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3, 10年前、森の中で

 遡ること10年ほど前。


『はぁ、はぁ……』


 無限にも続く山道を伊織は只管(ひたすら)に降っていた。その施設は山奥にあり国に認めてもらいながらも、擁護対象にはなっていなかった。なぜなら、そこで行われているのは、ただただ『力』を求めるための行為だからだ。


 生まれた時からの教養学習とダンジョン知識の会得。それと戦闘訓練だ。あまりに過酷なため明るみの事実にでもなれば、世間では批判が殺到するだろう。


 その原動力となっているのがダンジョンだ。それを攻略することの戦略的価値は計り知れない。ダンジョンにはいくつもの階層が存在しており、その階層のボスを倒すことでその資源を無制限にこっちの世界に持ち出すことができた。


『……お腹が空いた』


 おそらく丸一日は歩いたはずだ。しかし、五歳の伊織の歩幅はたかが知れていた。施設からは解放されたがそれは物理的な意味合いであり、言い方を変えれば五歳児が備もなしに野に放たれたことになる。


『これ食えるのか……?』


 右手に握られているのは山道に生えていたキノコだ。非常食として様々な種類のキノコを持ち歩いていたが毒の有無まではわからない。


『いや、躊躇している場合でもないな』


 疲労も限界に達していてこれ以上何も口にせずにいるのは命に関わる。いっそのこと食べてしまおう。


 いろいろと観念してきのこを口に含もうとした時だった。


『警告——毒性のある物質を検知しました。本当に食べますか?』


 突如として、目の前に現れたのは現状の危険性を知らせる警告ボードだった。


 ————そう警告ボード、だ。


 それは本来、探知系のスキル持ちなどがスキルを使用した状態の時に表示されるもの。だが、それもダンジョン内部でのみなのだ。ただ兎に角、今はそんなことを考える余裕がなかった。伊織はそのキノコを捨てると別の非常食を取り出す。


『実績達成:危機回避 レベルが上昇します』


 天の声。それはそう呼ばれていた。ダンジョン内部でのみ聞こえてくるその声は攻略者たちの中では常識だった。スキルが発現してからはあまり開きたくなかったが、伊織は意を決して右手を前に突き出す。


「ステータス」

————————————————————————————————————

 不破伊織 年齢:5 男 Lv.1

 スキル『家事有能』スキルLv.2

 職業:なし

 攻撃力:12

 防御力:8

 敏捷性:7

 物理耐性:8

 魔法耐性:6

————————————————————————————————————

 伊織はそれを一瞥するとその変化に喫驚の声を漏らす。


「スキルレベルが上がってる……」


 ただし、ダンジョン内部に限る。未だかつて、こっちの世界でスキルを使用できた人間などいない。そして、それはある種の呪いのようなものとされていた。しかし、伊織は自分のステータスを眺めて確信した。


 『家事有能』


 このスキルは間違い無くレアスキルだ。それも常識を覆すほどの。


 なぜなら、それは『ダンジョン外部』でも使用できるのだから。

第三話を読んでいただきありがとうございます。

優秀な人材を育成する施設。

どこかの実力至上主義のような雰囲気はありますが、

目を瞑ってください。ではまた次回、

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