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子どもたちの未来に、票を。 ――炎上議員、保育現場で学び直す  作者: 小田原 純


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第11話 子どもたちからもらった笑顔の種

怒涛の選挙戦から数か月――。

新しい拠点は今は机と椅子だけのシンプルな部屋である。

しかし、壁に貼られた子どもたちからの絵や手紙が見た目も俺の心にも彩りをくれた。


入口に、小さな木製の看板を掲げる。

温かみのある文字で――

『特定非営利活動法人 スマイルシード』


雲一つないすがすがしい空が、俺の新たなスタートを後押ししてくれているように感じた。

「よし!ここからだ!」

深呼吸して気合を入れる。


この『スマイルシード』という名前は、保育園の子どもたちと一緒に考えた大切なものだ。

落選して新たな決意をしてすぐだった。

俺は結果報告とお礼のためという建前はあったが、早く子どもたちに会いたくてすぐに保育園に向かった―――。


「外部の人は許可証がないと入れませんよ…なんてな。お疲れ様、たいが先生」

真凛先生が冗談まじりに笑顔で迎えてくれた。

税金泥棒って悪態をつかれていたのが遠い昔のような変わりようだ。


俺の来園に気づいて安西園長、子どもたちも迎えに来てくれた。

「選挙お疲れ様。ここに再就職するならポジション作るわよ」

とても嬉しい言葉だ。前は本当に人がいなくて猫の手でも欲しいて状態だったけど、どうやら休職していた先生が戻るらしいから冗談だろう。

続いてれおくん。

「たいが先生、今無職なんだろ。そんな危うい状態で真凛先生にはプロポーズするなよ」

恋敵というより、発言が真凛先生のお父さんみたいだ。


「選挙演説とテレビ出演で人前で話す経験積めたでしょ?新作の『ニート、議員になる』の主役に大抜擢してあげる」

鬼監督あかりちゃんの脚本ジャンルの幅広さはすごいな。


「まあ前回の選挙の与党は元々組織が大きいですから、数年後にはネクスト日本党もじわじわと議席を取れますよ」

なおとくんは本当に5歳児か疑いたくなるような、ワイドショーの評論家の見解みたいだ。


キャラの立った発言に、ツッコミを入れるのも忘れて感傷に浸っていた。

ここはすっかり俺にとって安心できる場所になっている。


「みんな、本当にありがとう。選挙後のメッセージとビデオレター、あれがあったからまた立ち上がる勇気が出たんだ」

俺は胸の内を打ち明けた。

「……それで、NPO法人を立ち上げることにしました。母にも知恵を借りながらですが、子どもや家族、保育士を支える活動をしていきます」


安西園長がぱっと目を輝かせ、拍手した。

「素敵だわ!私たちにもできることがあればぜひ協力させて」

真凛先生も優しくうなずき、こう言ってくれた。

「たいが先生ならできるよ。困難にぶつかっても立ち上がって行動できる人だから」

その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなった。


「ありがとうございます!ただ……活動の方向性は考えているんですが、肝心の法人名が思いつかなくて…」

ぽつりとつぶやくと、れおくんが挙手してみんなに提案した。

「それなら俺たちでアイディアを出していこう。俺たち子どもの味方になるものだもんな」

いいよな、みんなと語りかけていくと、他の子どもたちからも「いいね」「考えよう」と声が増えていった。


「うん…それすごくいい!みんなで作り上げる名前にしたい。お願いします!」


すごくいい。子どもたちのための活動にするなら子どもたちの意見が一番しっくりくるだろう。


「映画みたいに未来がキラキラする名前がいい、その名も『あかり』!」

「個人名はダメだろ。『かわいい花たちへ!』みんな素敵な花たちだからな」

わいわいと盛り上がるあかりちゃんとれおくん。


そんな中、なおとくんがつぶやいた。

「子どもだけでなく、子どもに関わる大人も笑顔になる活動…たいが先生がしてくれると思う…」

なおとくんの言葉に俺は魂が揺さぶられたのを感じた。

そうだ、子どもの笑顔は家族と保育士を始め、周りの大人も笑顔にできるとびきりの魔法なんだ。


さらに、りくくんが続ける。

「れおの花が咲くっていうので思ったんだけど、たいが先生が種をまいているイメージがある」


「いいね!笑顔がスマイルで、種はシード…スマイルシード!」


他のアイディアが出ることなく、全員が「スマイルシードすごくいい!」と盛り上がった。

スマイルシードが出る過程で話してくれた「笑顔にする」「種をまいているみたい」という言葉もとても嬉しかった。俺の行動はみんなを笑顔にできていたと言葉にしてもらえると、ここでの時間がより尊いものに昇華したようだ。

みんなが決めてくれた『スマイルシード』の言葉に見合った活動をしていこうと、軸も定まった。

「俺ここに来て本当に良かった…ありがとう。スマイルシードを全国各地に蒔いてくるね」

また俺は無意識のうちに涙を流していたらしい。

真凛先生がスッとハンカチを出してくれた。その優しさも胸に染みた。


――現在。


看板の「スマイルシード」を見つめながら、俺はあの日の光景を思い返す。

子どもたちが蒔いてくれた種。俺が育てていく番だ。


机の上には動画撮影用の簡易カメラとマイク。SNS発信用の準備は整っている。

「政治家じゃなくても、俺だからできることがある。ここからだ」


外に出て、スマホを構えた。

「みんな、こんにちは!大我です。今日はスマイルシードの最初の一歩を配信します」


配信ボタンを押す。

画面の向こうで、最初のコメントが一つ、また一つ流れ始めた。

「応援してます!」「待ってました!」


まだ見ぬ子育て世代、支援を待つ人々――その声が、今、確かに届いた。

物語は新たなステージへ進む。

次のお話で大我の物語は完結です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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