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13, 一学年クラス分け発表

 秀恵高等学校は都会の街並みの中でも、ずっしりと構えた門を中心に3キロほどに広がっている。入学手続きの時に一度だけ訪れたことがあるが、今日はその時とは異なり登校する生徒が見受けられた。


「新入生のクラス割はこちらに張り出されてまーす」

「うわっ、俺。Cクラスだわっ!?」

「Dクラス……まぁ、Eクラスじゃないだけまだマシか」

「よっしゃ、Bクラスだ」


 校門を潜ると矢鱈に人の混雑した場所を発見する。クラス分けの張り出しのようだ。伊織もその一群に混ざって自分の名前を探し出す。


(……Aクラスか)


「ねぇねぇ、あの人ちょっとイケてない?」

「あーわかるわかる、一年生かな」

「でもなんか雰囲気、先輩っぽくない?」

「えー、かっこいい」

「あの人、誰か知ってる?」

「うんん、入試の時は会ってないよ」

「誰だろー」


 掲示板の前に立って名前を探していると、周囲が騒つき始めるのを感じた。周囲の視線が一か所に集中していくのを感じる。


 その視線の集まる先————それは不破伊織、僕だ。


 これは多少のナルシシズムを含んだ発言になるが、僕の容姿は他者と比べて非常に優れている。ここでそんな追加設定を付け足すな、とそんな指摘がありそうだがそれが事実だ。


 目鼻立ちや口元はどこか色気で溢れており、色白な肌に整えられた眉と髪型は清潔感を醸し出していてどことなく落ち着いている。ここまで条件が揃っているのに視線を集めない方がおかしい。


(……それにしても、落ち着かないな)


 ただそれも昨日まで引きこもりをしていた人間からしたら馴れないもの。そのことに若干動揺しつつ、伊織は逃げるようにその場を後にしようと足先を昇降口に向ける。行き先は当然、伊織の学級——Aクラスの教室だ。


「ふぅ……」


 Aクラスの扉前。伊織はどこか不思議な感情を覚えていた。これから始まる学校生活への期待かそれとも緊張なのか。意を決して扉の凹みに手をかける。内装はどこかお洒落でまるで貴族の一室ような空間だった。


 教室には生徒がちらほらと見受けられたが、半分くらいは空席だった。


(……早く着きすぎただろうか?)


 集合時間まではまだ10分ほどある。教室内では小さな集団が既に生まれ始めていたが孤立した生徒も見受けられた。あれが俗にいう『ぼっち』と『そうでない奴ら』のコミュ力の壁なのだろう。


 伊織は適当に空いている席に腰を下ろすと手持ち無沙汰を隠すように読書を始める(*)ちなみに伊織はぼっちサイドだ。だがそれは大した問題ではない。


 なぜなら、伊織と彼らとの間には決定的に異なることがあるからだ。


「うわぁ、なんだあの人。めっちゃ絵になるじゃん」

「……かっこいい」

「あんな奴と同じクラスとか、俺の青春オワタ」


 容姿が整っていること。それだけで周りからは優遇的な扱いをされ、ぼっちという不名誉な称号は『孤高』へと変貌する。すると、伊織の前に一人の女子生徒が近づいてくるのを捉えた。


(……なんだ、サインでも欲しいのだろうか?)


「あの……」

「どうかしたか?」


 どこかあどけない感じの表情で伊織を見つめる女子。彼女は浅紅色のロングヘアでその淡麗な顔立ちはその雰囲気の幼さを魅力的に仕立てていた。


「えっと、ちょっと言いづらいんだけど……そこ私の席なんだよね」

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