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17, スキル『英雄』を持つ男

 放課後。入学式は一時間半ほどで終わりを迎えて、多くの生徒達が帰路につき始める。伊織もその波に乗じて教室を出ようと思ったが少しだけ寄り道をすることにした。


 向かうところは理事長室。ここが攻略者養成校だということを隠していた理事長——クレアに一言でも文句を言ってやりたかった。


「……こっちの方角だったか」


 この学校の敷地は矢鱈と広い。伊織の用があったのは理事長室だが、かれこれ数分は歩きっぱなしだ。


「……ねぇ、君。可愛いね」

「もしかして、モデルとかやってたりする? 芸能界デビューすればきっと人気出ると思うけど」


 地下一階。演習場と廊下を結ぶ渡り廊下の辺りで、柄の悪そうな二人組に絡まれる女子と遭遇する。男の方は二人ともがたいもそれなりで、険悪そうな表情をしていた。ここからでは、女子の姿は見えないが怯えているのだろう。


(……ナンパか? 新学期早々から大胆だな)


 伊織は通路の物陰に隠れると、その様子を見張る。


「なぁ、この後ちょっと付き合ってくれない?」

「……えぇっと」

「いいじゃんいいじゃん、少しくらいなら暇でしょ?」

「この後はちょっと用事が……」


 理事長室を探すためにこの先に行きたかったのだが後回しにしよう。


 切迫した空気を感じて、通路を通るのを断念する伊織。踵を返して来た道を戻ろうとすると、


「……ちょっと、やめてくださいっ!!」


 突然、空気を切り裂くよなのような声が悲鳴が聞こえて足を止める。どうやら状況は最悪の展開になったようだ。


(……助けるか?)


 しかし、ここで出て行ったとしても戦力になれるかどうか。その程度の実力だ。無駄にレベルが高くても、能力値が上がったわけではない。出て行ってもサンドバックにされるのが関の山だ。


「ちょっと君たち、それ以上はやめてもらおうか」


 諦めようかと天井を眺めた時だ。伊織のいる反対側からまるでヒーローのように颯爽と現れたのは同じクラスの天沢という男だ。


 天沢は柄の悪い二人の方に手を乗っけると、二人を制圧する。


「あぁ? 誰だテメェ」

「ああすまない、紹介がまだだったね。天沢英介だ。君たちこそ、こんなところで女性相手に何をしているんだい?」


 その自己紹介があまりに衝撃だったのか、二人は顔を見合わせて静止する。


「って、もしかしてお前は天沢英介か? スキル『英雄』の持ち主だと噂されている……」

「それがどうかしたかい?」

「「ひッ……す、すみませんでした!!!!」」


 その態度のデカかった男二人組も天沢の名前を聞くや怯えたように接し方を変えた。何者なのだろうか。


 そして、女子生徒の方にも深々と謝罪をすると脱兎の如くその場から消える。


(……とりあえず、これで一安心だろ)


 物陰から隠れつつ一部始終を眺めていた伊織は事態の収拾に肩の荷を下ろす。そして、今度こそ本当に来た道を戻ろうと踵を返すが、


「それと……そこに隠れているのは誰かな?」


 その気配を察知したのか、天沢という男に呼び止められた。

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