第九話「Unibirth」3
「わぁぁ!! すごいすごいすごい!! 飾りつけまでしてくれてるんだ!! テンション上がっちゃった、ありがとうだよっ!!
誕生日当日、光に連れられ誕生日パーティーが開かれる”ファミリア”に到着した私は舞がここまでしてくれているとは想像だにしていなくて、その周到な準備に驚き声を上げた。
至る所に煌びやかに装飾が施された”ファミリア”。
風船やプレゼント箱などファンシーな雰囲気で統一された客席は普段のオシャレな装いをさらに引き立たせ、今日のために特別な歓迎をしてくれていると印象付けてくれた。
「舞もお姉ちゃんに喜んでもらおうって張り切ってたから。
僕もさすがにこれは想像の上をいっていたけどね」
光も飾り付けを手伝ったのかなと思ったけど、この発言的には”ファミリア”の従業員総出でやったっぽかった。舞に無理やりこき使われた可能性が濃厚だけど、私なんかのために手を焼いてくれたのはありがたい話だ。
私は厨房の中でせわしなく料理の準備を進める舞の姿を見つけ、手を振って声を掛けた。
「舞、ありがとうね!! まだ始まる前なのに、ちょっと感動しちゃった」
料理と一緒にデザートの調理もできるほど、客席数の割に広い厨房を誇る”ファミリア”なので、舞にも届くように大きめの声で呼び掛けると舞も気付いたようで、瞬きしながらフライパン片手に笑顔を見せた。
「―――あら知枝、ようこそ”ファミリア”へ」
舞が調理の手を止めて、他のスタッフに後の調理を任せると厨房から機嫌よく出て来た。バイトリーダーって言っていいのか分からないけど、店を引っ張る活き活きとした舞の姿は大人っぽく成長しているようで、私から見ても誇らしかった。
「ビックリしちゃったっ!! 凄く張り切ってるみたいで」
「そうよ、準備大変だったんだからっ、今日はコース料理にしてるから、残さず楽しんでいってね。それとこれは主役の証ね」
料理の準備をする中、客席からわざわざ出て来てくれた舞は、私にピンク色の可愛らしい帽子を被せてくれた。
舞の手はとても綺麗で爪も短いし、ギャルっぽいとまではいかない活発的な金髪に染めた髪をしていて、舞の気さくで人当たりの良い雰囲気に似合っていた。
コース料理か……本格的過ぎてちょっと緊張しちゃうな。
私は日本に来て、こうして歓迎されながら誕生日パーティーを開いてくれる初体験に気恥ずかしい気持ちだった。
「それで光、そろそろ来るんでしょう?」
「うん、もう到着するはずだよ」
舞の質問に軽い調子で答える光、自然にやり取りしてるけど誰かがまだ来るなんて聞いていない話しだった。
「えっ? えっ? まだ、誰か来るのかな、かな? 今更だけど、私ってば誰が来るのか聞いてなかったんだけど、お店を閉めて、貸し切りにしてあるってだけでもとってもビックリ仰天なのに」
私は話しの展開に付いて行けず、落ち着きなく二人に聞いた。
二人は私に秘密の隠し事をしていたようで、息ぴったりな様子だった。
「そうよ、今日は知枝の誕生日パーティーだからね、せっかくだから大勢に祝ってもらった方がいいでしょうよ。
呼んでるわよ、知枝が最近気になってる男を、あたしも別の意味で気になってる男よ、女をたぶらかす不届き者って意味でねっ!」
舞はこれから来る人物に恨みを抱いているのか、闘志を燃やしているような不穏な笑顔をしていた。何か舞を特別に意識させる人物がこの後来ると言いうことは分かった。しかし、舞の言葉の真意となるところは私にはわからなかった。
「舞の言い方はちょっと棘があってアレだけど、本人はちゃんと今日のことを考えてるからね、お姉ちゃんのことを想ってのことっていうのは事実だから、誤解しないで。
って、勝手に喋っちゃってゴメンっ! 何はともあれ、今日の誕生日パーティーはサプライズパーティーってことで楽しんでもらえれば、一緒に企画した僕としても嬉しいかな……」
光は舞の言動にちょっと困った様子で苦笑いを浮かべ、説明にならない説明をしてくれた。
それでも、お店に来るまで秘密にしてることは事実なので、ちょっと私はこれから何が起こるのか不安だった。
「うー、二人して隠し事なんて、お姉ちゃんちょっと納得いかないよ」
「まぁまぁ、そう言わずに。料理もケーキもちゃんと準備してるから。席に座って待ってようよ」
光が疑い深く見る私を落ち着かせようと、困った顔で席に着席するよう促してくる。
そして、私が仕方なく光の指示に従ってハンドバックをテーブル席のソファーに置いて座ろうとした時だった。
貸しきりにしてあるお店の扉が開かれ、小気味良い音が流れると、そこにはサプライズという言葉に相応しく、浩二君と内藤君、そして真奈ちゃんの姿があった。




