表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ないたのは

作者: 平三線
掲載日:2025/10/28



空が泣いている

僕は下足場で夜のように暗い傘を手に取った


それが全ての始まりだった


ひとり空と睨めっこする人がいた

スカートの裾は少し濡れている

僕には見ない振りをする勇気がなかった

いつもより帰り道が長く感じた


放課後のチャイムが鳴っている

彼女はまたそこにいた

その横顔は美しかった

気が付けば手を振っていた


そんな日々を送っていたとき

街で彼女を見かけた

彼女は家族想いの良い子だ

父親と腕を組んで歩いている

僕はいつもの横顔に癒やされた


いま僕の鼓動は鳴っている

ようやく慣れてきた家路で

想いを伝えるだけだというのに


玄関のベルが鳴っている

扉の向こうには()()がいた

綺麗なバッグがとても似合っていた


見たことのない料理も

経験したことない遊びも

慣れっこだという彼女の横顔を

ずっと見ていたかった


気付かなかった訳じゃない

癒やされていたかった

愛していたかった


これから人を尾けるというのに

頭の中は空だった

ただ一つ確かなことを除いては

何も怖くはなかった



風が鳴いている

僕は昼のように明るいホテル街へと足を運んだ



あの薄紅色の唇のように

妖艶な建物から

紙切れの束を数えながら彼女が出てきた

僕には見ない振りをする勇気があった


彼女は鳴いていたのだろうか

濡れていたのだろうか───


玄関のベルが鳴っている


この女の心は凪いでいる


僕は、動けないでいる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ