第四十六話『手出し』
背伸びをして、VR空間の中で眠ってしまっていたみたい……現実に戻ると……夜だし……
「仕方が無い」
ログインしてフラフラする事にした。と言っても見るだけのつもりだけど……
「スライムもかよ……」
スライムも姉の方に行ってしまったからなのか完全に一人。で、目の前で飲み物を飲み目を伏せていた少女……
「……少し二人きりの方が良いから」
白銀の少女がそう言って目を開ける
「……私はアヤメ。デメリットの睡眠はどうだった?」
……
「今は大丈夫。で、二人きりで何がしたい?。兄の事は良いのか?」
彼女は飲み物を飲み干すと
「……付き合って。攻略したいクエストがあるから」
そう言うと歩いていく。慌てて彼女の後を追う。暫く歩くと荒廃した廃村で
「……私は神様よ」
彼女が突然そう言う。流石に何を言い出すのかと思えば……俺から見ればただ妄言だと……そう思った
けど……
彼女は俺の方見て
「……妄言じゃないよ」
そう言うと彼女の目が獣の眼となり、四枚の翼が広がるとロングコートとなり、白と黒のワンピース、角が生えて、長めの二本の尻尾を生やしていた
そして、彼女の目が更に開いていて四つとなっていて
「……この世界じゃない神……君と同じ神様が私に宿ってる。と言ってもこの世界でもある神」
……
「なるほど。で、どうしたい?」
俺が聞くと
「……この廃村を復興したい。それだけ。準備も終わらせてる
兄は多分別だけど、私はただこの世界のオアシスを作ってみたい
それだけ」
……
「意外とマトモな思想なんだな。それ自体は構わないが……かと言ってどうするんだ?
そもそもとして住人は?
俺や姉……君や君の兄とかは?
問題は多いぞ?」
彼女は頷いていた
「……この世界の設定を覆したい。人間が殺す魔物。その魔物の無害とか、魔物が人間に手を取る。そんな場所を
色々と調べて考えた。獣人となった元人間……それから増やしてただ一つの村を作りたいと思ってる
問題の二つは今日やるつもり
その為に協力して欲しい」
……
「この世界の設定自体見てないからどうこう言えないし、そもそも俺はVRゲーム自体姉の影響だしな
やるからには手を離さないつもりだし、何よりも俺の目的を考えたら必要だしな」
イリアスの遺したモノを見てからそう答えた
「それは……」
彼女が聞いてきて
「俺の目的。で、目的二つはどうするんだ?。流石に……」
彼女は指をさして
「……この村に潜む魔物を処理するのと、私達が住む為の場所と社を立て直す事
君にお願いしたいのは……魔物の討伐を」
だろうなと思ったし、取り敢えずは指を鳴らすと空から剣状の刀が地面に突き刺さる
手に取ってから廃村の中へと入るのと同時に黒い氷の壁が背後で振り返ると彼女……アヤメは俺を見てるだけだった
「……まぁ、後で聞く方がいいか」
何を考えてるのかは分からないが……取り敢えずは進む事にした
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信用してない。する訳ない……
だって、人間は信じられない生き物。私はそう思ってる。ただ目の前の彼は分からなかった
だから試す……
あの話なんてアリもしない。獣人もただの獣。化け物に変わりない
「……さっきから誰?。ずっと見てる人」
私は振り返る。そこにはさっきまで立ってなかった人……女性が立っていた
白銀が濁った髪色をした女性……警戒してる氷の剣を手にして警戒してると
「君もこっち側とはね。アハハ。本当に面白い」
……
「……別に。ただお前は私の敵だよ」
構えると女性は目を見開いていたけど笑って
「挨拶よ。私……彼奴に恨みがありますからね。どうですか?。仲間になりませんか?」
手を伸ばしてくるが、私は目を伏せて氷に手を触れると氷から無数の槍が生成され一気に射出される
それを女性が全て破壊すると私の前まで来て手を氷の壁に当てて顔を近づけて
「壊したくなる。でもそれじゃ、面白くない。ようやく彼奴の為にこの姿になったんだから」
私は足で蹴りを入れるが、女性はただ防ぎ、そのまま私の足を……
「あがっ……っ!?!」
そのまま折って思いっきり殴られる。意識が遠のいていく。こんなにも……私は……
弱かった……
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嫌な予感した。進んだのは良いけど……やっぱり引き返す事にした
彼女の思い……何を考えてるのかを聞きたかったから。それに村を作るにしても何もしてないのが可笑しい……
その上で魔物の存在すら気配が感じない。だから真意を聞きたかった
「……お前誰だ?」
氷の壁が無くなっていて、彼女を踏みつける女性を見た。剣を逆手に持ち思いっきりなげつけながら言う
「やぁ、久しぶりだね……お前を始末することにしたからな。厄介この上ない存在だからな」
俺はこの女性を知らない。真白に似てるが違うのは歴然……
「お前……何で真白の姿なんだ……!?」
そのまま、意識を失ってるアヤメの傍から引き剥がして、攻撃を仕掛けながら距離を無理矢理遠ざかせる
そのまま弾いて、指を鳴らすのと同時に無数のレーザーが女性を直撃していた
俺はアヤメを庇う形で手で防ぎながら土煙が晴れるのを待つ。やがて土煙が晴れると無傷の女性
「ひっどいなぁ……と言っても、分からないだろうしな。リチャード……そういえば分かるだろ?」
……
「お前……何をした……?」
俺が聞くと笑い出して
「何も……分からないのか?。俺はお前と同じ能力を持ってるんだぞ?。簡単な話……真白と同じでお前と同じ、人を捨てた」
……は?
「何を……?」
そのまま、魔法陣が展開されると一気に無数の何かが飛び出し向かってくるのを剣で弾き捌いていく
「分かってるだろ?」
そう言うと何かを送ってきて確認したのと同時に俺は目を見開いて、そのまま攻撃を仕掛けたが
躱され、そのまま何かが俺の体に無数に突き刺さる。血を吐きながら女性……リチャードを見て
「お前……本気なのか?
違うな……お前は初めからその気だったのかよ……
初めから世界を壊す為に……!」
引き抜きながら、リチャードを見て
「あぁ、世界を変える為にこのゲームを見せしめに……全てを破壊する
その後で……人間を全て殺し俺だけの世界にする」
そこまで……妹からそこまでの思想に……どうなってんだ?
「止めたければ来いよ。ただ俺はお前を殺す事に変わりない。何せ……お前は俺の目的に邪魔だからな」
……
「クソ……お前の思想……狂ってる……」
リチャードを睨みつけると
「アハハ。そうだその目だ。お前はもう俺を止められない。俺は全てを壊すのだからな!」
そのまま魔法陣が展開されると爆発し、アヤメを庇った。暫くして落ち着くと女性……リチャードは消えていて、俺はその場で倒れ込む
「……」
連絡を入れたのと同時に意識が落ちてしまう
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ゆっくりと目を開けた。アヤメの膝に頭を乗せて……
「お前……どういうつもりだ?」
彼女から離れようとすると押さえつけられ
「……信用してなかっただけ。まぁ、今は別」
はぁ……?
「……うっすらだけど……聞いていただけ。大丈夫なの?」
俺は彼女を見てから
「分からん。分かるのは……手に負えないかもしれない事だな。強くならないとダメかもしれん」
となると……そろそろ手を出すかな……
「……協力する。興味湧いたし……私もやられぱなしは気に入らないから」
……負けず嫌いかよ




