第十一話「一輪の花」3
「……うぅ……お腹痛……っ」
翌朝、軽快な目覚ましの音で目を覚ました私は自分のものとは思えない病人のような声を漏らし、身体を起こした。
なんとも情けないことに、随分緊張しているようで体調は絶不調だった。
「……この目覚めの悪さは、自分が嫌になっちゃうかも」
一人きりの部屋で私は呟いて、朝支度を始めた。
3泊4日の修学旅行に向けての身支度はすでに前日までに済ませているものの、今日まで学園を休んでしまったという事実は私の不安となって身体にまで影響を与え続けているようだ。
私は持ち得る限りの薬でこの体調不良をやり過ごそうと常備薬やカプセル錠剤を流し込んでシャワーを浴びた。
シャワーで汗を流して、部屋に戻って着替えと化粧を済ませた。まだ時間は十分にあったが、食欲の方はからっきし湧いてこなかった。
「……気持ち悪い……行きたくないけど、行きたいから行かないと……」
自分でもどっちなんだとツッコミを入れたくなるようなやる気のない調子でお腹をさすりながら私はダイニングまで降りて、飲むヨーグルトとカロリーブロックを薬同様に強引に流し込んだ。
その様子を見ていた両親は大層心配そうにしていたけど、私は空元気を発揮することもせず立ち去って荷物をまとめると、いそいそと自宅を後にした。
玄関を出て、目が眩むような朝の陽光を浴びていると達也が家の前までやって来ていた。
「達也……おはよう」
Yシャツにネクタイの上に白衣を羽織る、変わらない達也の顔色を眺めながら挨拶をすると達也が隣に寄り添い言葉を返した。
「あまり顔色が良くないな、無理もないことだが」
変わらない調子で、達也は体温を測ろうとしていたが、私がそっと避けようとすると、達也は手を引っ込めた。
「ちゃんと薬は飲んだわよ。ちょっと緊張してるだけよ」
覗き込むように声を掛けられた私はついそっぽを向いて反論した。
「緊張か……クラスメイトに対してか、それとも浩二に対してなのか……」
心配してくれるのは嬉しいけど、その発言は気分のいいものではなかった。
「もういいでしょ、からかわなくったって。どうせ、遅かれ早かれみんなとは顔を合わせなきゃならないんだから、覚悟くらい、ちゃんと出来てるわよ」
「……そうか、無理はしないようにな」
今は達也と話している時間が一番、心落ち着かせることが出来た。
昔から、身体の具合に関しては女子以上に達也には隠しようがなかったのだ。
それからすぐ、達也と談笑していると浩二がやってきた。
もう大丈夫かと思ってたけど、やっぱり浩二を目の前にすると胸が苦しくなった。
三人で集合してすぐ修学旅行の待ち合わせ場所である駅まで急いだ。
真奈ちゃんと顔を合わせることは、とうとうなかった。
結局私はあのライブで倒れ、看病を続けた時以来、真奈ちゃんとは会っていないことになる。
これは私の罪なのだろう、こうして真奈ちゃんと会えない日々を過ごすことが私に残された償いなのだと、私は思うことにした。




