第十一話「一輪の花」5
衆人環視の中、恥ずかしいくらいの歓迎を演劇クラスのみんなから受けた後、漆原先生が教師たちとの会話を済ませ颯爽と登場し点呼を済ませた。
私が来たことで演劇クラスは事前に連絡のあった黒沢研二君を除き全員参加となった。
彼が来ないことで苦労してるのは主に浩二だけど、私としては複雑な心境が強すぎて、あまり考えたくはないことだった。
リニアモーターカーに乗り込んで新大阪駅に辿り着いたのは昼前だった。
時速500kmを実現したリニアモーターカーであるが現在のところそこまで利便性がいいとは言えない。
料金は明らかに割高だし予約もかなり前から取らないといけなかったりと面倒事は色々ある。
しかしながら、車輪を利用しない超電磁磁石による走行は乗車してみると意外と静かで滑らかな加速をするので快適さは保証されている。
とはいえ、今回の修学旅行の位置づけとしては社会体験学習の意味合いが強い。新大阪駅までの開通からは随分経過しているものの、こうした体験は貴重で初体験の生徒や教師も多かった。
新大阪駅に到着した一行は空飛ぶ車と並行して開発されたガスタービンと小型発電機を組み合わせたハイブリッド電源ユニットを搭載した輸送用大型ドローンに荷物を預け、大阪観光に向かった。
預けた荷物は夕方には宿泊予定の京都の旅館に到着する見込みで、私たちは身軽な装備で観光を心行くまで楽しむことが出来るのだった。
*
初日は短い時間しかなかったが、通天閣の周りを班行動の中で唯花たちが歩いていると、知枝が店頭で焼いていたタコ焼きに興味を示して、一同はそこから買い食いを始めることとなった。
「でもね、マリア様がみてるとか言って、百合系作品が量産されているけど、実はマリア様は百合好きなんじゃないかなって妄想が捗るわけなの。それは宗教的にはよろしくないかもしれないけど、ちょっとそれはそれで萌えると思わない?」
「いや……全然分からないけど……」
知枝は光とタコ焼きを爪楊枝で器用につまみ合いながら、自覚のない己の性癖を力説しながら話していた。
「え~、二人だって疑似的な百合を時々楽しんでるじゃない。
ちょっとマリア様がみてるかもって! 妄想が捗ったりしないの?」
「お姉ちゃん……まだ昼間だよ? 酔っぱらってないよね?」
知枝は熱に浮かされているわけではなかったが、千歳と光が一緒にいるのを見るたび妙に意識していたのだった。
「失礼だよ光ったら! 私は素面だよ。たこさん入ってるたこ焼き美味しくいただいてるだけじゃないっ!!」
知枝は光と並んでテーブル椅子に座り、ソースの上に青のりと鰹節、マヨネーズのかかったたこ焼きを食べ、異常なまでにその味に感激し、話しが突拍子のない方向に飛翔するほど興奮状態に達しているのだった。
「何だか向こうは仲良いわね」
唯花は二人の様子を遠目に眺め、ちょっとそのハイテンションなやり取りを羨ましく思いながら隣に並んで立つ神楽と話した。
「そうだね……浩二君と達也君はラーメン食べに行っちゃったし、今の知枝さんと光の間に入るのはちょっとやだしなぁ……」
神楽は今日のところは短時間の班行動ということで千歳になるのは我慢している様子で、話し方も自分の中では男装している体を崩さないようにしているようだった。




