ああ、火鉢屋どっち
火鉢屋どっちは考えない。
なぜなら彼は強いから。下らねえやつは斬る。斬る斬る斬る。まー斬る。すぐ斬る。
「ぃらっしゃーせー」
気だるそうにバイトは言う。
それ見た店長は不満がありそう。でもなんも言えずに己が仕事を黙々こなす。怒るほどのことじゃない。人それぞれやり方があるから。
「おい!もっとしっかり声出せ!」
バイトリーダーがシャウト。小汚ないおっさん。それがサムいって分かってる。でも、シャウト。
「あ。sあーせん。」
見下してる。コンビニで気張んじゃねーよ、て見下してる。でも、sあーせん。おれクズではないから。
火鉢屋どっちは悩んでいた。パリパリのりのおにぎりか、それともちょと高めのコシヒカか。はたまた変化球の赤飯にぎりか。
そんなこんなしてたら聞こえてきたよ。残夏の蝿みてえな雑音が。どっちは視線をレジへ移し、若造のもとへ歩き出す。
ズバアッシュ!!!!!!!
「ぇ?・・・・・は?」
胸には袈裟斬りのあと。前を見れば男。その手には日本刀。蛍光灯に晒されて、つくりもんみたいな血濡れの刀身。
膝から崩れるバイトを尻目に、店長に近寄る火鉢屋どっち。
「な、なんすか・・・!?なんなんですか?!」
うろたえ店長。醜い瞳をジっと見るどっち。
片手で刀を振りかぶる。
泣き出す店長。
「やめてくれ・・・!」
シッ
空を切る刃。どっちはまず、滴る血を落とした。
そうして両手で柄を握り、刀は左に、重心は右足。
狙いは胴、横一文字。
ズバッシュ!!!!!!!!!!
はち出る血しぶきがコンビニを舞う。
返り血を浴び、からだ中を真紅に染めたどっち。
火鉢屋どっちは余韻を感じる。
せつな、背後の気配にどっちは、真っ赤な顔で振り向いた。
おっさん。
「ありがとう。ぶっ壊してくれて。お前はわかるやつだよ」
握手を求めるバイトリーダー。
ズバッシュ!!!!!!!!!!
火鉢屋どっちは目を閉じた。
そして、懐から紙を取りだし、汚れた刀身を清めた。