第十六話「想いを繋ぐ告白」3
ピアノコンクールが終わり、隆ちゃんは一緒にウィーンで暮らすことを私に提案した。
でも……私は嬉しい気持ちはあるものの、迷いがあってその誘いに即答できなかった。
隆ちゃんと一緒にいると身体の調子も良いし、ヨーロッパに暮らすことへの憧れもあった。
だけど、私には考える時間が必要だった。だから、申し訳ない気持ちもあったけど、隆ちゃんには結論が出るまで待ってもらうことにした。
そして、季節は流れ、夏休みになった頃、私は隆ちゃんを誘い、二人で被災地でもある懐かしい思い出の詰まった故郷の町を目指した。
バスを乗り継ぎ、故郷である海辺の町に辿り着いた私たちは佐藤家を訪れた。
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―――知枝のナレーションで始まる、まだ原作を知るものでなければ知らない先の展開。ここから何が待ち受けるのか、観客が見逃さないようじっと見守る中、二人のやり取りが始まった。
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晶子
”今日のためにビデオレターを撮ってきたの。この前の答えをちゃんと自分で考えたの、だから聞いてください、一階で観終わるのを待ってます”
二階にある懐かしいピアノと対面した後で、私は筆談ボードに書いたメッセージを見せて、ビデオレターの録画が入っているタブレット端末を隆ちゃんに手渡した。
隆ちゃんがタブレット端末を受け取って頷くのを確認すると、私は覚悟を決めて席を立った、後は彼を信じて待つだけだった。
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浩二が観客席から見て右側の舞台上に一人残り真剣な表情でタブレット端末を見つめる。
役者として舞台に立つことは少ないが、演技力は想像以上に達者で将来は劇団に所属することを胸の奥にしまっているだけあり、脚本や演出は勿論、役者として演じることにも真剣だった。
舞台の左側には照明が切られた状態で、ビデオレターで一緒に登場する制服姿の神楽と知枝が映っている。
ビデオレターが再生された瞬間、照明が点灯し二人のやり取りが始まる仕掛けだった。
演出を考えたのはもちろん浩二で、タイミングもリハーサルの際に確認し合っていた。
結果的にそれで本舞台中の知枝の着替え回数はさらに増えることとなったが、緻密に打ち合わせを繰り返した結果、衣装担当も熱意を受け協力を受け入れて用意してくれた。
衣装担当いわく、知枝の身長がもう少しあれば、わざわざ取り寄せなくてもどうにかなったのにとのこと。普段から身長が低いことを気にする知枝には浩二はそのことを言えなかったが、その分余計に浩二は揃えてくれた衣装担当に感謝をしたという経緯があった。




