第十二話「Clover Point」7
―――内藤達也×永弥音唯花SIDE
上機嫌な様子で日差しの強い中、唯花が先導して休みことなく土産屋を回る、僕はその後を付いていく。
両親や舞、ファミリアの人たちに感謝の印にお土産を買って帰りたいらしい。
唯花と一緒に京都を回れることになったのは幸運なことだけど、唯花はゆっくり僕と話す様子はなく、なんとか気を紛らわせようと時間を潰しているようだった。
食事は露店で済ませ、ゆっくりする間もなく次の場所へと移動する、そんなことを繰り返していると唯花は唐突に口を開いた。
「―――カラオケにでもいこっか? 私、歌いたくなってきちゃった」
「いいのか? せっかく京都まで来たのに」
「いいでしょ? 最近、ずっと部屋の中に籠ってばっかりだったから、カラオケ行ってなかったのよ」
明るい調子で暗いところを一切見せることなく唯花は言った。
それが、無理をしていることは嫌でも分かった。
でも、僕には唯花のしたいことを止める、そんな勇気はなかった。
京都まで来たのだから行きたいところがある、唯花と見たい景色がある、そう伝える勇気が僕にあれば、どれだけ救われただろうか。
今の状況を自分の意志で変えることが出来ない、それは悲しいことだった。
そんなことを思いながら、僕は唯花の言葉に頷いて、カラオケボックスへと向かった。
いや、それでも僕は幸せでいっぱいなのだ。
唯花と一緒にいられること
唯花の歌を一番近くで生で聞けること
唯花が露店で買ったきゅうりの一本漬けを、無邪気な姿で笑いながら食べるのも
全部、神から与えられた一時の幸福と思えるほどに、幸せなんだ。
だから、僕にはこうすることしか出来ないと、認めるしかなかった。




