第十五話「震災のピアニスト再演」4
オーストリアのウィーンで家族と暮らす僕は日本で発生した大震災のニュースを知り、家に帰ってから急いで晶ちゃんが無事かどうか調べた。
晶ちゃんとは四年前の小学校卒業以来会えていないが、本当のところはずっと気になっていた。
この遠方からでもリアルタイムで情報は更新されているが、日本国内では混乱は続いているようで、震災からしばらく経過しても脱水や電気の通っていない地域もあり、原子力発電所の事故もあり混乱は続いている。
僕は親しかった式見先生から彼女のいる病院の場所を知り、急遽急いで晶ちゃんの元へと向かうため、ウィーン国際空港から飛行機に乗って日本へと向かった。
——————早く無事を確認をこの目で確かめたい、はやる気持ちの中で入院しているという病院に僕は入った。
四年ぶりに晶ちゃんに会えるというドキドキと緊張で病院の中に入っても落ち着かないまま病室の方へと向かう。
何を最初に話そうか、シミュレーションは何度も頭の中でしてきたがなかなか緊張のあまり定まらない。
でも、まずは無事でいてほしいという願いを一番に病室の前の表札に四方晶子と表記されているのを瞬きをしながら僕は確認した。
扉に手を伸ばし、手汗が止まらない緊張の中、会いに行く覚悟を決めると、僕はゆっくりと病室に入った。
*
「浩二君お待たせ!!」
収録された浩二のナレーションが観客に向けて流されている中、早着替えを済ませて、モノローグの途中で知枝は慌てた様子でやってきて浩二の隣に立った。
「そんなに慌てるなって、大丈夫だからさ」
「うん……そうだよね、ちゃんとリハもして、慌てなくても間に合うよう取り組んでたもんね」
ハイテンションな知枝の慌て方は、単純に急いでいたことだけではなかった。
ずっと気になっていた片想いをしている相手との演技が始まる、そのことで気持ちを落ち着かせるのに必死だったのだ。
一方で浩二も知枝のことを好きになってしまった事もあり、知枝を目の前にすると思わず浮ついた気持ちが沸きあがり、にやけてしまいそうになるのを精一杯堪えていた。
「よろしく、浩二君。こんなに早く一緒に舞台に立つ日が来るなんてねっ!」
「なんだよ、これから本番だぞ。感傷に浸ってる場合じゃないってのっ!」
「うん、そうだねそうだねそうだねっ! 私、浩二君の足引っ張らないように最後まで頑張るから」
声が出せない晶子を演じるには細かい仕草による演技が求められるので、知枝は何度も繰り返し浩二と一緒に稽古を繰り返してきた。
そんな思い出も、感情の高ぶりとなって今の知枝を形作っている。
「おう、ゴールデンウイークの時も十分出来てたから、その時の気持ちを大切にな」
経験豊富な浩二の言葉に勇気づけられ知枝は頷いた。
そして、モノローグが終わり、舞台に立つ二人の再会シーンがいよいよ始まった。




