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魔法使いと繋がる世界EP3~Clover destiny & World end archive~  作者: shiori


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第十五話「震災のピアニスト再演」2

 修学旅行三日目、演劇クラスの主要メンバーはリハーサルに追われることとなった。

 

 そして、ギリギリまで続いたリハーサルが終わった頃、演劇クラス以外の生徒も続々と最後の宿泊となる旅館への帰還を済ませ、旅館は賑やかになっていった。

 

 夕食が終わって演劇クラスの一同は総出でセットの確認に入り、グランドピアノもすぐに舞台上に持ち出せるように舞台裏に設置された。


「……なんだか心臓に悪いわね、本当にこれから始まるのかと思うと」


 羽月は着替えを済ませて来た浩二の衣装チェックをしながら呟いた。

 手先が器用な羽月でも問題はなかったが、衣装担当の生徒は皆、知枝のところに行っていて、浩二の方は早々に着替えを済ませて舞台袖に入っていた。


「そんなに心配か?」


 浩二は周りを安心させるために落ち着いていて緊張している様を見せなかった。

 どちらかというと出番のほとんどない羽月の方が落ち着かない様子を見せているほどだった。


「当たり前でしょ……あなたのせいよ……追加のシーンを加えた脚本と一緒にあんなこと言われたら……」


 修学旅行先まで持って来る小道具や衣装など、それらをまとめ、様々な打ち合わせをするだけでも羽月は大変だっただけに、浩二のせいで仕事が増えたのは事実だった。


 それに加えイレギュラーな告白まで計画していることを知り、羽月はまともに最後まで知枝と浩二が演技を続け、舞台を閉幕させカーテンコールまで迎えられるか心配でならなかった。


「それは悪かったな……でも羽月が告られるわけじゃないだろ……」


「そういうことじゃなくって、稗田さんの気持ちとか、唯花さんの気持ちとか、会場の騒然具合とか、この舞台最後はどうなっちゃうのとか、色々考えてたら、意識が飛びそうなくらい怖いでしょうよ」


「レクリエーションなんだから……修学旅行の締めとして盛大にやって、気軽に楽しんでもらうのでいいんじゃないか?」


 浩二は楽観的な言い方をして羽月の憂鬱な不安を拭い去ろうと試みたが、とても受け入れてもらえる主張でなかった。


「私は監督なのよ……後で何言われるか、分かるでしょう……」


 溜息をつきながら言う羽月、長い黒髪に眼鏡を付け制服姿をしながら、学園に通う時と同じ格好をしてすでに反省をしているかのようだった。

 

「そう言われれば真面目で信頼されてる羽月相手だと、そういう難癖は言われそうだな……。どうして止めてくれなかったんだって感じで」


「そういうことよ、私だって望んで真面目キャラやってるわけじゃないのに」


「俺に直接言っても軽くあしらって終わりだから、何にもならないし……。

 責任ある立場に立ったこともないからな……」


 浩二は同情するような目で羽月のことを見るが、羽月は納得出来ない様子だった。


「何にもならないじゃないわよ……。副委員長なんだからもうちょっと責任持ちなさいよ、私に迷惑かけてばかりいないで」


「はいはい……今日だけは堪忍してくれ。

 もう、引き返す気はないからさ……」


 ここは愚痴をしっかり聞くことが保身だと思う浩二だが、引き返すつもりもなかったのだった。


「そうでしょうけど……。


 ”唯花さんは、もうこのこと知ってるのよね?”


 浩二のしようとしてること」


 もし自分が唯花の立場だったら正気でいられないだろう、そういう気持ちを抱えながら羽月は聞いた。


「あぁ……昨日の晩に話してあるよ。


 それでも、俺が決めたのなら好きにしていいって、舞台に参加してくれるって言ってくれたから」


 浩二が説明すると羽月は唯花の心情を察しながら複雑な表情を浮かべ、仕方なく浩二の言葉を受け入れてこれ以上の長話は控えようと浩二から一歩離れた。


 旅館の二階にある畳張りの広い宴会場をスペースに利用した舞台の客席の方はすでに大勢の生徒達が腰を下ろし話し声をさせながら騒がしく舞台が始まるのを待っていた。


 ―――開始五分前、会場の照明が消され、舞台裏からは観客である生徒達の話し声が収まり、途端に静かに変わった。


 全ての準備が整った演劇クラス一同は二度目の公演に自信を覗かせた表情で、上演開始の瞬間を待った。


 二度目の公演は準備をするのが大変だった衣装や小道具、音響や背景に至るまで全てが無駄にならずにもう一度使用できるので、演劇クラスにとっては救われた気持ちになるものだった。


 そして、知枝と光が舞台の中央に立ち最初のシーンに備える中、開始の合図と共に照明が明るく点灯し幕が上がると、舞台の方に視線を向けて座敷に座る観客から大きな拍手が送られた。


 高まる期待感の中で緊張せずにはいられないこの瞬間、知枝は表情が固まらないよう、台詞が飛ばないようリラックスを心掛けて、隣に立つ光を信じて気合を入れ直した。

 よく生徒達を見渡すと、シャロンとアンリエッタが本当に隣同士で仲良しな様子で座っているのが見えた。



 舞台上にはプロジェクターによって映し出された桜吹雪の背景。

 それをバックに、スポットライトを浴びた知枝と光の姿が観客たちの眼前に現れる。


 演劇クラスにとっても、観客である凛翔学園の生徒にとっても、待ちに待った時が来た。


 ―――樋坂浩二による稗田知枝への告白という、秘密の展開が最終盤に隠されている中、舞台演劇”震災のピアニスト”のリバイバル公演が修学旅行最後の夜のレクリエーションにて、大きな歓迎を受けながら開始された。


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