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カレンダーのバツ印

作者: 青木りよこ

十二月のカレンダーにはバツ印が十五個。

恐ろしい、チャンスはもう五回しかない。

あんなに沢山あったはずなのに。

今年の目標、綾瀬君に告白するができていない。

それどころか、話しかけてすらいない。

ピラミッドの頂点と底辺だから仕方ないけど、きっと去年から同じクラスなのに認識すらされてないんだろうな。

とても悲しい。

終業式の日なら告白して振られても、冬休みの二週間で傷は癒えるのではと思っていたけれど、それ以前の問題だ。

そもそも近づけない、麗しすぎて、申し訳なくなる。

綾瀬君顔が良すぎる。

足が長すぎる。

声まで素晴らしい。

人類の宝。


こんな完璧な宝石男子に告白とか烏滸がましすぎる、一介の地味女子が。

せめて私に財力があれば札束で殴って連れてこれるのに。

誰でもいいから私に一億振り込んでくれないかな。

でもやる、やるわ、私。

お年玉とおこずかいとバイトで貯めた百万円。

これが私の切り札。


「綾瀬君、百万円あげるから私と一週間でいいから付き合って」


これ図々しいな、一週間も拘束するとか失礼すぎる。

一日でいいから付き合ってだな。

一日、たった一日でいいから綾瀬君のご尊顔を一番近くで見れたら、もう私死んでもいいな。

うん、パパとママには悪いけど、このままずっと生きていてもきっとそんなに幸せな事なんてないだろうし、だったら綾瀬君の顔を見ていたいな、一日中。

あらゆる角度から眺めたい、あの造形美を、移り行く輝きを、余すことなく見たい。

許されるなら映像として残したいです。

誰かDVDにして下され。


あー、言えない、明日もきっと言えないんだろうな。

情けなく、明日もカレンダーにバツを付けている自分が容易に想像できる。



と、思っていましたがチャンスは意外にも転がっていまして、何故か今教室に二人きりです。


「今井さんも忘れ物?」


「私のこと知ってるんですか?」


「え?うん。今井さん」


「はい、今井です」


「去年も同じクラスだったよ。憶えてない?」


「憶えています」


「帰らないの?」


「綾瀬君」


「何?」


「綾瀬君とお付き合いするにはいくら必要ですか?」


「え?」


「いくら出したら綾瀬君と付き合えますか?」


「お金ってこと?」


「はい」


「お金なんてくれなくても好きだと言って貰えたら付き合うよ」


「は?」


「だって、好きだって言うの難しくない?言うだけで勇気いるでしょ。俺言えそうにないもん」


「好きです。ずっと世界で一番大好きです」









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