第十二話「Clover Point」6
―――水原光×夕陽千歳SIDE
唯花と達也、二人揃って地下鉄に乗り込む姿を確認した千歳は見つからないように、隣の車両に乗り込んだ。
(……本当、やってることは探偵ごっこね)
二人には悪いと思いつつ、千歳はさらにサングラスまで着けて二人の様子を伺う。
隣車両の唯花はベージュのサイドスリットのあるタイトスカートを履き、水色のボウタイブラウス姿でつり革を掴んでいる。
ナチュラルブラウンの髪が似合う大人っぽさと清楚さを兼ね備えた動きやすい服装をした唯花、千歳から見ても美しい美貌だった。
夏に似合う涼しい格好をしながら、表情は穏やかで、曇っている様子には見えない。
話の内容までは聞こえないが、隣の達也と何やら話をして盛り上がっているようだった。
(……普段と変わらない、そう見えるから、余計に気になっちゃうのかな)
昨晩、布団を敷いて寝る前にしたトランプ大会でも、唯花は暗い表情一つ見せずに、その場の空気に混じって楽しそうに過ごしていた。それは、内に秘めた辛い現実から目を逸らそうとしているようだった。
(……心配になるよね、だって、唯花さん、樋坂君と知枝さんの方を見なかったもの)
先程のバスターミナルでの出来事。
それを見ていても、唯花は浩二への想いを必死堪えているように見えたのだった。
(……光の話しでは、知枝さんも樋坂君のことが好きだそうだし……実際、あの異常な落ち着きのなさを見れば一目瞭然だけど、唯花さんにとっては複雑よね、ずっと幼馴染同士、暮らしてきたんだから)
”また、浩二を取られてしまう”
羽月の時に続き、再び自分のそばを離れて行く浩二を見るのは内心とても耐えられないくらい辛いのではないか、そう千歳は思うのだった。
唯花と達也はそれから、お土産を求めて各地を回っているようだった。
立ち止まることなく次々に移動をして、名産品を捜し歩く。その様子を見ていると、必死に”浩二と知枝が京都デートをしている現実”を忘れようとしてるかのようだった。
(……内藤君は優しいから、目を離さないように付いて行ってるけど、ちょっと複雑かな、唯花さん、内藤君の方を見てあげていないみたい)
達也の唯花への恋心も千歳は知っているだけに、二重に切ない状況が続いていると千歳は感じてしまった。
そうこうしている内に光から画像付きでメッセージが届く。
そこには着物姿をした二人が並んで歩く姿が映っていた。明らかにそれを見ると光が撮った盗撮写真であることが分かった。
「向こうは順調……か。光って時々私よりもお姉さんの方が大事なのかしらって思うことがあるわよね……嫉妬したいわけじゃないけど、もうちょっと私との時間を大切にしてくれてもいいんじゃないかしら」
千歳は付き合ってからの期間は長いながら、二人きりで過ごしてきた時間は多くないので、ついそんな感想を抱いてしまうのだった。




