第十二話「Clover Point」1
修学旅行は京都観光が本格的に始まる二日目を迎えた。
演劇クラスは班行動となり、観光目的地は全て各班の生徒に委ねられている。
水原光を代表する六人の班は行きたい観光スポットがバラバラであったこともあり、二人組を分かれて行動することを計画し、前日までに三つの二人組を作り終え、朝食後行動を開始する事となった。
六人揃って賑やかな調子で宿泊していた旅館を出ると一路、全員で京都駅へと向かった。
思い思いの目的や行きたい場所がある中、朝から賑わいを見せる京都駅に到着した。
京都駅は京の都と言いつつも背の高い高層ビルに囲まれた都会の街並みで、六人は一旦比較的広々とした空間が広がるバスターミナルで立ち止まった。
「浩二君! 見て見て! 京都タワーが見えるよ!」
この場で一番はしゃいでいるのは意外にも緊張を無理なテンションで誤魔化している知枝だった。
「そ、そうだな……今日ははぐれない様にな、ちゃんと前見てないとどこいるか分からなくなるぞ」
浩二が知枝の子どものようなはしゃぎようを心配しながら言うと、それを聞いた光も笑いながら言葉を続けた。
「そうだよ、お姉ちゃん。今日は浩二君と二人で僕もいないんだから、人混みで遭難しないようにしないといけないよ」
「そんなっ! 子どもじゃないんだからはぐれたりしないよっ! 光ってば失礼しちゃうんだから」
今の心境が分かりやすいくらいに頬を膨らましながら異議を訴える知枝、その姿を見て光はさらにからかい上手に笑ってしまうのだった。
「でも、京都駅に来ると、京都に来たなぁって感じがするわね」
唯花は気持ちを落ち着かせながら、自然を装い便乗して言葉を掛けた。
「そうですね、私もスケートの大会のついでに観光へ来たことはありますけど、こうして学生同士で来れると、また居心地も違って楽しいです。
唯花さんは、病み上がりなんですから無理せず、内藤君にエスコートしてもらってくださいね」
千歳は本来の女性らしい丁寧な口調でそう言って、唯花の心配をした。
「ありがと、二人も……折角京都デートできるんだから思い出作って旅館まで帰って来てね」
努めて明るく振舞う唯花、その視線はほとんど千歳や光の方を向いていて、この場では無理をしないと他の三人を真っ直ぐ見れない状態だった。
「それじゃあ、そろそろ分かれて行動しましょうか。
観光地は混み合いますからね」
半袖の黒いワンピースを風で軽く靡かせながら知枝は言った。
その手は逃がさないように、はぐれないように浩二の腕を握っていた。
浩二は知枝の異常なテンションの高さに引っ張られないように冷静さを見せるしかなかった。
挨拶を終えると知枝と浩二は清水寺などがある祇園方面のバスに乗り込むために先に列へ並んだ。浩二はどう考えても知枝が決めたルート通りに引っ張られている様子だった。




