10話 覚醒した諸刃の力
【ティナたちは京都を出て滋賀に入ろうとしていた。その間に滋賀では民兵が着々と動員していた。】
「俺はなるべく戦いの時まで体力を回復しておく。どれくらいの兵が集まった?」
「はっ!大体いまわかっているだけで50万人です。」
「50万か…。あいつらは確か見たところ11人、いや12人ぐらいか。力が使えるとはいえこれだけの勢力を前にまともに戦うことはできないだろう。俺の前に現れる頃には死体だな。」
「しかし京都から滋賀に向かうルートに配置していた、民兵が既に全滅しております。あそこでも1000人近い兵がいたはずです。」
「なるほど。1000人程度ではあいつらの進行は止められないってことか。まぁいい。1人でも多く倒せ。ティナと俺にこの変なものをかけたやつは俺の手で殺してやる。名古屋には行かせん。」
「それからもうひとつ。滋賀でも抵抗している民衆が何か所かにいると報告を受けています。」
「馬鹿な奴らだ。国の力に抗ってるやつがまだ他にもいたとはな。そっちにも兵を回せ。反逆者は1人残らず駆逐しろ。」
「それではすぐに各地に兵を向かわせます。」
-その頃ティナ率いるtearsは…
「みんな大丈夫?」
「まだ全然体は動くが、次から次へと敵がでてきてまったく先に進めないな。」
「恐らく俺たちの進行をなんとしても止めたいやつがいるみたいだな。滋賀の民兵たちがどんどん襲ってきやがる。」
「ティナちゃん私の治癒もだんだん弱まってきてる。ちょっと休みたい。」
「わかった。レン、ダイキ。ヒマリの援護を。私たちで前にいるやつらを対処していこう。」
「よし、任せろ。」
数が多すぎて私たちの体力はどんどん削られていった。
「まだ入り口付近だっていうのに、こんなに消耗するとはな。」
「はぁはぁ…。」
「私もちょっときつい。何か策があれば…。」
(ここは私がなるべく多く相手にしてみんなの負担を減らさないと。)
そして 私は何かに気付いたようにウルハに言った。
「ウルハ。私の能力を更に引き出すことって出来る?」
「え?そんなのやったことがない…。」
(私は突然、何を言ってるのか自分でもわからなかった。でもウルハには何故かそれが出来ると思ってしまった。)
「私は人の感情、精神力をコントロールすることは出来るけど…。」
「それだ。私の中の精神力をコントロールして高めてほしい。」
「わかった。やってみる。」
「私もお願いできる?」
「ミナ?」
「私も力が欲しい。今のままでは駄目なのは私も一緒だから。ウルハ私の精神力も引き出して。」
「... わかった。やってみる。」
私はミナの顔を見つめ頷いた。
ミナも返すように頷いた。
「じゃあ目をつむって。」
私たちは目をつむった。
すると血流が湧き上がってきた。
心拍も上がり、動悸がする。
( 体から何かが満ち溢れてくる。私の中の何かが目覚めるこの感じ...。)
ミナもまた同じ感覚を体感していた。
(体が熱い。まるで炎天下の砂漠に立っているみたい。それより湧き上がってくるこの不思議な力は一体。)
私たちは湯気のようなものが噴き出し、風圧を放った。
「おい、ティナ!ミナ!大丈夫なのか?!」
「すごい...。ティナとミナに煙のようなものが見える。 あれが本来の力?」
(すごい...。なんて力なの...。今にも吹き飛びそう。 立ってるのがやっと。)
その時 一瞬光り輝きゆっくりと光はティナとミナの中に戻っていった。
「ティナ。ミナ。引き出せたよ。目を開けていいよ。」
私たちはそーっと目を開いた。
特に代わり映えはしていない。でも確かに力が湧き上がってくる感覚はある。
けれど確かにさっき感じていた疲労などが一気に吹き飛んだ気がした。
「この力が溢れてくる感じ。ミナ私たちの力を出してみよう。」
「ええ。ティナ。いこう。」
「よし俺たちも後に続くぞ!」
ティナが動きが前とは比べものにならないぐらい早かった。
「おい、あの動きって...。」
「ああ、俺のスピードとは比べものにならない。瞬間移動だあれは。」
そしてミナもまたティナに続く。
ミナは手に炎を纏った。それを植え付けたかのように兵は一斉に燃えだした。
「あれがティナとミナの能力。」
「ティナとミナの闘志が生み出した力。あの状態の2人なら1万人いようが10万人いようが敵ではない。私は2人に触れたときは精神力の限界を感じなかった。」
「限界を感じないって無限ってことか?」
「そう。あの力を維持できているのは2人の絆の強さでもある。」
(けれどそれは即ち諸刃の刃でもある。一気にあれだけ放出するということは当然、体の蓄積ダメージも半端ではない。長期的に使っていい能力ではない。)
「俺たちも続こう。あれだけの戦いを見せられたら負けてられない。 なんだか俺も闘志が湧いて来たぜ。」
「私も。戦闘はまだ慣れないけど、ティナちゃんの役に立たないと。」
「ああ。俺も全力で行く。ヒマリ、ティナとミナを治癒するために体力は残しておけよ。」
次から次へと送り込まれてくる兵をなぎ倒し激しい戦闘が繰り広げられた。
そして戦いに区切りがついた。どれくらいの血が流れどれくらいの兵が死んだのかもわからない。
まだ残っている兵は完全に戦意喪失していた。それでも攻撃を仕掛けるティナたち。
その時だった。
「俺たちの負けだ!降参する!」
「俺もだ!」
私たちは攻撃を止めた。罠かもしれないと疑いを持ちながらも武器を下におろした。
そう今まで戦ってきて白旗を上げる民兵をはじめてみた。
「それでこれからどうする?戦争は勝つか負けるか。負けたならそっちの方針では生きて帰れないんじゃないの?」
「俺たちはそっちに付く。俺たちも戦わせてくれ。」
「俺もだ。こんな戦い間違っている。元は同じ国の仲間同士で争い合うのはおかしい!」
「そうだ!国が全部悪いんだ。俺も連れて行ってくれ。そして組織のやつらと戦ってやる。」
(私たちには大勢の仲間が必要だ。ただ殺し合いがしたいわけではない。国を止めるのが本題の目的。 私たちと同じ意思があるなら協力するべき。)
「わかった。私たちと来い。」
見渡す限り3000人近くの勢力。 本当は従いたくないけど家族の為 恋人の為 友人の為 いろんな理由があって国に従っていた人たちもいる。 本当の気持ちは私と一緒なんだ。
「私たちはtears。共に武器を持ち共に命を賭けて国に対抗しよう。」
「おーー!!」
みんな銃を掲げ、肩につけていた、国のワッペンを外した。そして落ちていた旗に【tears】と書き大きく振った。
「ティナ、ミナ大丈夫か?あれだけの力を使ったんだ。何か影響はないか?」
「大丈夫。ちょっと体が重いって感覚はあるけどすぐ慣れると思う。」
「それよりミナは大丈夫?」
「私も大丈夫。でも手を火傷しちゃった。」
「ミナちゃん!すぐ治療するね。」
「ありがとうヒマリ。」
「ティナ、俺のカラスでこの先の様子を偵察させとくよ。」
「うん。よろしく。」
みんなの様子を私は休みながら見渡した。
武器の手入れをするもの睡眠を取るもの銃の使い方を学ぶもの。いろいろだった。
「ティナ飯だ。少しでも腹に入れとけ。」
「ありがとう。レン。」
「仲間が一気にこんなに増えるとは思わなかったな。それも戦える人間がこんなにいれば勝気も現実的になってくるってもんだ。」
「そうだね。その分犠牲も大きくなるということ。私たちみたいな力があるやつが現れた時、間違いなく何もできずに殺される。」
「確かにそうだな。でもあいつらが選んだ選択だ。お前がどうのこうの言っても俺たちは止まらないからな。tearsの為に今は戦っているんだから。」
「うん。私だってそうだよ。ちょっと不安になっただけ。大丈夫。すぐ切り替えるから。」
「おう。飯でも食って少し休めよ。起きたら進行だ。」
「うん。」
(私は強がっていたけどさっきの力はすごく負担がでかい。今持っているご飯の器でさえも落としそうになるぐらい力が入らない。足もなんとか動くって感じだ。)
(私の不安はこれなんだ。次もあの人数が現れたら間違いなく足手まといになるだろう。無茶は出来る。出来るけど体が持つかどうか。ヒマリには治療してもらったのに治っていない。)
(なんとか少し休んで戦える状態にもっていかないと…。)
その頃、みんなから離れた所にミナは休んでいた。
「痛い…手が痛い…。ヒマリの治療で見た目は治っても痛みが消えない。腕を切り落としたいぐらい痛い。」
「このままだ次は戦えない。ティナは何故あんなに平気なの?もしかして私だけ足手まといになってる…?力になりたい。この力をリスクなしで使いこなしたい。」
(後一回使ったら私はどうなるんだろう。もう使うのが怖い。でもあの力がないと私はみんなと同じように戦えない。お願い。痛みだけでも治まって…。)
「ティナの様子はどうだった?ああ。ちょっといろいろ考えているみたいだが、ティナなら大丈夫そうだ。」
「いや、違う体の方だ。あれだけの力だ。体の負担もすごいはずだ。」
「そんなきつそうには感じられなかったぜ。ヒマリの治癒力が効いてるんだと思う。」
「そうか。それならいいんだが。俺らも少し休もう。」
(私の治癒力でティナちゃんとミナちゃんを治療した時何故か手応えを感じられなかった。特にミナちゃん火傷は治ったけど顔が少し辛そうだった。私の思い違いならいいけど。)
その頃-
「報告します。大津の民兵全滅、応援に行った1万の兵もほとんど壊滅。偵察班の話では3000人弱が向こうに白旗を上げたとのことです。」
「1万にもいてたった数人に負けるとはどうなってんだ!」
「いえ、それがあのティナとか言う女と国のトップが重要視していた女がほとんどやったそうです。」
「やはりまたあの女か。そしてその国が重要視していたその女も寝返っていたとはどうなってんだ一体。 もっと兵を総員して竜王で始末しろ。10万だ。10万の兵を送り込め」
「はっ!」
(俺が戦ったときティナはほとんど力を使っている様子はなかった。それで1万の兵を相手にしてたのか?それとも何か隠していたのか?どっちにしても奴を一番先に始末するのが先決だ。)
(俺が出る幕もない。あいつらは10万という数の暴力で終わりだ。せいぜい短い旅路を楽しむんだな。)
夜が明けようとしていた。
ティナたちは少し眠っていた。警戒は怠らず敵が攻めてきたらすぐに起きて戦えるように。
そして光の視界に入ったと同時に目が覚めた。
私は背伸びをした。周りを見渡せばみんな武器の準備、食料を積み支度を始めていた。
「ティナ、体は万全か?」
「うん。もう大丈夫。それよりミナは?」
「1人になりたいって向こうの方で休んでるよ。もうすぐしたら来ると思うからミナが来たら行こう。」
「…。わかった。」
ミナは痛みと戦っていた。
「だめだ。痛くて全く眠れなかった。」
「なるべく力を出さずに戦えば問題ないはず。まだ拳は握れる。これならいける。」
「みんなの元にいかなくちゃ。」
ミナは深呼吸していつも通りの顔でみんなの元に戻った。
「ティナ。この先には敵の動きはなかった。」
「俺からも情報がある。昨日近くを調査していたら数人の民兵が話しているのを聞いた。極秘な内容なのか心を読まないとわからなかった。その内容は竜王に招集がかかったということだ。やつらはこの一帯での戦いは完全に捨てて竜王で俺たちを待ち受けるつもりだ。」
「数も相当なものだと考えた方がいいな。」
「問題ない。私も力を手に入れたから、もう遅れは取らない。」
「私も。あの力でみんなの力になる。」
ウルハがティナとミナを見渡した。
『…。無理している。ティナは絶対に回復していないし、ミナは特に同じようには戦えないと思う。』
「あなたもそう思うでしょ?心読めるんだから。」
ウルハはトオルを見て言った。
「わかってても言ってはいけない時ってあるんだよ。俺たちはそれぐらいの覚悟で戦ってる。生きるか死ぬかの戦いだ。言って戦いを辞めるやつでもない。かと言って辞めたらもう死んだのと変わらない。だったらわかっていても言う必要ないし、ティナたちが隠したいってことを尊重するべきだ。」
「そう。それなら私も何も言わない。でもティナを失うのだけは嫌。だから万が一の時は止めるから。」
「ああ。それは俺だって同じだ。」
「イオリ、ウルハ行くよ。」
「ああ。すまん。よし気合入れていくぞ。」
こうして私たちは竜王に向けて進行した。後方ではtearsの旗を掲げていたまるで『tears』という国があり、国と国が戦っているような気持になった。そう、負けられない戦いなんだ。この『tears』の旗には沢山の命と成すべき目標が詰まっている。だからこそ絶対負けられない。
次なる戦場に向けて歩き出す。
【ティナ率いる『tears』は大津での戦いに勝利した。進行する姿はまさに小さな国が大きな国に戦いを挑むような光景だった。ティナの体とミナの体はまだ全く癒えていなかった。それに気づいていたのは能力の開放に協力したウルハだけだったがそんな状態でも前に進もうとする2人の姿を見て、触れられずにいた。また心を読めるトオルも気づいていた。それをあえて問わないイオリはティナの気持ちを思っての事だった。それでも『tears』は止まることなく竜王に向かった。】




