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崩壊

 ぺたん、ぺたん、と乾いた音がきこえる。


――何の音だろう?


 ライは、まだかすかに残る意識で考える。

 それが誰かがゆっくり階段を登ってくる音だと気づくのに、多少の時間を要した。

 体を起こし窓の外を見る。先ほどと同じく、相変わらずの真っ暗闇だった。


「……まだ夜……んん」


 今が何時だろう、と枕元の時計を手探りで探すが、どこかへ行ってしまっていた。

 諦めたように肩を落とした頃、ちょうど先ほどの足音の持ち主が入口に立つ。


「起きていてくれたんだね、ライ」


 その優しい声に、振り向かずとも誰なのかがすぐに分かった。

 彼が発する言葉はいつも温かい厚みを持っている。今まで闇に包まれていたこの部屋に、太陽が差し込んだかのような気分だ。


「……ただ眠れなかっただけだよ」


 予想以上にソウリャの帰宅に安心したのか、また感極まりそうになるのを隠そうと、ライは素っ気ない返事をした。


「リサを護ってくれてありがとう。今先程下でリサとも話したところだよ」


 そんなものもお見通しのソウリャは、ライのそんな態度も愛おしく感じたのか、とても優しい声色で言った。


「……」


 何故だろうか。ライは素直にソウリャの顔が見れなかった。

 ずっと彼の帰りを待っていたはずなのに、楽しみにしていたはずなのに、どこか顔を見てはいけない気がしてならない。

 とくにその原因は明確には分からない。

 だが、しいて言うのならライの直感が伝えてきているのかもしれなかった。


 その様子を察したのか、ソウリャは自分のベットに腰掛けた。


「……」

「……」


 ソウリャは嫌でも目を合わせざる終えない位置に、向かい合うように座った。 

 彼は肩幅に足を広げ、膝の上に腕を置き、両手を固く繋ぐ。

 そして、前傾姿勢でライの目をじっと見つめた。


 これはあきらかに、「君に伝えたい事がある」ことを示しているだろう。


 その知らせとは、いい知らせなのだろうか。

 そうではない、と彼の顔が物語っているような気がして、ライは視線を逸らした。


「逸らさないでくれ」

「……」

「お願いだ……逸らさないでいてくれ」


 静かに、でもはっきりとした彼の声にライはもう従うしかない。

 ライは諦めたようにソウリャの目を見つめ返した。


「いい子だ」


 いい子、そう言われてライは頷く。

 それを見て、彼はまゆを下げて笑った。


「ねぇ、少し昔話をしようか。うん、そうだね。ライ、自分がこの家に来た時のことを覚えてる? たしか素晴らしく晴れた日だったね」


 どうして今そんな話をするのか。

 彼の意図を想像したくなかった。だからどうしても返事が喧嘩腰になってしまう。


「……いや、だって僕まだ2歳くらいでしょ?」

「うん、そーだね。そのくらいか……覚えてたら凄いね。その時にはさ、まだこの家にお婆ちゃんがいたよね。いま思うと大変だったろーなぁ。だって、二歳のライと十四歳の私、十二歳のリサの面倒をひとりで見てくれていたんだからさ。ほんと感謝もんだね」


 楽しかった事を思い出すような言い草。やはりどうしても胸のざわつきが止まない。


「うん……そーだね」


 曖昧な返事を返すライをよそに、ソウリャは次から次に話を持ち出す。


「私は前々からこの家で過ごしてたんだけど、ライはパラマの研究所でお母さん達と暮らしてただろ? だから私とライも一緒に生活するのが殆ど初めてに近くてさ。初めはどうしたらいいか分からなかったよ」


 暗くてよくわかないが、ソウリャの目元が濡れている気がした。


「その後は私がすぐに王都に出たから、家を開けることが多くなってね。あはは、私の王都住みが決まった時のライの泣きじゃくりようは今思い出しても笑えるね。可愛かったなぁ」

「……やめてよ」


 陽気な声が、尚更嫌な予感を誘う。


「それから半年に一度帰ってくるとさ、おもしろいくらいにライが大人になっていって、私は航海中にずっとそれを楽しみにしていたのさ」

「やめて」

「この前帰ってきた時なんかさ、着港そうそ」

「やめてってば!!!!」


 とうとうライは声を荒らげた。


「なんで!? なんで今そんな話するの!? なんなの!? いいよね? もう、ソウリャは帰ってきたんでしょ。それなら昔を思い出して感傷に浸らなくてもいいよね。ねえ、なんで!? 何でこんな話するの!?」


 募りに募った不安が一気に流れ出る。

 いやだ、この昔話の最後を聞きたくない。聞いてしまったらもう元に戻れない気がして嫌だ。


 ライは息を切らしながらも、ソウリャの話を断ち切った。


「…………」 


 一方、ソウリャは何一つ表情を変えないまま、ライの目をしっかりと見据える。


「黙らないでよ! ねぇ……もう過去はいいよ。明日の話をしよう。明日は晴れかな、雨かな? ねぇ、もし晴れたらどこに行く? 久しぶりにさ、三人でお出かけしようよ。ねぇ、たのしみじゃない? この前ジリンといった丘がすごく綺麗だったんだ。リサにお弁当作ってもらって一緒に行こうよ! ねぇ、絶対に楽しいからさ……ねぇ、ソウリャ……」


 ぴくりとも動かない、目の前のライの太陽。


「…………ごめんね、お前は悪くないよ。素晴らしい、素晴らしい……私の弟……」


 押し殺した声。

 捻り出した声。


「……」


 そんな彼を見てしまったら、話の先が読めても、もう何も反論できない。


「……みただろ? 今日のあの怪我人や墓標。怖かっただろ」


 震える彼の声に小さく返事をした。


「私も怖かったさ」


 初めて聞く兄の言葉。

 その一言で充分に伝わった。


「お父さんやお母さんが、パラマの研究所で何を研究してるかは知ってるよね」


 怯えるような、震えた声。

 そんな真剣な声に、ライは恐れながらも答える。


「……光の伝説」


 ゆっくりと発した言葉に、ソウリャは小さくうなづいた。


「うん、そうだよ。昔からおとぎ話として語られているあれだよ。……実はね、あれには続きがあったの。封印から千年後に闇の民が復活する、というね。……それが現実になっちゃったんだ」


 淡々と語る彼。だが、その内容が本当だとするととんでもないものだと思った。

 恐ろしい闇の力を司る闇の民。それらが復活下とならば、またもやこの世界に闇が広がる。

 今日見た怪我人や墓標はその闇の民勢力の被害者だったという事か。


「彼らはじきにガザラにも攻めてくる。いや、ガザラだけじゃないよ。世界中を闇で飲み込む。それだけはなんとか食い止めなければいけないんだ……だから」

「だから、ソウリャは今すぐにでもガザラを出るんだね」


――もうそんな事は分かっていた。


 ライの頭の中で、一つの諦めがつく。


 ソウリャは今回、ライとリサの二人にお別れを言いに来たのだろう。

 ソウリャは平民の身分でありながら国の重要職に付いている。

 彼は国にとって必要な人。きっと、すぐにでも王都に渡り、安全な場所で暮らしていくのだろう。

 対してライやリサはその他大勢の平民。言葉こそ悪いが、特別に闇の民から守る意味の無い人々だ。

 そんな人をわざわざ王都に匿う必要なんてない。


 長い沈黙が訪れた。




「……ライ、最後に一つ、私から真実を……」


カンカンカンカンカンカン!!!!


「なっ!?」

「……早い」


 突如外から金の音が鳴り響く。

 この鐘の音は火事などの災害時に鳴らすものだ。


「なに!? なんなの!?」


 今日はたくさんの事があり過ぎて、頭の容量を超えているのだ。お願いだからもういい加減にして欲しい、とライは頭を抱える。


「ソウリャ! 海から上がって来たって!」


 下からリサの怒鳴り声が聞こえる。

 それと同時にソウリャがライの腕を引っ張った。彼は力任せにライを立たせ、下の階へと連れていく。


「ライ、着替えろ!」

「えっ!?」


そこには洋服が1式用意されていた。


「早く! 着替えるんだ!」


 訳もわからず、言われるがままに服を着る。


「ど、どーゆう……」

「黙りなさい、ライ。あんたは手をうごかして!」


 リサも状況を把握しているようで、テキパキとこなす。袖を通した服は普段着よりは高級感があるブーツも、いつもよりいいものを履いた。


「これも、つけてきなさい」


リサが手早く僕の肩にマントをつける。


「腰にさせ!」


 ソウリャは自分の短剣を僕の腰に刺した。


「えっ! えっ!?」


 ライ一人全く状況を把握できない。

 どうして自分が着替えさせられているのかすら分からなかった。


 窓が異様に大きく叩かれる。


「リサ、雨戸を全て閉めろ!」


 ソウリャの支持でリサは窓へと駆けてゆく。その間にソウリャはライに不思議な甁を渡してきた。


「苦い、けど一気に飲め!」


 切羽詰った彼の迫力に、ライは得体の知れない真っ黒な液体を喉へ流し込む。


「ん、ん……っくはっ! はぁはぁはぁ…」


 体が一気に熱くなった。


「……なに、これ」


 突然燃えるような痛みが全身を襲う。驚く程の痛みにライは肩を抱いて堪える。

 見ればソウリャも同じ液体を飲み干したところだった。


 彼は少し顔をしかめると……。



 居なくなった。



「ソウリャ!? ソウリャ!?」


 突然目の前からソウリャが消えた。そんな非現実的な現象を前に、ライは慌てて彼の名前を叫ぶ。

 すると、どこからかソウリャの声が聞こえてきた。


「ライ、声を出すな。安心して。魔術薬で一時的に見えなくなってるだけだ」


 その声はすぐ近くから聞こえてきているようで、ライは首をおおきく振りながらソウリャを探す。

 だが、彼が言った“見えなくなっている”のは確かなようで、ライは彼の姿を見つけられなかった。


「この服を掴んで」


 すぐ右隣から囁くような声がする。

 その声の方を振り向くと、先程ライが脱いだ服がふわふわと宙に浮いていた。

 言われたように、すぐさま駆け寄り手を伸ばす。

 

「うわっ!」


 服の端に手が触れた瞬間、手首に突然強い力が加わった。


「大丈夫、私が掴んでいる」


 慌てて手を引こうとしたら、すぐ間近でソウリャの声がした。姿は見えないが、声も聞こえるし触れられるという事か。

 ソウリャは切羽詰った声色で強くライの手を引いた。


「時間が無い。このまま外へ出るぞ。君も 魔術薬で姿が見えない。だから離れたらだめだ。何があっても私の手は離さないで」

「……う、うん」


 バシバシバシバシと窓が大きく唸る。


「あ、そこまだ雨戸閉めてない…っ」


 リサが大慌てでその窓へと近づく。


「!? ダメだリサ、開けるな! 伏せろ!」


 大慌てで窓枠に手をかけたリサに対し、ソウリャが反応し叫んだ。


「えっ……?」


 その声に弾かれるように動きを止めたリサだったが、ギシ……と少し、窓に隙間を開けてしまった。


 突如、凄まじい突風が部屋に流れ込む。その突風を体全身に食らったリサは反対側の壁へと飛ばされてしまった。

 ライは自身の体が飛ばされないようにとソウリャに繋がれていない方の手を机につき、必死に堪える。

 すると、その突風に乗るように窓から真っ黒な何かが押し寄せて来た。


「……っ!?」


 危なく悲鳴を上げそうになったライは、唇を噛むようにし声を抑える。

 風によって大きく開けられた窓から流れ込むその真っ黒な何かは、蜘蛛のような足を小刻みに動かしこちらに突進して来る。

 その正体が何なのかを突き止めようと、ライは必死に目を凝らした。

 だが、どれだけよく見ても何も無い。ただの真っ黒な闇でしかなかった。まるで、濃い影が実態を持ったような深い黒。この世の何よりも深く混ざりの無い黒であった。


 その蜘蛛のような物体は部屋をめちゃくちゃにしてゆく。

 気の狂った暴れ馬のように壁にぶつかりながら暴れ回った。その際にテーブルや椅子にぶつかりひっくり返してゆく。次々に部屋に乱入してくる黒い影はタンスを倒し、台所の壺を割った。

 あの3人の写真も、なぎ倒された。

 ランプが倒され、中の炎が床へと落ちる。

 その場でゆらゆらと萌える炎は、吹き込む突風によって瞬く間に天井まで達した。

 

 ライはこの目の前で起きている出来事が何のか全く把握できなかった。

 そう。あまりにも一瞬の出来事だったのだ。

 ゴウゴウと音を立てながら燃え上がる炎の中で、先ほどの影が踊って見える。


 その不思議な舞に吸い込まれたように呆然と立ち尽くしていると、ソウリャにグッと強く手を引かれた。

 その瞬間に我に帰ったライは、ソウリャに引かれるがままに玄関から外へと飛び出した。


「…………」


 外は、さらに目を疑うような光景が広がっていた。

 丘の下に望む市街地。そこは隙間なく黒い影が蠢き、所々から赤い炎が上がっている。

 かなりの距離があるにも関わらず、凄まじい悲鳴が聞こえた。


 崩壊してゆくガザラの町に絶句していると、またもや強く手を引かれる。


 そうなのだ。今は絶望なんてしている暇はない。黒い影が家に入って来たということは、この辺を彷徨いているということなのだ。


 メキメキ、と背後にあるライ達の家がしなる。

 振り向けば、高く炎に包まれた家が倒壊しようとしていた。


『いくぞ』


 小声でソウリャがそういった気がした。

 ライは意を決して、それと同時に足を踏み出した。


「ギギギギギ」


 突然背後から金属同士が擦れるような音があがった。

 その不気味な音に後ろを向く。すると、なんと家の影から蜘蛛の形をした黒い影が湧き出てきたのだ。


 慌てて逃げようと走り出すと、ソウリャに掴まれていた腕が突っ張る。彼は黒い影が出現してもなお、歩くスピードを早めてはいないようだった。

 “なぜ逃げないのか”と聞きたいところだが、声を出したら一環の終わり。ライは恐怖に固まる思考を必死に巡らせ、彼の意図を探った。だが、何も思いつかなかった。


 そうしている間にたちまち辺りは黒い影に埋め尽くされる。

 叫びたくなる衝動に駆られながらも息を潜めていると、ソウリャに掴まれている右手首がやや前方に引かれた。きっと後をついてこいと言われているのだろう。


 ライは黒い影のすぐ横を、足音をたてないように進んだ。

 自分の足のすぐ脇を謎の黒い影が通ってゆく。その度にバレてしまうのではないかという恐怖に駆られた。


 ライは自身の気持ちを落ち着かせようと、あえて謎の物体を観察し始める。


 黒い影は膝の高さ程の丸いものから、2、3メートルほどのイソギンチャクのような影もあった。

 よく見るとなんとなく顔がついている。ほとんど黒と変わらない赤い点が2つ。目なのだろうか。その下には闇の切れ目が入っていて、もしそこに食べられてしまったら、存在すら消えてしまう、そんな気がした。

 何か辺りを探っているのか、触手のような部分をめいいっぱいに広げ動かしている。


 人間、極限まで追い詰められた時には、何か一つの考え事に没頭するのが一番なのだ。


「ぎゃぁぁぁぁぁあ! 助けてくれえええええええ! 誰かぁぁぉぁあ」


 はっきりと叫び声が響いた。

 弾かれるように声の方角へ振り返ると、そこには昼間の魚屋の姿があった。

 影に追いかけられひたすら逃げ惑っている。

 にげて! と思うが、逃げる場所など無い。


「ぎゃぁぁぁぁぁあ」


 魚屋はライたちの目の前で真っ黒い影に巻き付かれ、悲鳴を上げた。

 ライは咄嗟に魚屋の方へと駆け出す。しかし、それをソウリャが阻止した。


『君が行ったところで何も出来ない』


 声にしてこそ言われていないが、確実に彼がそう思っている事が伝わってきた。


 なにもしてあげられないライ達の目の前で、影に巻き付かれたところからなにやら蒸気が上がり始める。



 蒸発。


 黒い影は巻きついた所から徐々に魚屋を蒸発させて行った。



 考えられなかった。

 目の前で起きた現象が本当にこの世で起きているものだと信じられなかった。

 信じられないような力……それが闇の民の力なのか。

 一人の人間を跡形もなく蒸発させてしまったその力を前に、ライはただ呆然とした。


 衝撃的な出来事。

 呆然と魚屋のいた場所を眺めていると、そこの間に割って入ってきた黒い影と……目が合った。


「……んっ!!!!」


 突然の事態に、つい声が漏れる。慌ててライは自身の口を手で覆ったが、少し遅かったようだ。

 ライの声を察知した黒い影は、動きをピタリと止める。


――しまった……。


 ソウリャがなるべく気配を消そうと歩みを止めた。

 辺りを探るようにウネウネと触手を動かす黒い影。奴らはゆっくりとライ達に近づいてくる。


 息を潜め無ければいけないと分かりながらも、呼吸が乱れる。バレるのではないかという不安に足が震えた。

 隣を見てもソウリャの姿は無い。魔術薬の効力は消えていないはずなのに、綺麗に四方を囲まれる。

 そして、黒い影はゆっくりとライ達の周りを回り始めた。


――気づかれている。


 黒い影はユラユラとゆれながら身体から伸びた触手のようなものを無差別に振りまわし、辺をまさぐる。

 徐々に距離を詰められ、触手はすぐそこまで来ていた。


「………!」


 ちょうど肩あたりにのばされ……既の所でライは少し身をそらし、それを避けた。


 そのタイミングでいきなりグッと手をひかれた。ソウリャが走り出したのだ。引かれた方へ慌ててライも後をついて行く。

 ほんの僅かな化物の隙をすり抜け、一気に坂を下ってゆく。

一瞬揺らいだ空気の違和感に気付いたのか、黒い影も猛スピードで付いてきた。


 昼間の寄港祭の残り香を感じる無人の市を横目に、二人は必死に逃げた。

 どこからか様子を見られているのか、街中の黒い影が集まりだし、二人を追いかけてくる。


「……クソっ、切りながない!」


 とうとうソウリャも苛立ちを顕にする。

 一つの触手がライの右肩に伸ばされる。それに気づいた時にはもう逃げられない距離になっていた。


「っんぁああっ!」


 それが肩に触れた瞬間、猛烈な熱さが襲う。溶かされるようなジュウっという音が出た。 


 しかし、その瞬間、その触れた触手は何かに弾かれたように飛び離れていき、そして触れた先端は破裂してしまった。

 さらに驚く事に二人を中心として半径三メートル程の黒い影が一瞬で破裂してしまった。


「……!?」


 何が起こったのかは分からなかったが、今はそれを考えている余裕などない。

 今がチャンスとばかりに二人は走り出した。


 崩壊へと向かう街を、ただひたすら走る。空は分厚い雲に覆われ、星の光すら全く感じさせない。


 闇に包まれたこの街を、ただひたすらに走った。



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