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「ねえ!メアド教えてくんね?」
翌日、学校に着くなり俺は仁にそう声をかけた。読書中だったためか鬱陶しそうにこちらを見て、そんな顔も綺麗だなぁなんて馬鹿な事を考えていた。
「嫌だ」
「えっ!?…………なんで!?」
衝撃のあまり仁の机に乗り出してしまった。ガタンと机が揺れ仁の顔が僅かに歪む。
「なんとなく」
「えぇ〜……」
まさか断られるとは思っていなかった。しょんぼりしながらもすぐ読書に戻った仁を見て渋々自分の席へ着く。俺みたいにグイグイくるやつはきっと苦手なんだろう、そう頭では理解しているのにどう接すれば良いのかがわからない。今までどういうタイプでも同じように接してきたからだ。それでも俺には諦めるなんて選択肢はなくて、次はどうやって話しかけようかと悶々としていると担任がやってきてHRが始まった。
「おい、硯、お前前の席のやつと仲いいの?」
不意に後ろから声をかけられた。佐藤 夏摘。ミルクティーのような柔らかい髪に蜂蜜色の大きなタレ目、ハーフと言っていたか。顔が良い2人に挟まれた席というのも落ち着かないが、夏摘は見た目とは裏腹に話しやすく、優しい雰囲気の男だった。
「うーん、仲良くなりたいんだけど難しいなぁ。あんまり人と話すタイプじゃないみたいで」
「そっかぁ、ま、そのうち仲良くなれるでしょ」
「そうかなぁ……」
夏摘はにっこり笑ってへーきへーきと言ってくる。でもなぜだろう、硯は時間が経てば経つほど遠ざかっていくような気がして。……うん、やっぱりゴリ押しするしかないな!昼休みになったらもう1度話しかけてみよう。そう意気込んでいるうちに1時間目が始まった。