこう見えても最強の部類に入れてもおかしくはない水魔。それも男だ…こう見えても、な」


「おとこーーーっ!?」


素っ頓狂な美雨の声が、祠のみならず宝麗山に甲高く響く。

雷雨の腕を無理やり振りほどいた昴醒は、早く去ね!!顔も見とうないわっと叫ぶやいなや、顔の前で印を結ぶと彼の秘である黒真珠を出現させた。


「乗らぬなら、ここに置き去りしてくれるわ!!とっととその汚らしい足を載せい!!」


黒く美しく光り輝くその黒真珠は、生きた心地もせぬ人間の兄と物怖じもしない妹をも乗せ、天にふわりと浮かび上がった。



地の旅は続く。

わずかに浮かせた身体をすべらせつつ前をゆく昴醒に聞こえぬよう、雷雨はそっと先だっての顛末を昆虫界の兵へと語って聞かせていた。

抑えに抑えても忍び笑いは止まらぬ。もう一人の同行者である蜂族の緑黄など、はなから遠慮する気もなさげに声を上げた。


「なんだよ~置いてかれたと思ったらそんな面白い事があったのかよ~。特に昂醒の女装…プッ。お兄さんも見たかったなあ」


女装という言葉に、ぎろりと後ろを睨みつける昴醒。それに邪気のない笑顔を返すのは、もちろん緑黄だった。


「ねえねえ。もう一度お兄さんにも見せてくれない?その、じょ・そ・う!」


「ええい!!おまえなど消え失せてしまえ、虫けら!」


怒りに耐えかねた昴醒は、その指先から水矢を放つ。ひょいとかわした緑黄に、反対の手で後頭部を思い切りどつく。


ドコーン!!


「いってえええ!!」


自業自得だ!緑黄と昴醒の声が交差する。



「…女、か。詢ほどの誇り高い娘には、そうそう逢えるもんじゃねえということ、か」


何か言うたか!?怒り治まらぬ昴醒に、ふっと笑みを返すと、雷雨はわざと呑気そうに伸びをしながら大声を上げた。


「いや、何も言ってないぜ!?全く…今日も平和だなぁ」



世は全てこともなし。我らが願いよ、天に届け。

旅はまだ、その先も見えぬまま続くのであった。


            < 了 > 

時任炯&北川圭 Copyright© 2010 keikitagawa All Rights Reserved

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