始まり
投稿遅れて申し訳ありませんでした。
少女は街を走る。
己を縛る物全てから一時的に逃げ出せたこの少女は、今日だけは何のしがらみも持たぬ唯の女の子だ。
普段は見るだけしか出来なかった街を、人を、少女はじっくり観ていた。
この街は、この国で一番の街である。
まぁ、当然と言えば当然なのだが……。
何せ、この街は王都だからだ。
王の住むこの街は当然のように国一番の賑わいを見せていた。
そんな賑わう街を歩く少女の顔は、しがらみから解放された、爽やかな笑顔でも、
賑やかな街を見て喜ぶ年相応に目を輝かせるでも無く唯、冷たく無機質な目で、街を、
いや、人々を見ていた。
その目は、無機質にも関わらず、明確な嫌悪を孕んでおり、笑う街の人々を快く思っていないのは明らかだった。
そして、歩くうちに、少女は景色がまるで違う場所に着く。
其処は、先程の賑わう街と同じ街とは思えない程荒れ果てていた。
少女は、その荒れ果てた土地に入り、更に進む。
少女が進んだ先には、ボロボロで穴だらけの教会が有った。
穴だらけの教会は、中に入らずともその教会の中を見る事が出来た。
「この野郎が!!クソッ!!クソ!!」
其処では、一人の少年を何人かの集団が囲んで殴る蹴るを繰り返していた。
その様子を観ていた少女は、その目を先程より暗く、冷たくして、その光景を見つめていた。
余りにも、醜い。
自分よりも弱くて、周りとは違う物を殴って、自分の地位を確かめている。
そういう事をする事しか考えられない程、醜くて、貧しい心。
助けようとは思わない。
あの子も、今はあの立場だから、可哀想だけど、もし立場が逆なら、あの子もきっと同じ事をする。
そう思い、去ろうとした瞬間、
「ギャアァァ!!」
教会から悲鳴が上がる。
明らかにあの男の子の物とは違う低くて野太い悲鳴だった。
だから、つい後ろを振り返ってしまう。
其処にあったのは、返り血で真っ赤になり、髪の先端から血を垂らしている真っ白な女の子の姿だった。
「えっ?」
つい、そんな間抜けな声を出してしまう。
女の子は、右手に刃物を握っていて、人を五人も殺したというのに、特に何の感慨も無い無表情で辺りを見渡す事もせずに立ち尽くしている。
「ヒィィィィ!!」
先程まで嬲られていた少年も、慌てて立ち上がり、走って逃げて行ってしまう。
私も逃げなければならないのに、
何故か、その女の子から目を離せなかった。
他の奴等と違い、殺した事で動揺する事も、
復讐をしてやったと死体に憎悪の向ける事もせず、無表情で、何の感情も籠らぬ目で立っている。
善意も、悪意も無いその無機質な瞳にどうしようもなく惹かれた。
コレが、私と彼女の最初の出会いでした。