11, 伊織の苦悩と主人選別(2)
だが、慎重になりすぎるとなにも決まらない。
取り敢えず様々なパターンを考える伊織。年下を主人にしたとして、もしものことがあった時に制御がきくのだろうか。いやそもそも、金の価値すら理解できない阿呆に奉仕すること自体に伊織は拒否反応を示す体質だ。
そうなると考え方が近しくて、できれば歳の近いやつに絞られる。年上という選択もあるが扱いにくいし、少し早く生まれたからと舐められるのも癪に触る。
「やはり、同年齢か」
しかし、伊織は同年代との交流と疎遠の生活を送ってきた。あの施設の人間で歳の近い奴はいたがそれはかなりの例外的な事例だ。
(まぁとにかくそうなると、選ぶ方法も考えないといけないな)
相手の人格を知るといっても決して容易いことでもない。こればかりは相手が自然体でいる様子を観察するところから始めるべきだ。それとこっちの魂胆がバレずに向こうから怪しまれない環境も必要だ。
「……くそッ、考えるだけで、頭が痛くなる」
考えをまとめるとこうだ。
対象は同年代くらい。十五〜十六歳。考え方が近しくて共感できるところのある人物。そして、相手が自然体でいるところを不審がられずに観察することができる場所。
「…… 一つだけ候補があるにはあるが」
そして、伊織の脳が弾き出した策は単純で実に気乗りしないものであった。
————それこそが『高等学校』である。
もしかすると、先日の男が言っていたことに影響されたのかもしれない。
「……まったく、ひきこもりもこれでしばらくは引退だな」
だがその日、不破伊織は引きこもり生活に終止符を打ち学生として生活することを決めたのだった。




