第7話 少し違う日と、2日間の振り返り
春休み四日目。
湊は、昨日までの勢いのまま禅寺へ行こうと思っていた。
だが、朝起きた瞬間、ふと気が抜けたような感覚があった。
「……今日は、ちょっと違うことしようかな」
連日の“発見ラッシュ”で、頭の中が情報でいっぱいになっていた。
歩き回るのは楽しい。
でも、少しだけ日常に戻りたい気分だった。
湊は、地元の商店街へ向かった。
観光客が多い通りではなく、昔から地元の人が使っている小さな商店街だ。
八百屋の店主が声をかけてくる。
「お、相沢くん。春休みかい?」
「はい。ちょっと散歩してます」
「いいねぇ。鎌倉は歩くのが一番だよ」
何気ない会話。
だけど、昨日までの“歴史モード”とは違う温度が心地よかった。
商店街を抜けると、小さな公園がある。
ベンチに座り、湊は缶コーヒーを開けた。
春の風が頬を撫でる。
子どもたちの笑い声が聞こえる。
遠くで江ノ電のベルが鳴る。
「……なんか、こういうのもいいな」
湊はスマホを取り出し、写真フォルダを開いた。
八幡宮、段葛、国宝館の甲冑、刀の反り。
昨日までの“濃い時間”が一気に蘇る。
湊は深呼吸し、メモアプリを開いた。
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【春休み最初の2日間の振り返り】
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■ 一日目:八幡宮
・段葛の遠近法 → 都市計画の象徴
・石段の設計 → “中心”を強調
・八幡宮は“守りの装置”
・神職の言葉 → 視点が変わると歴史が変わる
■ 二日目:国宝館
・甲冑の細工 → 武士の美意識
・刀は“光”で見る → 写真では分からない
・武士は“総合職”
・装備は“生き方”を映す
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書き終えると、胸の奥がじんわりと熱くなった。
「……すごいな、鎌倉って」
湊は思わず笑った。
知っているつもりだった街が、
こんなにも深く、こんなにも面白い。
そして、ふと思う。
「こういう“振り返り”も、授業に使えるかもしれないな」
ただ歩くだけではなく、
“気づきを整理する時間”があることで、
学びが一気に深まる。
缶コーヒーを飲み干し、湊は立ち上がった。
「よし……明日は禅寺に行こう」
今日は“違う日”だった。
でも、そのおかげで、
湊の中の“学びの地図”が少し整理された気がした。
春休みは、まだまだ続く。




