5, ルート分岐 β
レベルは大まかに分類すると、
『プレイヤーレベル』と『スキルレベル』の二つだ。
ダンジョンに生息するモンスターなどを倒すことでプレイヤーレベルをあげることができ、スキルレベルはそれを使用して成果を出すと自動的に上がるようになっている。
また、スキルレベルを上げるとそれに影響してプレイヤーレベルも上がる仕組みだ。伊織が今までに一度もモンスターを倒さずとも、プレイヤーレベルが上がっているのはそのシステムのおかげだ。
「……っと」
伊織は三時間ほどの作業を終えると立ち上がり自室を後にする。そろそろお腹も空いてきたので休憩をするためだ。台所へと足を運ばせて、戸棚を開ける。
「……なにもねぇか」
伊織が最後に外に出てからすでに二週間は経過していた。棚の中にあったカップ麺はすでに底を尽きていた。念のため冷蔵庫を開けるも、入っているのは使いもしない調味料くらい。そろそろ買い足しに行く時期が来たようだ。
ジャケットを羽織り近所のスーパーに行く用意をする。ネットで注文することもできるが、それをすれば本格的に人間的として腐る予感がしていた。つまり買い足しとは外出する口実でもあった。
「五千六百円になります」
「カードで」
買い物カゴいっぱいに詰められているのは同じ種類、同じ味のカップ麺だ。やはり天下の○清だけあって、何年食べ続けても飽きがこない。
時刻は夕方を回り、すでに辺りは暗くなっていた。スーパーを後にして大きな袋を抱えながら帰路に着く伊織。玄関からスーパーはおよそ五分の道のりだ。横断歩道を渡って家の前まで行くと怪しげな人影を視界に捉えた。
(……ん、なにしてるんだ? あんなところで)
見窄らしい格好で物乞いでも始めるかのように通行人に視線を向けていた。いくら伊織であろうと、直感でわかる。
(これは、関わると面倒なことになるな)
そう確信して視線を決して合わせないように横切ろうとすると、
「……そこのだんな」
「………………」
「ダンナ、聞こえてますよね?」
その男がこちらに手を振り呼び寄せる。だが、面倒ごとに関わるのは御免だ。気づかないふりしてそのまま早足でその場を離れようとする。するとその後を追うようにして、その男がついてくる。
「あれれ、どうして突然走り出すんですか? 私、なにか失礼なことでもしましたか?」
「ぅぎっ……ついてくんじゃねぇ!!」
このままマンションに入るのはまずい。伊織はそう考えてこの男を撒いてから再び此処へ戻ることを決めた。