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第二話「進んでいく道と迷いと」1

 夕食を家族である水原家(みずはらけ)の人々と過ごし、部屋に戻った私は、秘書をしてくれているプリミエールからの報告書が届いていることに気付き、それに目を通しながら思考を巡らせた。


「こんな時に送ってくるなんて、相変わらずプリミエールはこっちの事情なんて考えないんだから」


 只今、私、稗田知枝(ひえだちえ)を含め、学園では中間試験の真っ最中である。


 私は必死になって勉強に向かわなければならない身ではないが、少しは遠慮してもらってもいいのではと思う。


 試験に関しては一応ズルはしていない。次世代ネットワークとしても活用できる、生体ネットワークの応用で私は簡単にアリスのアーカイヴスにアクセスして端末なしで答えを検索できるけど、さすがに使用は控えている。


 いずれ人類全体に付与される能力かもしれないけど、今は使用者は限られている。もし人類が皆活用できるようになったら、試験の意味は大きく変革を遂げるかもしれない。


 そうならない方が人類のためだと思うが……。


 余談が過ぎたけど、プリミエールがこうして報告書を情報整理した上で作成してくれるのには感謝している。


 あの日、舞台演劇合同発表会の日、誘拐された私を助けに来てくれた一人だったプリミエール。

 私はあの時、舞台演劇の劇場へ急いでに向かうためにプリミエールに事件の後処理を任せたのだった。


 事件後の事情聴取はどういうわけか呆気ないほど簡単なもので済まされ日本の警察の無知っぷりを改めて思い知らされる結果になったが、結局のところ誘拐犯たちの目的の調査はプリミエール任せになった。


「……誘拐犯たちの目的について、正確にはまだ不明か。プリミエールらしいけど、警察の捜査関係者の情報なんて、まるで信じないんだから」


 マウスを操作しながら、モニター画面を眺める私は思わず愚痴った。

 プリミエールにとっては犯人たちが私を狙った理由の方が余程重要だっただろうから、そう判断するのは分かるけど。

 実際のところ、暴行目的の少女誘拐なんて報道されている現実の方が直視するのは嫌悪感が凄いので私にとっても都合がいいけど……。


「でも、この件は取り敢えずもういいかな……私を追ってたチャン・ソンウンも捕まったことだし、もう心配することもないかな」


 犯人たちが本当に身体目的の犯行だったらプリミエールによって無事では済まされなかっただろう。犯人たちは半狂乱になったプリミエールによってあらゆる拷問を受けた上で惨殺されている可能性だって……いや、この想像はよそう、あまりにも危険すぎる。


 さて、気を取り直して報告書には続きがあって、私にとってはそちらの方が本命であり、この件について深入りする気は現時点の情報では必要ないと判断した。


「彼らには私の命を奪おうっていうようには見えなかったから、魔女狩りの線はないだろうし……調査継続ってことでいいか」


 私はプリミエールには優先度は低めで引き続き調査継続ということで伝えることにした。

 すっかり私はプリミエールを秘書として小間使いしている。それはこうしてやり取りを続けることで継続的な関係を維持するためでもある。


「プリミエールが父と繋がってるのはずっと分かってることだから、これもいつかの日のため」


 すでに母のいない私は遠い目でいずれ再会することになるであろう父のことを思いながら、次の資料に目を向けた。

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