冬子の夏/夏海の季節
起承転結の承と転の間。そんなフェイズです。
/幕間
そう、これは幕間。非常に、全くもって非常に腹立たしいことなのだけれど、これは幕間なのだ。主人公が歩む主観世界、そのアクトとアクトの合間の話。私は今、そこにいる。
——ふざけている。これは本来私の物語でもあったのだ。そう、これは私の物語であり、あいつらの物語でもあったのだ。それぞれがそれぞれの想いを抱き、時にぶつかり時に協力、いつの間にやらシェアハウス……そういう間柄になって共に強敵の数々を倒してきた。そういう流れだったはずなのだ。
それが——
それがどうして、どうして『ヒトトセの式』の続投に繋がったのか。私はそれが、どうしようもなく腹立たしかった。
この物語はリザルトの出現を以って完結しているはずだったのだ。アレは敵などではない、アレは倒すべき存在ではない。アレは、エンドロールであるはずだったのだ。
だというのに、夏海のやつはそれを……あろうことか引き裂いてしまった。
あり得ないことだ。本来、起こるはずのない事象だったのだ。それが発生した。
どうして? それは分からない。私には分からない。知らない間に、もうその事象は始まっていたのだ。
夏海は、私には何一つ相談しなかった。独断でリザルトに立ち向かったのだ。
許せなかった。私は夏海を許せなかった。リザルトと戦った夏海を。——リザルトを倒してしまった夏海を。私は許容できなかった。認めたくなかったのだ。
だからなのか、夏が来た今、私はいままで以上に苛立っていた。夏は、夏海を思い出させるのだ。アイツは、アイツは入道雲のように勢い良く、夏の海のように晴れやかで、夕立のように忙しなく湿っぽくなるやつなのだ。……ああ、想像しただけで腹が立つ、腹が立つ……!
——着信音が鳴り響く。秋雄からの電話は30分前だった。普段通りなら催促の電話だろう。早く来い、と。門探しを手伝えと、ルーチンワークかと反論したくなるほど代わり映えのしない発言がスピーカー越しに聞こえてくるのだろうと。そんな思いを抱き、私はウンザリとした面持ちでタッチパネルの通話ボタンをタップした。
「はい、春夏秋冬です。春夏秋冬さんですか」
『ややこしい訊き方をするな冬子。それより小生の電話からどれだけ経ったと思っている?』
「30分ね。どうでも良くないそんなの。こんなテンションだから行っても探す気起きなかったと思うんだけど、そこんとこ秋雄はどう考えてんの?」
ハァ、と。ため息が聴こえた。しかもクソデカ。……秋雄のやつ、わざと至近距離でため息吐きやがったわね。
「どういう了見よ今の」
『この距離なら聴こえなかったフリは出来ないな、と思ってな』
「性格悪いわね」
『冬子に言われたくはないな』
「お互い様って言いたいのね、不毛な会話だこと」
あちらはあちらで苛立っているようだ。夏海への感情が私だけではなく秋雄からも溢れ出していることはよく分かった。再確認できたので良しとしましょう。
「……悪かったわね。今から向かうわ。旧市街のどこらへんよ」
『五番街だ。自然公園跡地のところだから分かるだろう? すぐに来てくれ』
……やや裏返った声だったのが気にかかった。基本的に低音ボイスな秋雄にしては珍しい。何か発見でもあったのだろうか。
「どうしたのよ。門見つけたの?」
『それどころじゃない! 小生たちが今まで門だと思っていた物は障子の穴程度の物だったんだ!』
「ちょっと、それどういうことよ」
私たちがここのところ探していた【門】、それはリザルト討伐により出現した……他作品へ通ずる扉。これまでに何人かの主人公たちがこの世界に飛来し、そしてそのほとんどが夏海に倒されていった。
だがそれはそれとして、夏海はこの際放っといて、【門】は次元を超える凄まじき扉。それが障子の穴程度だった? 聞き捨てならない発言である。だから私はそう反論しようとして——
『作品そのものが小生たちの世界に来ようとしている……その名は——』
次回、
『ヒトトセの式』VS『札伐闘技・魔カード』編開幕。
というわけでそろそろ本筋始まります。よろしくね




